皆さんこんにちは。
今回は消火器の構造と機能の説明になります。この構造・機能・整備の部分から9問出題され、そのうち構造・機能の部分は5問程出題される感じです。
特に粉末消火器の部分については、現在設置数の90%以上を占めているので必ず出題されると言っても良いと思います。特に部品の名称や機能、取り付け目的は覚えておきたい所です。
また、消火器の消火作用や適応する火災なども良く出題されているので覚えておきたいです。
消火器の消火作用と分類
燃焼と消火
(1)燃焼とは
燃焼とは、一般的に「熱と光の発生を伴う酸化反応」と定義されている。
燃焼には燃えやすい物質(可燃物)、酸化反応に必要な酸素の供給(酸素供給)と、その反応を開始させるのに必要なエネルギー(点火エネルギー)と、燃焼の連鎖反応の継続が欠かせない。
これらの可燃物、酸化供給、点火エネルギーの3つを、燃焼の3要素という。最近では、燃焼の連鎖反応を加えて燃焼の4要素とも言っている。
(2)消火
消火を行うには、上記燃焼の3要素のどれか一つでも排除、若しくは連鎖反応を遅らせたり中断できれば消火できる。
(3)消火器の消火作用
消火器で消火するには、上記燃焼の3要素を排除する仕組みになっている。
- 冷却作用…水などで燃えているものの温度を発火点以下に下げて消火する作用。
- 窒息作用…燃焼に必要な空気(酸素)を遮断、若しくは酸素濃度を低下させて消火する作用。
- 抑制作用…燃焼の連鎖反応を遅らせたり、中断させることにより消火する作用。負触媒効果ともいう。
上記の表から以下がわかる。
- 冷却作用があるものは、A火災に適応している。
- 窒息作用や抑制作用のあるものは、B火災に適応している。
- 粉末消火器や二酸化炭素消火器、ハロゲン化物消火器はC火災(電気火災)にも適応している。
- 強化液消火器や水消火器(浸潤剤入のもの)は霧状放射の場合に限り、B火災とC火災に適応する。
- 抑制作用の効果が最も大きいのはABC粉末である。
消火器の加圧方式
消火器には3つの加圧方式があります。
(1)ガス加圧式
消火器を使用する際に、消火器本体容器内又は外部に接続されている加圧用ガス容器に穴を開け封板を破る又は容器弁のバルブを開けて二酸化炭素若しくは窒素ガスを消火器本体容器内へ導入し、加圧して消火薬剤を放射する圧力源としているものをいう。
(2)蓄圧式
常時消火器本体容器内に、消火薬剤と放射用の圧縮空気や窒素ガスを蓄圧しているもので、原則として指示圧力計が装着されている。
(3)反応式
消火器本体容器内に、液体状のアルカリ性薬剤と酸性薬剤をそれぞれ隔離充てんし、使用時にこれらの薬剤を混合し化学反応させて二酸化炭素を発生させて、その圧力で消火薬剤を放出するものをいう。
消火薬剤の種類
最近では、消火器の製造の93%が粉末消火器で、その粉末消火器のうちABC粉末消火器がほぼ全部と言っていい割合を占めている。水系の消火器では強化液消火器が一番多く製造されている。その為、粉末消火器や強化液消火器についての出題が多い傾向にある。
粉末消火器の構造・機能
粉末消火器にはガス加圧式と、蓄圧式があり、以前はガス加圧式が圧倒的に多かったが、近年では消火器の暴発事故などがあり、蓄圧式が多くなってきている。
ガス加圧式粉末消火器
ガス加圧式粉末消火器は使用時に、本体容器内部に取り付けられている加圧用ガス容器の封板を破ったり、外部に取り付けられている加圧用ガスボンベのバルブを開けたりしてガスを本体容器内に導入して加圧し、消火薬剤を放射する方式である。
(1)手下げ式消火器の構造
消火器上部にあるレバー(上下)を強く握ると、カッターが加圧用ガス容器の封板を破り、加圧用ガス容器内の液化二酸化炭素が気体化して膨張、ガス導入管を通って本体容器内の消火薬剤中に噴出する。このガス圧力により消火薬剤が加圧撹拌・流動してサイホン管下部の粉上がり防止封板を破り、消火薬剤がサイホン管→ホース→ノズルを経由して放射される。
ガス導入管の先端に付いている逆流防止装置と、サイホン管の先端に付いている粉上がり防止封板は、粉末消火薬剤がガス導入管やサイホン管内に入り込み詰まるのを防止する役目をしている。ちなみにこの逆流防止装置と粉上がり防止装置はガス加圧式の粉末消火器特有の部品なので覚えておきましょう。
また、粉上がり防止封板は、粉末消火薬剤の詰まり防止の役目の他に、ノズル・ホース・サイホン管からの外気の侵入を遮断している他、消火器使用時に加圧用ガスが本体容器内を加圧して必要な圧力になったときに破れて消火薬剤を放射するという役目もある。なので、整備に使用する粉上がり防止封板はメーカー指定のものを使用しなければならない。
(2)放射の方式
手さげ式消火器の使用方法は、化学泡消火器以外はすべてレバーを握って使用する方式になっている。レバーを握って使用する消火器は、原則レバーを握ると消火薬剤を放射して、レバーを戻せば放射を停止することができる。粉末消火器には、消火薬剤の放射・停止ができる「開閉バルブ式」のものと、レバーを握ったら全量放射してしまう「開放式」がある。
(a)開放式
消火薬剤の充てん量が3kg以下の消火器はほとんどがこの開放式であり、サイホン管とホースが直通で、レバーを握り加圧用ガス容器の封板が破れると消火薬剤は加圧されて全量放射してしまう。
(b)開閉バルブ式
カッターにバルブが併設していて、レバーをにぎると加圧用ガス容器の封板を破るのと同時にバルブも開いて放射する。レバーを元に戻すとバルブが閉じて放射を中断できる構造になっている。
放射を少量で中断した状態で放置されていると使用済みなのか未使用なのかが外見から判別しづらいので、開閉バルブ式消火器には使用済み表示装置を設けなければならない。
また一度作動させた開閉バルブには粉末消火薬剤が付着してバルブを密閉できないので、放射の停止は一時的なものになり、時間をおいての再放射はできないので、一度作動させたら必ず整備が必要である。
(3)排圧栓
開閉バルブ式の粉末消火器は、使用すると加圧用ガスが本体容器内に残留しにくく、残圧が残らない場合も多いが、中には本体容器内の加圧用ガスが残留したままになっているものもあり、その状態で整備などの目的でキャップを開けてしまうと内圧でキャップが吹っ飛んで危険である。その為、内圧を事前に排圧できるように「排圧栓」が設けられていて、この排圧栓のネジを緩めれば内圧を安全に排出できる。
(4)車載式の方式
本体容器内に消火薬剤が充てんされていて、放射圧力源の加圧用ガス容器は本体容器の外部に接続されている。(本体容器内に接続されている少容量のものもある)
加圧用ガス容器は小容量のものは二酸化炭素が用いられ、大容量のものは窒素ガスが用いられている。加圧用ガス容器は外部のガス導入管で本体容器と接続されていて、窒素ガスの場合は圧力調整器と一緒に接続して使用する。
使用方法は、二酸化炭素の加圧式は押し金具を押してガス容器の封板を破って使用(放射)し、窒素ガスの加圧式は加圧用ガス容器のバルブを回して開き、加圧用ガスを本体容器内に導入して使用(放射)する。大型消火器のノズルは開閉式になっていてレバー(コック)の操作により放射及び停止が出来る構造になっている。
蓄圧式粉末消火器
本体容器は鋼板製、ステンレス鋼板製、アルミニウム製の種類があり、その本体容器内に消火薬剤が窒息ガスと共に充てんされていて、レバー式の開閉バルブが付いている。内部の蓄圧力が確認出来るように内部圧力値わかる指示圧力計が取り付けてある。その圧力範囲は0.7〜0.98MPaになっている。レバーを握るとバルブが開いて本体容器内に充てんされている窒素ガスの圧力によって粉末消火薬剤がサイホン管を通ってホースを経由してノズルより放射される。またバルブ付きなので、レバーを握れば放射してレバーを離せば放射停止になる。
指示圧力計の圧力検出部(ブルドン管)の材質は前回の記事(消火器の規格編)お話したように、SUS、PB、Bs、BeCuのどれでも良い。
前回の記事は下記のリンクからどうぞ。
また、大型消火器は起動レバーを倒すものと、小型消火器と同じレバーが付いているものがあるが、起動レバーのものはレバーを倒してバルブを開いてから開閉式のノズルを操作して放射及び放射停止を行う。
粉末消火薬剤
(1)形状・性状
加圧式・蓄圧式共に、乾燥させた180μm以下の微細な粉末で防炎性を有し、防湿及び流動性を高める為にシリコン樹脂などで防湿処理をしている。その為水面に均一に散布した場合に1時間以内に沈降しないものになっている。
また粉末消火薬剤は種類があり、特性も異なるので外観から判別出来るようにそれぞれ以下のように着色してある。
- ABC粉末→りん酸アンモニウムを主成分とし、淡紅色である。
- Na粉末→炭酸水素ナトリウムを主成分とし、白色である。
- K粉末→炭酸水素カリウムを主成分とし、紫色である。
- KU粉末→炭酸水素カリウムと尿素の化学反応物で、ねずみ色である。
(2)適応火災
(a)ABC粉末
優れた抑制効果によりA火災、B火災に適応し、なおかつ電気絶縁性があるのでC火災にも適応している。
(b)Na粉末
抑制効果によりB火災に適応し、電気絶縁性があるのでC火災にも適応する。
(c)K粉末
抑制効果によりB火災に適応し、中でも油火災には特に効果がある。また電気絶縁性があるのでC火災にも適応する。
(d)KU粉末
抑制効果によりB火災に適応し、中でも油火災には特に効果がある。また電気絶縁性があるのでC火災にも適応する。
(3)使用温度範囲
使用温度範囲は使用する加圧用ガスの種類と圧力方式により異なる。
- 窒素ガス加圧式、窒素ガス蓄圧式は-30℃〜+40℃
- 二酸化炭素ガス加圧式のものは構造の種類にもよるが、-20℃〜+40℃又は-10℃〜+40℃
加圧用ガス容器
加圧式消火器の固有部品であるが、そのなかでも特に重要な部品でガスの種類や容器の大きさが多種である。
(1)加圧用ガス容器の内容積
- 内容積100c㎥以下の加圧用ガス容器は高圧ガス保安法の適用から除外される(適用を受けない)。その為最も多く使用されている。
- 内容積100c㎥を超える加圧用ガス容器は高圧ガス保安法の適用を受ける。その為容器の塗色も窒素ガスならねずみ色、二酸化炭素ガスなら緑色になっている。消火薬剤充てん6kg以上の手さげ式消火器と大型消火器の一部に使用されている。
(2)充てんされるガスの種類
- 液化二酸化炭素→一番多く用いられている。
- 二酸化炭素+窒素ガス→消火薬剤充てん6kg以上の消火器の一部に使用されている。
- 窒素ガス→主に大型消火器に用いられている。
(3)加圧用ガス容器の種類
- 作動封板があるもの→小型消火器と大型消火器の消火薬剤充てん20kgのものに用いられている。
- 容器弁付きのもの→大型消火器に用いられている。
(4)二酸化炭素を用いる加圧用ガス容器の詳細
液化二酸化炭素は内容積に関わらず充てん比1.5以上(液化二酸化炭素1gにつき容器の内容積が1.5c㎥以上)で充てんされている。二酸化炭素の特徴として無味無臭、空気より重い、水に溶けやすく電気絶縁性がある。
内容積100c㎥以下の加圧用ガス容器は、封板を溶着して密閉したもので外面は亜鉛メッキを施してある。封板に穴を開けて使用するので再充てんは出来ない。容器本体には以下の刻印がされている。
- 製造ロット番号
- ガスの種類(二酸化炭素→CO2、二酸化炭素+窒素→CO2+N2、窒素→N2)
- 容器記号(ネジの種類とガス重量を記載)(B38なら、ネジはB、ガス重量38g)
- 総重量(TW = total weightの略 = 総重量)(TW280なら総重量280g)
- 品質証価の合格の表示
内容積100㎥を超える加圧用ガス容器は、作動封板で密閉したものと、容器弁付きのものがある。容器の外面は表面積の1/2が高圧ガス保安法により緑色に塗装されている。また、高圧ガス保安法が適用になるので表面刻印も既定があり以下になる。
- 検査に合格した旨の記号
- 検査実施者の名称の符号
- 検査に合格した年月日
- 充てんされたガスの種類
- 内容積:V(単位は㍑)
- 容器の重さ(容器弁を含まない):W(単位はkg)
- 耐圧試験の圧力値:TP(単位はMpa)
- 最高充てん圧力:FP(単位はMpa)
- 容器記号及び番号
- 製造業者の名称又は符号
(5)窒素ガスを用いる加圧用ガス容器の詳細
主に大型消火器向けに100c㎥を超えるガス容器が使用され、全てに容器弁が付いている。充てん圧力は温度35℃において最高14.7Mpaの圧力で充てんされている。また高圧ガス保安法の適用を受けるので容器外面はねずみ色に塗装されている。刻印も上記二酸化炭素と同じである。窒素の特徴は無味無臭、空気よりやや軽い、水に溶けにくく、電気絶縁性がある。
圧力調整器
大型消火器に用いられている窒素ガス加圧用ガス容器には14.7Mpaの圧力で窒素ガスが充てんされていて、このままの圧力で消火器本体容器内にガスを充圧すると消火器本体容器が破裂するので、窒素ガス加圧用ガス容器に圧力調整器を取り付けて消火器本体容器の使用圧力に適合するように窒素ガス圧力を調整(減圧)する必要がある。
上記写真を参考にしていただき、一次側圧力計(写真右側)は加圧用ガス容器内の圧力を表し、二次側圧力計(写真の左側)では調整(減圧)され消火器本体容器内へ導入される圧力を表している。また実際には二次側圧力計に調整使用範囲の圧力値が緑色で記され、圧力調整器が正常な調整(減圧)を行っているかが判定できるようになっている。
圧力の調整は消火器本体容器の破損などにつながる恐れがあるので圧力調整器の調整部分はみだりに分解や調整ができない構造になっている。
常時開閉バルブは閉まっていて圧力は常圧なので圧力計の指針は0を指しているが、開閉バルブが開放され加圧用ガスが導入されると圧力計が振れる。
水系消火器の構造・機能
消火薬剤が水を主体にしているもので、以下の3種類がある。
- 強化液消火器
- 機械泡消火器
- 化学泡消火器
この中では強化液消火器が一番多く製造されている。
強化液消火器(ガス加圧式、蓄圧式)の構造等
現在製造及び流通しているものには、小型消火器は全て窒素ガスや圧縮空気を用いた蓄圧式となっていて、大型消火器にはガス加圧式のものがある。
強化液消火器は霧状放射だと全ての火災(A火災、B火災、C火災)に適応するので、小型消火器は霧状放射が装着され、大型消火器は棒状と霧状の切り替え式開閉ノズルが装着されている。
(1)蓄圧式小型強化液消火器
鋼板やステンレス製の本体容器内に消火薬剤が窒素ガスや圧縮空気で充てんされていてレバー式の開閉バルブが装着されている。蓄圧式なので指示圧力計が付いていて使用圧力範囲は蓄圧式粉末消火器と同じく0.7~0.98Mpaになっている。
レバーを握ればバルブが開いて容器内の充てんされている圧縮ガスの圧力によって消火薬剤がサイホン管→バルブ→ホースを経由してノズルから放射される。もちろんレバーを戻せば放射停止できる。
指示圧力計の圧力検出部(ブルドン管)にはSUS材が使用されている。
大型強化液消火器はガス加圧式なので、加圧用ガス容器のバルブを開いて開閉式ノズルを開にすれば放射でき、開閉式ノズルを閉にすれば放射停止できる。またノズルは棒状放射と霧状放射を切り替えることができるが、棒状放射はA火災にしか適応していないので注意する。
強化液消火器には据置式のものもある。この据置式は本体容器とコイル状のホースが収納容器に納められていて、安全栓を引き抜きノズルを収納容器から引き出すと起動する。このノズルを操作することにより放射および放射停止ができる。
ちなみにこの消火器は消火薬剤が充てんされ、キャップ、バルブ、指示圧力計などが一体化されている本体容器を収納容器に納めて使用する。なので本体容器やキャップ、指示圧力計などを一体として交換できる交換式消火器にも分類される。
(2)消火薬剤
炭酸カリウムを主体とした濃厚な水溶液で比重は1.3~1.4、凝固点は-20℃以下で防炎性を有する無色透明又は淡黄色の強アルカリ性(pH約12)の液体である。
またこの他にもフッ素系界面活性剤やカルボン酸金属塩を主体とした凝固点-20℃以下、防炎性を有する無色透明又は淡黄色のpH約7の強化液消火薬剤を用いた消火器もあり、これは上記アルカリ性の消火薬剤と区別するために「強化液(中性)消火器」と表示している。
この中性強化液消火器のほうがB火災に対する能力単位が大きいので、現在設置されている台数はアルカリ性のものより中性のものが多く、また消火薬剤はアルカリ性と中性のいずれかで、生産販売されている強化液消火器は中性のものが主に流通しています。
これらの消火薬剤は主に冷却作用によって消火してA火災に適応する。霧状放射にすれば抑制作用も加わりB火災とC火災にも適応することができる。
水(浸潤剤入り) 消火器の構造
昔は、清水に界面活性剤などの薬剤を添加して消火力を強くし、同時に不凍性を持たせて使用温度範囲を広く取った無色透明や淡黄色の水溶液(中性)を使用していたが現在では生産されていない。
現在では純水を主体として塩類やイオンを含まない浸潤剤などを配合した消火薬剤を使用している。
(1)構造や性能
構造は強化液消火器とまったく同じで、蓄圧式の小型消火器のみ生産されている。蓄圧式なので指示圧力計を備えていて、圧力検出部(ブルドン管)はSUS材を使用している。ちなみにブルドン管は粉末消火器以外の蓄圧式消火器には全てSUS材が使われている。使用温度範囲は0℃〜+40℃である。
消火薬剤の性能は、従来品は霧状で放射することによりA火災、B火災、C火災の全てに適応していたが現在では製造されていない。現行品は主として冷却作用により消火し、A火災に適応している。また霧状に放射することによりC火災にも適応するが、B火災には適応していない。
泡消火器の構造
泡消火器には機械泡消火器(蓄圧式)と化学泡消火器(反応式)の2種類があります。
機械泡消火器の構造・性能
基本的には強化液消火器と同じで、鋼板やステンレス製の本体容器内に消火薬剤が窒素ガスや圧縮空気で充てんされていてレバー式の開閉バルブが装着されている。蓄圧式なので指示圧力計が付いていて使用圧力範囲は0.7~0.98Mpaになっている。指示圧力計の圧力計検出部(ブルドン管)もSUS材を使用している。
レバーを握ればバルブが開いて容器内の充てんされている圧縮ガスの圧力によって消火薬剤がサイホン管→バルブ→ホースを経由してノズルから放射されるが、ノズルが機械泡消火器専用のノズルになっていて、ノズルの根本にある空気吸入孔から空気を取り入れ、機械的に発泡させて消火薬剤を泡化して放射する仕組みになっている。この空気吸入孔はノズルを握った際に塞がれない様にカバーで覆っていて塞げない構造になっている。この発泡ノズルは太く大きいので機械泡消火器の特徴とも言える。
(1)機械泡消火器の消火薬剤
水成膜泡や合成界面活性剤などの希釈水溶液で色々な成分を配合した消火薬剤で、外観は少し黄色がかった透明の水溶液になっている。pHは中性で、ノズルの発泡機能により発泡倍率5倍以上の泡が放射される。
使用温度範囲は-10℃(-20)〜+40℃で、泡の消火薬剤は主に冷却作用によりA火災に適応し、泡の窒息作用によりB火災にも適応する。
化学泡消火器の構造・性能
今現在で反応式の消火器は化学泡消火器だけである。設置数がとても少ないが、他の消火器と構造上の相違点が多いなどにより、試験によく出題されている。
構造としては、鋼板製の本体容器(外筒「がいとう」という)の中にポリエチレン製の内筒(「ないとう」という)が取り付けられていて、水に溶かしたA剤(アルカリ性)を外筒に入れ、水に溶かしたB剤(酸性)を内筒に、共に液面表示まで充てんする。
使用する場合には消火器本体容器を転倒させて、中のA剤とB剤を混合し発生する二酸化炭素ガスにより多量の泡(白色)を発生させて、二酸化炭素ガスの圧力により泡を放射する。また使用(操作)の方法として以下の3種類がある。
- 転倒式
- 破蓋(はがい)転倒式
- 開蓋(かいがい)転倒式
化学泡消火器には特徴的な部品としてろ過網、安全弁、液面表示が取り付けられている。
(1)転倒式
消火器の本体容器を転倒することにより内部の蓋が外れてA剤とB剤が混合・反応して泡を生成・放射する方式で、消火器本体容器が転倒するだけで作動し、消火器を逆さまにして使用する。化学泡消火器の中でも一番用いられている方式である。
だが、消火器をひっくり返してしまったり少しでも傾けるとA剤とB剤が混合・反応して放射してしまうという欠点があるので、地震などにより転倒や傾いたりして誤放射するのを防止するために、消火器本体を壁などに固定するなどの耐震措置(転倒防止)が必要である。
(2)破蓋転倒式
内筒を鉛封板などで密封して、使用する際にキャップに装着された押し金具を押し込み、カッターで封板に穴を開けてから転倒させて放射する方式のものであり、小型消火器と大型消火器の一部に使用されている。
(3)開蓋転倒式
外筒用キャップに装着されたハンドルと連動して開く内筒蓋で、常時内筒を密封しているが、使用の際にハンドルを回して内筒蓋を開いてから転倒させて放射する方式で、主に大型消火器に用いられている。
(4)消火薬剤の性能
外筒用薬剤(A剤)は炭酸水素ナトリウムを主成分として、気泡安定剤などを添加し防腐処理をした淡褐色の粉末状のアルカリ性の薬剤で、水に溶かして充てんする。
内筒用薬剤(B剤)は硫酸アルミニウムで白色の粉末状の酸性の薬剤で、水に溶かして充てんする。
それぞれ外筒と内筒に液面表示があるので、そこまで充てんする。
性能的には、放射泡量は液温が20℃の消火薬剤の消火器を放射した場合に手さげ式消火器・背負式消火器は消火薬剤の7倍以上の泡放射量があり、車載式消火器は5.5倍以上の泡放射量がある。
またこの消火薬剤は経年劣化するので定期的(だいたい1年ごと)に薬剤を詰め替える必要がある。消火薬剤が凍結するので寒冷地には向かず、使用温度範囲は+5℃〜+40℃になっている。消火作用は機械泡消火器と同じで、主として冷却作用によりA火災に適応し、泡の窒息作用によりB火災にも適応する。
ちなみに使用温度範囲が + の消火器は化学泡消火器だけである。他の消火器は規格上0℃〜+40℃になっている。
ガス系消火器
ガス系消火器には二酸化炭素消火器とハロゲン化物消火器の2種類がある。しかしハロゲン化物消火器は放射されたハロゲン化物が地球環境に良くない影響を及ぼすという理由から平成6年に製造中止になっている。なのでハロゲン化物消火器の説明は割愛します。
(1)二酸化炭素消火器の構造
高圧ガス保安法に基づく高圧ガス容器(鋼製・アルミニウム製)に圧縮され液化状態の二酸化炭素が消火薬剤として充てんされている。小型消火器にはレバー式の開閉バルブが装着され、車載式消火器にはハンドル式の開閉バルブが装着されている。
レバーやハンドルの操作により放射と放射停止ができる構造になっていて、消火薬剤は薬剤自身が気化するときの圧力によりホーンから放射される蓄圧式消火器であるが、ガス圧は液化二酸化炭素の量には関係なく、温度にも影響されるので指示圧力計は付いていない。
液化二酸化炭素を放射する時にホーン部分が気化熱の作用により冷却され、ホーンが冷たくなり持ち手が凍傷する恐れがあるので、ホーンには断熱材を用いて凍傷防止の為の「ホーン握り」と呼ばれるものが付いている。
本体容器は高圧ガス保安法の適用を受けるので、外面の1/2が緑色に塗装されて、安全弁も装着されている。充てん比は1.5以上で、使用済み表示装置の装着が義務付けられている。消火薬剤の二酸化炭素は窒息の危険性があるので換気の悪い場所や地下街・無窓階などには設置出来ない。
(2)車載式二酸化炭素消火器
車載式二酸化炭素消火器は能力単位がBー6、Cで消火薬剤充てん質量がおよそ25kgなので大型消火器には該当しない。大型車載式二酸化炭素消火器は消火薬剤充てん質量が50kg以上で能力単位がBー20、Cになる。
(3)消火薬剤の性能
二酸化炭素消火薬剤にはJIS K1106(液化二酸化炭素)の2種か3種が使用されて、常温常圧では無色無臭の気体だが、高圧にて圧縮すると液化して高圧ガス保安法の適用を受ける。また二酸化炭素消火器に充てんされる二酸化炭素消火薬剤は国家検定の対象外であり、消火薬剤の中で国家検定対象外なのは二酸化炭素だけになる。
消火薬剤の性能としては、主として窒息作用でB火災に適応し、二酸化炭素は絶縁性があるのでC火災にも適応する。使用温度範囲は-30℃〜+40℃である。
まとめ
最後までご覧いただきありがとうございます。
今回の記事はかなりのボリュームになってしまいました。およそ10000文字なので、400字詰原稿25枚分です。なんか夏休みの読書感想文でも書いている感じになります(笑)。
今回の記事の中でも、加圧式の粉末消火器と化学泡消火器の固有部品の部分は必ず出題される(と思う)ので覚えておきましょう。
一番良いのはこの色で記載のある部分を全部暗記していただければ間違いないと思うのですが、中々そうもいかないと思うので、上記しましたが加圧式の粉末消火器と化学泡消火器の部分はとりあえず覚えておきましょう。
次回の記事は消火器の点検・整備編になります。