避難器具の点検要領 総合点検編

この記事は約9分で読めます。

皆さんこんにちは。

日中暖かくなって春が来るかなーなんて思うと、次の日寒くてまだ春は遠いなぁなんて思うこの頃です。さて、今回は前回に続いて避難器具の点検要領の総合点検編を説明していきます。

 

スポンサーリンク
スポンサーリンク

総合点検

留意事項

  1. 点検終了後、使用時に支障がないよう元の状態に復旧しておく。
  2. 総合点検は、機器点検の内容を完全に行った後に実施するもので、避難器具を使用状態にしてその機能が適正であるかどうか確認する。

避難はしご

器具の取付け等

  • つり下げ式のものは、はしごの全長が円滑に伸長し、突子が壁側に向いており、壁と横さんとの間隔は10cm以上を有し、縦棒は垂直に、横さんは水平となっており、最下部横さんから降着面等までの高さが50cm以下であるか確認する。
  • 固定収納式のものは、収納された縦棒が円滑に展開し、下端は堅固な地面等に接しており、縦棒は垂直に、横さんは水平となっているか確認する。

降下

  • 降下に支障がなく、つり下げ式のものは、壁と横さんとの間隔は10cm以上を有し、固定収納式のものは、使用の際に縦棒及び横さんが著しく動揺しないか確認する。

格納

  • つり下げ式のものは、各部に変形がなく円滑に元の状態に復することができるか確認する。
  • 固定収納式のものは、各部に変形がなく、円滑に収納され、止め金が確実にかかるか確認する。

緩降機

器具の取付け等

  • 緩降機の連結部(フック等)の安全環の止め金具を締め、取付具に完全に取り付けられているか確認する。
  • ロープを展張した際、もつれ等がなくつり下がり、長い方の着用具が降着面からプラスマイナス0.5mの範囲となっているか確認する。

降下
次により確認する。

  1. 短い方のロープについている着用具を頭からかぶり、リングが胸の中央にくるように装着する。
  2. 2本のロープを握り、外壁に出て体重をロープにかけてつり下がる。
    ※2本のロープを握っていれば降下しない。
  3. 壁面に向い、体が安定したらロープから手をはなし降下する。
    ※両手をかるく前に伸ばし、降下姿勢の安定をはかること。
  4. 降下を完了したら、着用具をはずす。

※降下する直前において、降下側のロープをたるませるとロープに急激な荷重をかけることとなるので注意すること。

※多人数用の緩降機を使用する際は、同時に降下姿勢を整えてから降下を開始するよう、互いに気をくばること。

  • 降下距離及び降下時間を計測して降下速度を算出し、規定の降下速度の範囲内であること。

※平均的な降下速度は80~100cm/秒、降下最高速度は150cm/秒以内であること。

  • 降下後、機器点検を実施し器具本体、取付具等に異常が発生していないか確認する。

※調速器の構造によっては、発熱が認められるものがあるが、異常ではない。

格納

  • 各部に変形等がなく、円滑に元の状態に復旧するか確認する。

※ロープの巻取りに際しては、ロープにねじれをつけないようにリール自体を回転させてロープを巻き取る。

すべり台

器具の取付け等

  • 半固定式のものの下部は円滑に展開し、固定部との接続箇所及び着地点は滑降に支障のある段差、障害物等がないか確認する。
  • 滑面に著しい亀裂、穴等がないか確認する。

降下

  • 滑降は円滑で、かつ、着地に危険のない滑降速度であるか確認する。
  • 滑降時において各部に動揺がなく、変形、破損、緩み等を生じていないか確認する。

格納

  • 使用に支障のないよう適正に格納ができるか確認する。
  • 各部に変形等がなく、円滑に元の状態に復旧できるか確認する。

すべり棒

器具の取付け等

  • 棒に著しい亀裂、棒及び上部並びに下部の固定部に、著しい変形、破損、緩み等がないか確認する。

降下

  • 降下が円滑であるか確認する。
  • 着地部分に着地の衝撃を和らげる砂等が適量であるか確認する。

格納

  • 使用部への出入口の扉等の開閉が正常であるか確認する。

避難ロープ

器具の取付け等

  • ロープが円滑に伸長し、下端は着地面上50cm以下であるか確認する。
  • つり下げ具及び取付具に異常がなく、ロープに著しい破損、ほつれ、糸切れ等がないか確認する。

出典“(財)日本消防設備安全センター 消防用設備等点検実務必携”より 取付具及び支持部の例

降下

  • 足がかり等の脱落、緩み等がなく、安全に降下できるか確認する。

格納

  • 使用に支障のないよう適正に格納ができるか確認する。
  • 各部に変形等がなく、円滑に元の状態に復旧するか確認する。

避難橋

器具の取付け等

  • 各部にたわみ、著しい変形、破損等がなく、かかり長さに変化がないか確認する。
  • 移動式のものは、十分なかかり長さを有するように架橋され、固定部又は支持部との接続箇所は避難に支障がないか確認する。

降下

  • 橋の踏み面に変形等がなく、安全に渡れるか確認する。

格納

  • 使用に支障のないよう適正に格納できるか確認する。
  • 各部に変形等がなく、円滑に元の状態に復旧するか確認する。

 

避難用タラップ

器具の取付け等

  • 半固定式のものは、円滑に架設され、固定部との接続箇所は降下に支障がなく、動揺がないか確認する。

降下

  • 本体各部及び支持部に、著しい変形、破損等がないか確認する。
  • 手すりは、踏板等に堅固に固定されており、動揺がないか確認する。

格納

  • 使用に支障のないよう適正に格納ができるか確認する。
  • 各部に変形等がなく、円滑に元の状態に復旧するか確認する。

救助袋(斜降式救助袋)

器具の取付け等
次により確認する。

①、上部点検者の手順

  1. 格納箱を取りはずす。
  2. 袋本体を固定してあるバンドを解く。
  3. 誘導綱の結束を解き砂袋等のおもりを投下し、その後地上点検等の合図をまって、袋本体を降下させる。
    ※袋本体は先端をくり出せば残りは自重により自動的に降下するので、手や衣服を巻きこまれないように注意すること。
  4. 袋本体が降下し終わったら入口金具を引き起こす。

②、地上点検者の手順

  1. 誘導綱を受けとる。
  2. 袋本体が窓や庇等の障害物に引っかからないように誘導綱を引き袋本体を降下させる。
    ※誘導綱が下部支持装置の先端に取り付けてあるものについては取りはずすこと。
  3. 固定環(具)の蓋をはずす。
  4. 下部支持装置の張設ロープの先端のフックを固定環に引っ掛け張設ロープの末端を滑車間のロープの中を通し、袋本体の下部出口が地上より50cm以下になるよう十分に引き、張設ロープを逆に引っ張ってこのロープを滑車間のロープの間に入れて固定する。
    ※左右を間違えて固定しないこと。
  5. 左右を均一に張ること。
  6. 更にロープに結びをかけて安全に固定できたかを確かめる。
  • 格納箱のおさまり具合及びローラーの作動は円滑であるか確認する。
  • 誘導綱は袋本体又は下部支持装置に確実に取り付けられているか確認する。
  • 袋を展張したとき、展張部材は入口金具との結合部において著しく伸びていないか確認する。
  • 袋本体の用布と展張部材との結合部は破損及び著しい摩耗がないか確認する。
  • 袋本体と入口金具との結合部は破損及び糸切れがないか確認する。
  • 入口金具の引起こしは容易であるか確認する。
  • 袋を展張したとき、袋は降下に支障のあるよじれ、片だるみ等の変形がないか確認する。
  • 袋を展張したとき、下部出口は無荷重の状態で地盤面等より50cm以下であるか確認する。
  • 袋本体に荷重がかかったとき、力の作用が不均等とならないこと。
  • 下部出口に乗ってゆすったとき下部出口が地盤面等に接触するようであれば張設ロープを更に引っ張り接触しないよう修正すること。

出典“(財)日本消防設備安全センター 消防用設備等点検実務必携”より 取付具及び入口金具の例

固定環の固定方法の例

固定環の固定方法の例

 

出典“(財)日本消防設備安全センター 消防用設備等点検実務必携”より 誘導綱の例

降下
次により確認する。

  1. 降下に際して降下者は地上点検者に合図をしてから降下する。
  2. 降下者はステップに足をかけ袋取付枠に足から入り、姿勢を整えて降下する。
  3. 降下姿勢は使用方法に従い降下する。

※降下時の初速が速いほど、降下速度が速く危険であるから反動をつけての降下は絶対にしないこと。

※点検を確実、かつ、詳細に行うため点検者を上部(降下口)と地上(脱出口)にそれぞれ1 名以上配置するよう配慮すること。

※点検者は身体の露出部を少なくするため軍手、作業服(長袖)を着用する等して危険防止を図ること。

  • 降下は円滑であるか確認する。
  • 降下速度は適正であるか確認する。
  • 降下時の衝撃はゆるやかであるか確認する。

格納

次により確認すること。

①、引上げの手順

  1. 地上点検者は張設ロープを最大限の長さまで緩め、フックをはずし固定環の蓋をする。
  2. 地上点検者は張設ロープのからみ及びもつれをなくし下部支持装置をそれぞれの袋の種類に応じ収納するか、又は下部支持装置の先端のフックに誘導綱を取り付ける。
  3. 上部点検者は地上点検者と協力して袋本体を引き上げる。
    ※地上点検者は引上げ当初において袋本体が窓や庇等の障害物に引っかからないよう誘導綱をもって誘導すること。
  4. 誘導綱は順序よく引き上げ、輪に束ねる。

②、格納の手順

  1. 取付具のステップをたたむ。
  2. 入口金具を手前に引込みたたむ。
  3. 袋本体を上部からつづら折りに折りたたみ、使用時に円滑に展張できるように納める。
  4. 整理された下部支持装置、誘導綱は使用時に容易に取り出せる位置におき、袋本体をバンドで締め付ける。
  5. 格納箱を取り付ける。

※点検後の収納に際しては、使用に支障のないよう正常に格納すること。

※各部に変形等がなく、円滑に元の状態に復旧するか確認する。

救助袋(垂直式救助袋)

斜降式の下部支持装置及び固定環の項を除き、斜降式の点検方法及び 留意事項に準じて確認する。

器具の取付け等・降下・格納

  • 操作展張、降下、引上げ及び格納について、斜降式の判定方法に準じて判定すること。

※袋を展張したとき、下部出口の地盤面の高さは無荷重の状態で50cm 以下であるか確認する。

 

まとめ

最後まで読んでいただいありがとうございます。

総合点検で避難器具を展開して降下試験をしなければなりませんが、救助袋なんかは展開→設置→降下試験→格納が大変ですよね。

でもつづら折りで収納されているので展開しないとわからない部分があるので、面倒&大変でも展開・降下試験をやりましょう。

次回は避難器具の点検票記入例をやっていきます。