皆さんこんにちわ。
今回は消火設備のポンプ(消火栓、スプリンクラー、泡など)にまつわる話をしていきます。
点検などでよく目にしたり操作したりするポンプですが、良く知らなかったりすることもあると思いますので参考になればと思います。
消火栓ポンプの話
ポンプの電流値について
私がこの業界に入って間もない頃、まだ消火栓ポンプとか触ったことすらなかった時期に疑問に思ったことです。
消火栓ポンプを締切運転した時と流量試験運転したときの電流値は、締切よりも流量試験運転のほうが大きいですが、その時の私は締切運転でポンプが水を送るぞーって運転している時に締切るのだから電流値は締切のほうが大きくなるんじゃないのかなーって思ってました。
ですが消火栓ポンプは良く出来ていて、水がバンバン流れる状態(放水試験等)の時はポンプは水を送ろうとして頑張りますので電流値は大きくなります。
逆に締切運転の時は極少量しか水が流れない為ポンプは水を送ろうとしないので電流値は小さくなります。
この特性を生かし点検毎に締切・流量の電流値を確認していれば、締切運転時にいつもより電流値が大きいとかの時に、仕切弁が締まりきっていないのか?とかの確認になります。
上記の電流値などの確認にはポンプの性能曲線というグラフをポンプメーカーが出していますので、そのグラフから電流値に対する流量や揚程などを確認することができます。
逃がし水について
他業者がスプリンクラーの末端流量試験を点検やっているときにちょっと見ていた時、点検責任者みたいな人が部下に「早くポンプ止めろーーー!」といって騒いでいました。
別にトラブルがあった訳ではなく、ポンプが止まると涼しい顔で「よし、末端終わり」と言ってました。
多分この責任者はポンプを長時間回すと焼き付く(壊れる)とでも思っていたのでしょうが消火栓ポンプやスプリンクラーポンプはそうそう焼き付きません(他にグランド部などの要因はありますが。)
それは逃がし水があるからです。別名「水温上昇防止用逃がし配管(ミニマムフロー)」ともいいます。
締切運転時もこの逃がし管から規定量の逃がし水が出ていれば長時間回していてもモーターは熱くなってきますがポンプは焼き付きません。
逆に完全締切(逃がし管も閉)にすれば、ものの数分で焼き付く(ケーシング内の水温が上昇し、インペラー(回転羽)や軸封部品などが壊れる)でしょう。
どうもこの逃がし管の意味を知らない人がいるみたいで、逃がし管はポンプ運転時にケーシング内で加圧・攪拌され温まっていく水をすこしづつ抜き、ケーシング内の水温の上昇を抑える働きがあります。
放水型スプリンクラーみたいな毎分4000㍑の定格流量があるオバケみたいなポンプでも、この逃がし管から規定量の逃がし水が出ていれば焼き付くなんてことはありませんのでそのくらい逃がし水は重要な役割をしています。
ですが逃がし管に使われているオリフィス(流量調整の為のプレートの事)は直径3~5mm程度の穴が開いているだけなのでゴミが詰まりやすい為、ポンプ運転時は真っ先に逃がし水が出ているか確認するクセをつけましょう。
消火栓の用語について
聞いたことはあるけれど、いざ説明しようとすると「あれっ?」となったりするこれらの用語を解説していこうと思います。
ポンプ締切運転
上記でもありましたが、これはポンプが加圧水を吐き出さない状態での運転になります。
具体的には、吐出し弁(メインバルブ)閉、逃がし管開、流量試験配管閉、一次圧調整弁閉で行います。この状態でポンプを運転し、圧力、負圧、電流値などを測定します。
ただ、某ポンプメーカーの方に聞いた所、一次圧調整弁は閉めない方が良い(閉めた場合に締切圧力が配管の耐圧力より低ければ可)と話していたのでここは臨機応変といったところだと思います。
ポンプ流量試験(性能試験運転)
これは流量試験配管に規定量の水を流した時のポンプ性能を確認する試験です。
具体的には、吐出し弁(メインバルブ)閉、逃がし管開、一次圧調整弁閉(場合による)で流量試験配管に規定量流して(300㍑/分とか)その時の圧力、負圧、電流値などを測定してポンプの性能が正常かを確認します。
流量試験装置からみて一次側にしかバルブがないタイプの消火ポンプ(ワンバルブ方式)はそのバルブで調整しますが、一次側と二次側の両方にバルブがあるタイプの消火ポンプ(ツーバルブ方式)の場合には基本的に一次側のバルブは全開で、二次側のバルブを調整して流量試験を行います。(点検要領の屋内消火栓の部分を参照)
この時の圧力、電流値などがポンプメーカーが指定する性能曲線といわれるグラフと照らし合わせて遜色無いかを確認しますが、性能曲線を確認できない場合には前回のデータと照らし合わせて異常が無いかを確認します。
万が一異常がある場合には電流値や圧力などで異常がわかります。
呼水槽(こすいそう)
消火栓ポンプなどは、ポンプ本体内(ケーシング内)に充水された状態でないと水を上手に送水することが出来ません(水中ポンプや自給式のポンプを除く)
その為常にポンプケーシング内を水で満たしておかなくてはなりませんので、呼水槽と呼ばれる水槽を設置して常にポンプケーシング内に水を満たせる様になっています。
これはポンプよりも水源が低い(地下水槽など)場合で、ポンプより水源が高い場合(地上式タンクなど)は水源からの水の圧力でポンプケーシング内を充水できるので呼水槽は免除出来ます。
ウォーターハンマー
これも消火栓ポンプ等を点検等する際に気をつけたい項目の一つになります。
詳しくは下記の記事を参照してください。
グランドパッキン
ポンプケーシングとポンプ軸の気密を保持している軸封部品の1つで水を通すことにより冷却及び潤滑を行っている
グランドパッキンの概要と調整方法、交換方法は下記の記事を参照してください。
フート弁
これも上記呼水槽と同じで、ポンプより水源が低い場所に必要な構成機器の1つで、フート弁はろ過網付きの逆止弁みたいなもので、呼水槽→ポンプ→フート弁の充水を保持し、ポンプから吸水管へと水が落水するのをフート弁が防止します。
もしポンプ非運転時に呼水槽の水量が減る場合にはこのフート弁が閉まりきっていない可能性があります。
ちなみにポンプより水源が高い場合はフート弁ではなく仕切弁を付けます。
オリフィス流量計について
昔の極東機械製作所(現在のテラル株式会社)というメーカーの消火ポンプの一部に上記写真の流量試験装置が設置されています。
正式名称(銘板はオリフィス流量計)はわかりませんが、筆者はこの流量試験装置を「差圧式流量試験装置」と呼んでいます。
最近はこの性能試験装置はあまり見かけなくなりましたが、一部の防火対象物にはまだ設置されていますのでこの性能試験装置を用いての点検方法をお話させていただきます。
この流量試験装置は2つある圧力計に発生する圧力差(差圧)でどのくらいの流量があるのかを確認できます。
その流量に対する圧力差は下記の写真をご覧ください。
上記写真では流量が300ℓ/分の時に、圧力差が0.852kg/cm²と記載されていますので、一次側と二次側の圧力計の差が0.852の時に流量が300ℓ/分であるということになります。
では実際に試験してみましょう。
通常であれば流量試験を行う場合には一次側のバルブは全開で二次側のバルブで調整しますが、この差圧式は一次側と二次側の両方で調整します。
一次側のバルブを開けると流量試験装置の一次側圧力計の圧が上がって、二次側のバルブを開けると流量試験装置の二次側の圧が上がるからです。
一次側と二次側のバルブを上手に調整して圧力差を指定値(300ℓ/分なら0.852)にします。
上記写真では圧力差が約1.0kg/cm²ありますが、実際には0.85kg/cm²を目安(300ℓ/分の場合)に調整します。
調整できたらその時が指定の流量になりますので、電圧、電流、吐出圧力、負圧を確認します。
これらが確認できたら流量試験配管のバルブをゆっくり閉めて流量試験を終了します。
あとがき
最後までご覧いただきありがとうございます。
私も最初はポンプを長時間回すと壊れると思っていましたが、ポンプの中身を理解すればよりいっそう視野が広がり、人生何事も勉強だと思いました。
逃し水が重要ということを一つだけ覚えておけば、この記事を最後まで読んでいただいた苦労が報われます。
消防用設備等の意外と知らない話を下記の記事で紹介していますので参考にしてください。
また自動火災報知設備のよくある話もありますので下記の記事から確認していただけます。