蓄電池設備とは

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皆さんこんにちは。

今回は蓄電池設備についてお話させていただきますが、蓄電池設備といってもその種類は多岐にわたりますので、その種類や構造などを解説していければと思います。

 

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蓄電池とは

まず電池には1次電池と2次電池という種類があり

  • 1次電池は充電できない電池(使い切りのもの)を指し、乾電池(マンガンやアルカリ)などになります。
  • 2次電池はいわゆる蓄電池の分類(充電すれば繰り返し使えるもの)を指し、鉛蓄電池やニッケル水素蓄電池、リチウムイオン蓄電池などがあります。

2次電池は私たちの身近で活躍しており、例えばハイブリッドカーやEVカー、スマートフォンやノートパソコン、携帯ゲーム機、など回りを見渡せばすぐに見つかるくらいです。

もちろん当ブログで紹介している消防用設備等にも使われていて、自動火災報知機などの予備電源、自家発電設備の始動用蓄電池などもそうです。

ではその種類を見ていきましょう。

 

蓄電池の種類

上記でもお話しましたが、蓄電池には鉛蓄電池やニッケルカドミウムアルカリ蓄電池、リチウムイオン蓄電池などの種類がありますので、それぞれ特徴を見てみましょう。

 

鉛蓄電池

キュービクル式蓄電池設備の例

電気を蓄えるために硫酸鉛と水を用いて化学反応により二酸化鉛と希硫酸にすることにより電気エネルギーを蓄える構造の蓄電池で公称電圧は2vになります。

これは従来からある蓄電池で、エネルギー効率が他の蓄電池に比べて低いがコストが安いという特徴があり、消防用設備においては火災通報装置の非常電源や自家発電設備の始動用蓄電池などに用いられており、その他主として自動車用バッテリーなどに用いられています。

この鉛蓄電池には

  • 内部の水溶液(電解液)を補充しなければならないベント式鉛蓄電池
  • 水溶液を補充しなくてもよい制御弁式鉛蓄電池

上記の種類があり、特徴としてベント式は横から見ると容器は透明で内部の水溶液の上限・下限のラインと水溶液の量が見てわかるようになっており、水溶液蒸発防止に触媒栓といわれる独特の形のフタがしてあります(触媒栓ではなく、防爆防まつ装置というものが装着されているものもあります)。

一方制御弁式は、ベント式のように水溶液を多量に必要とせず必要最低限の量を電極板や隔離板に保有し、内部で発生するガスを最小限にすることにより電解液の保水を必要としない構造で、外観は不透明なただの箱のような形をしています。

鉛蓄電池の例

最近はベント式ではなく制御弁式の鉛蓄電池が増えてきましたが、制御弁式鉛蓄電池は蓄電池本体の使用期限が決められていますので、期限が来たら交換する必要がありますので覚えておきましょう。(概ね5~7年)

ただこの期限はメーカーの指定する環境(使用温度など)が遵守されている前提での期限になり、例えば周囲温度が標準使用温度より高くなっている環境での使用であれば蓄電池の期待寿命はさらに短くなるので注意が必要です。

 

ニッケル・カドミウムアルカリ電池

このニッケル・カドミウムアルカリ蓄電池(以下、アルカリ蓄電池)は、水酸化ニッケルと水酸化カドミウムを用いて化学反応させることによりオキシ水酸化ニッケルとカドミウムにすることにより電気エネルギーを蓄える構造になっており、公称電圧は1.2vです。

特徴として、鉛蓄電池と同じくベント式とシール式(制御弁式みたいな密封式)があり、ベント式は内部の水が少なからず蒸発するので定期的に保水が必要な構造になりますが、シール式は制御弁式と同じく保水を必要としない構造の蓄電池で、ベント式とシール式も見た目は鉛蓄電池とそんなに差異はありません。

アルカリ蓄電池は公称電圧が1.2vなので、直流100vでの運用には86個の蓄電池(セル)が必要になりますが、鉛蓄電池と比べて圧倒的に期待寿命が長いのが特徴で、鉛蓄電池(HS型)の期待寿命は5~7年に対し、アルカリ蓄電池は12~15年と長寿命です。

 

リチウムイオン蓄電池(Li-Ion)

リチウムイオン蓄電池は

  • 高エネルギー密度
  • 他の蓄電池に比べて高電圧(約3.6v~4.1v)
  • 良好な充電放電サイクル特性

これらの特性を有する蓄電池で「小型・高密度蓄電池」として主にポータブル機器用(スマートフォンなど)に広く用いられており、最近では自動車分野や蓄電池システム用に大型蓄電池の開発や量産化も進められています。

上記のように非常にコスパが良いですがデメリットもあり

  • 満タン充電状態で放置すると劣化する
  • 温度が低いと電圧が出にくい
  • コストが高い
  • リサイクル性が悪い(あまり確立されていない)

などがあります。

またリチウムイオン蓄電池は上限電圧を超えての充電(過充電)を行うと、蓄電池内部の圧力が上昇して破裂する恐れがあるので、過充電を防止したり充電時の異常を検知して充電を停止させる機能があるバッテリーマネジメントユニットが使われています。

これだけコスパに優れているので消防用設備等においてもこのリチウムイオン電池がどんどん普及してくると思います。

 

蓄電池設備の格納方式について

消防用設備等において非常電源として使用される蓄電池設備は、誘導灯や自家発電設備などの非常電源を取っている設備によりオープン式・キュービクル式といった格納方式やその大きさも変わってきます。

自家発電設備を始動させる為の蓄電池設備の例

例えば自家発電設備において、自家発電装置を始動させる為に蓄電池設備を使用しており、キュービクルの中に格納されています。(上写真参照)

最近の自家発電設備には主に制御弁式の鉛蓄電池(電解液を補充しなくて良い鉛蓄電池)が使われており電解液の補充などの手間は省略できる反面、使用期限が決められていますので期限を確認して交換を行いますが、使用環境によっては期限前でも蓄電池性能を満足できなくなる恐れがありますので注意しましょう。

昔の自家発電設備にはベント式(電解液を補充するタイプ)が多く採用されていましたが、水溶液を補充したりする手間が発生する為でしょうか最近はあまり採用されない傾向にあるみたいです。

また非常電源が必要な設備として誘導灯がありますが、誘導灯には誘導灯本体内部に蓄電池を内蔵していて、停電時に誘導灯本体内部で電源が切り替わり蓄電池の電力で点灯する方式(内蔵式)と、誘導灯本体には蓄電池を設けないで蓄電池室などの専用室に蓄電池を設け、停電時に専用室の蓄電池の電力を耐火電線を伝わって各誘導灯本体へ電力を供給するという方式(別置式)の2種類があり、一般的には内蔵型が多く設置されています。(下図参照)

内蔵式と別置式の例

上記の図で、内蔵式は分電盤から常用電源(AC100V)を供給していて、停電になれば誘導灯本体が停電を検出して蓄電池に切り替えて点灯するという方式になり、別置式は通常蓄電池設備から一般配線を通じて常用電源を送っていますが、停電になると蓄電池設備の停電検出装置が停電を検知して電源を蓄電池の電力(非常電源)に切り替えて、その電力を耐火電線を通じて送り誘導灯を点灯させるという方式になります。

ただ、上記の図はわかりわすく説明するための例えであり、実際に別置式のシステムがこうなっていますということではありませんのであらかじめご了承ください。

 

パッケージ型自動消火設備の蓄電池設備の例

他の消防用設備等としてパッケージ型自動消火設備にも蓄電池設備は使われていますが、これも小型の制御弁式鉛蓄電池を使っていますので使用期限に注意が必要です。

これらの他にもパッケージ型消火設備の表示灯を点灯させる専用の蓄電池設備(直流電源装置)や、総合操作盤の蓄電池設備(UPS)などもありますので、一口に蓄電池設備といっても種類は多岐にわたります。

 

蓄電池の点検について

上記で紹介してきた蓄電池の中で消防用設備に使われている蓄電池や産業用(バックアップ用など)につかわれている蓄電池は、常用電源が停電した場合に確実に機能し電源を送出しなければなりませんので日頃からの適正な維持管理が必要になり、特に消防用設備等に用いる蓄電池設備を維持管理するためには専門的な知識と技能を必要としています。

この「専門的な知識と技能を有する者」として一般社団法人電池工業会が実施する「蓄電池設備整備資格者」という資格講習を受講し、資格者となられた方がこの専門的な知識と技能を満たすとされています。

また消防用設備等以外の非常用蓄電池についても火災予防条例準則の一部改正があり、蓄電池設備の点検及び整備を「必要な知識及び技能を有する者」として蓄電池設備整備資格者が指定されていますので、蓄電池設備の維持管理や点検等はこの「蓄電池設備整備資格者」の資格が必要であるということになります。

詳しくは一般社団法人電池工業会のホームページを確認してください。

 

まとめ

最後までご覧いただきありがとうございます。

今回は蓄電池設備についてお話させていただきましたが、一口に蓄電池設備といってもそれを使用する設備(誘導灯やガス消火、パッケージ型自動消火設備など)や形状などによってもいろいろあることがわかりましたし、蓄電池に使用している素材(鉛やニッケルなど)によっても特性が違いますので、多岐にわたっています。

これらの特性や特徴をよく理解しておかなければ、電池の破損や事故も起きかねませんのでよく理解する必要があり、上記で紹介した電池工業会様でもホームページで同じことを言っていました。

今回は蓄電池の種類と消防用設備等ではこんな使われ方をしていますというのが理解していただけたら幸いです。