消防設備士がやるべき事

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皆さんこんにちわ。

先日当ブログの常連さんからのお問い合わせで消防設備士の義務についてお話がありました。

当ブログへ勉強や調べ事で訪問していただいている読者様はご存じかと思いますが、今一度消防設備士がやるべき事とはどのようなことを指すのかをお話させていただきます。

 

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あらすじ

常連さんのお話は「消防の立入検査で誘導灯の無届工事(交換工事)が発覚したのです。この建物は誘導灯は任意設置設備だけど設置届とか検査って必要なんですか?」というお話でした。

要するに

  1. 当該防火対象物の誘導灯(任意設置設備)が不良で指摘があがっていた。
  2. 点検業者のAが誘導灯の本体交換を無届(設置届)で交換する。
  3. 当該工事に関して事前に所轄消防への協議・相談なし。
  4. 後日、たまたま消防署が立入検査に入ったときに無届工事が発覚する。

こんな感じです。

上記をひとつひとつ確認していきましょう。

 

消防用設備等の設置・維持の義務

では「当該防火対象物の誘導灯(任意設置設備)が不良で指摘があがっていた。」という部分を解説します。

消防法の第17条にこのような規定があります

学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものの関係者は、政令で定める消防の用に供する設備、消防用水及び消火活動上必要な施設(以下「消防用設備等」という。)について消火、避難その他の消防の活動のために必要とされる性能を有するように、政令で定める技術上の基準に従つて、設置し、及び維持しなければならない。

要約すると、「建物(防火対象物)の関係者(所有者、使用者、占有者)は技術上の基準に従って消防用設備等を設置して維持管理をしてね」ということです。

これは当該消防用設備等を自ら、又は資格者に点検させて、異常があったら速やかに改善していつでも使えるようにしてねということなので、点検して不具合のあった誘導灯を改善のために本体交換をお願いしたという流れは全く問題ありません。

問題があるのは次からです。

 

工事着工の届出

では「点検業者のAが誘導灯の本体交換を無届(設置届)で交換する。」の部分を解説します。

消防法第17条の14にこのような規定があります。

甲種消防設備士は、第十七条の五の規定に基づく政令で定める工事をしようとするときは、その工事に着手しようとする日の十日前までに、総務省令で定めるところにより、工事整備対象設備等の種類、工事の場所その他必要な事項を消防長又は消防署長に届け出なければならない。

これは、消防設備士でなければできない工事(新設・増設・移設・交換など)をする場合は工事を行う10日前までに所轄消防長(消防署長)に着工届をだしてねということです。

ただし、軽微な工事の範囲に該当する工事の場合は、この着工届は省略することができるので、すべての工事が着工届が必要とは限りません。

ですが、今回の点検業者のAが行った誘導灯の本体交換に関しては、消防設備安全センターの法令様式には誘導灯の着工届の様式がありませんが、各自治体によっては設備設置計画届などの様式がありますので、自治体によっては事前の届出が必要です。

軽微な工事の範囲について詳しくは下記の記事で詳しく解説しています。

工事整備対象設備等着工届出書とは?
この記事では、消防用設備等を工事する際に提出する「通称、着工届」と「軽微な工事の範囲」について、届出の対象になる設備や、いつまでに誰がどのような書類を添付して提出すれば良いかを解りやすく解説しています

上記のことから、たとえ誘導灯を1個本体交換するのも所轄消防に相談(又は設置計画届を提出)してからの工事が必要ですので、点検業者のAはこれを怠ったということになります。

これらを踏まえて次に行きます。

 

消防機関との協議

では「当該工事に関して事前に所轄消防への協議・相談なし。」という部分はどうでしょう?

基本的には誘導灯の本体交換に設備設置計画届を提出しますが、消防機関によっては「誘導灯交換なら工事写真添付してくれれば設置届だけでいいよ」とか「任意設置設備だから書類だけでいいよ」などの独自ルールがあります。

いわゆる「所轄消防により異なります」です。

もしこの点検業者のAが事前に所轄消防に協議・相談をしていれば、もしかしたら設備設置計画届を提出せずに軽微な工事(消防検査なし)で受付してくれたかもしれません。

これらは私たち消防設備士としてはごく当たり前のことですし、消防設備士の義務でもあります。

消防設備士の責務には下記の法令があります。

消防法第十七条の十二

消防設備士は、その業務を誠実に行い、工事整備対象設備等の質の向上に努めなければならない。

私たち消防設備士は消防用設備等を技術上の基準に則り、法令に従って設置などを行う義務と責任があります。

もちろんこの中には防火対象物の方との意思疎通(工事するなら着工届を提出しますなど)、所轄消防との協議・相談(検査はいつ行いますか?など)も含まれています。

これらを怠った点検業者のAは誠実業務実施義務違反といったところでしょうか。

 

消防検査で発覚

最後に「後日、たまたま消防署が立入検査に入ったときに無届工事が発覚する。」についてお話します。

これに関しては筆者の個人的な意見で「やっちまったなぁ~」という感じです。

上記でもお話しましたが、事前に所轄消防と協議してしかるべき措置をしていればこのような事態にはならなかったわけです。

もちろん所轄消防がこの無届工事を知ってしまった(しかも立入検査で)ので、所轄消防長(消防署長)がこの消防設備士(点検業者のA)に対してしかるべき処置をするかもしれません。

この処置が俗に言う「消防設備士の免状返納命令」に関わる措置で、消防長(消防署長)が違反した事実を確認し、それを当該消防設備士及び都道府県知事に通知、違反点数が20点以上になると免状返納命令が発出されるということになります。

詳しくは、平成12年3月24日消防予第67号の「消防設備士免状の返納命令に関する運用について (通知) 」を参照してください。

ちなみに点検業者のAが消防設備士の免状を持っている前提ですが、万が一無資格工事であった場合(消防設備士ではない)は、また違った行政処分が下る恐れがあります。

ですので「無資格・無誠実業務 ダメ、ゼッタイ」です。

 

まとめ

最後までご覧いただきありがとうございます。

今回は消防設備士としての資質を考えさせられる内容でした。

当ブログに来ている方にはこのような方はいないと思いますが、確認の意味で記事にさせていただきました。

消防設備士の業務は工事や改修(整備)、点検などありますが、これらに関して「技術上に基準に則り、法令に従って誠実に業務を行う」ということがまさにやるべき事だと筆者は思います。

筆者もこの消防設備業界は長いのでこのようなよろしくない業者の話はよく耳にしますが、そのたびにモヤモヤします。

筆者含め誠実業務を行っている消防設備士が多数いる一方で、このような方がいるというのは筆者の個人的な意見として非常に不公平だし残念です。

このような不誠実業者に対しては消防機関も積極的にしかるべき措置をしていただけるように切に願います。