自動火災報知設備の設置基準 その3

この記事は約8分で読めます。

皆さんこんにちは。

今回は感知区域の説明と感知器の個数算定、熱感知器(スポット・分布)の設置基準をやっていきます。

煙感知器の設置基準については下記の記事を参照してください。

 

スポンサーリンク
スポンサーリンク

感知区域とは?

感知区域とは、感知器により火災の発生を有効に感知できる区域を指し、壁又は取付面から0.4m(差動式分布型感知器・煙感知器は0.6m)以上突き出したはりなどによって区画された部分のことを言う。

感知区域の例

上図の(1)は、天井面(感知器の取付面)から突き出した梁などがないので、1つの感知区域としてみなすことができます。

(2)は、天井面から床面まで間仕切り(壁などを新設した等)があり、天井面(感知器の取付面)から突き出した梁など(0.4m以上、煙感知器や差動式分布型は0.6m)に該当しますので、感知区域は別々になります。

(3)は、天井面(感知器の取付面)から梁(防煙タレ壁(固定式)など含む)が突き出していて、この長さが0.4m以上(差動式分布型や煙感知器の場合は0.6m以上)になると図のように別々の感知区域になってしまいます。

(4)は、床面より壁(衝立など)が天井面に向かって立っていますが、当該壁と天井面に空間がある場合には、天井面(感知器の取付面)から突き出した梁などには該当しないので1つの感知区域としてみなすことができます。

ただ、この天井面から壁(衝立など)までの距離については〇〇m以上といった法令はありませんが、熱感知器の場合の取付位置が取付面から0.3m以内ということを考慮すると、少なくても0.3m以上は空けたいところです。

上記の距離に関しては、所轄消防の担当者や火災予防条例などのより変わりますので、間仕切りなどを新設する場合には事前に所轄消防への相談へ行くことをオススメします。

 

感知器の個数の算定

感知器は各感知区域ごとに感知器の種別や取付面の高さに応じて下表で定める床面積(感知面積)(多信号感知器は、その有する種別に応じて定める床面積のうち最も大きい面積)につき、1個以上の個数を下式により算定して、火災を有効に感知できるように設けなければならない。


必要個数 = 感知区域の面積(㎡) ÷ 設置したい感知器1個の感知面積(㎡)


・例えば、床面積88㎡の居室(取付面の高さは4m未満)(その他構造)に差動式スポット型感知器の2種を設置したい場合は、

必要個数 = 88㎡ ÷ 40㎡ → 2.2(小数点以下を切り上げて整数にする)≒ 3

なので、この居室には差動式スポット型感知器が3個必要になる。

・他にも、床面積125㎡の居室(取付面の高さは4m未満)(その他構造)に光電式スポット型感知器の2種を設置したい場合は、

必要個数 = 125㎡ ÷ 150㎡ → 0.83 ≒ 1

なので、この居室には光電式スポット型感知器は1個で間に合う。

各種別ごとの感知区域面積表(熱感知器のみ)

 

各種感知器の設置基準

それでは実際に感知器を設けるにあたり、どのように設置すれば良いかの基準値について説明していきます。

煙感知器の設置基準は下記の記事を参照してください。

 

熱感知器の設置基準

熱感知器には、差動スポット・定温スポット・補償スポット・熱複合スポットがあり、それらの設置位置や基準を以下で説明します。


取付位置

(1)感知器の下端は、取付面の下方0.3m以内の位置に設置する。(下図 図1参照)

(2)換気口・エアコン・ファンコイルなどの吹出し口がある場合には、吹出し口から1.5m以上離れた位置に設置する。(下図 図2参照)

(3)感知器は45°以上傾斜させないように設置する。

45°以上の傾斜面に取付ける場合は下図のように座板などを用いて傾斜しないように設置する。(下図 図3参照)

 

(4)火災を有効に感知できるように、感知区域内の平均した位置に感知器を設ける(下図 図4参照)


試験器の位置

差動式スポット型感知器を電気室高圧配線上部や、空調設備のダクト裏など点検が容易に行えない場所に設置する場合は、差動スポット試験器を設ける。

  1. 試験器は試験が容易に行える場所で、床面より0.8m~1.5mの高さに設ける。
  2. 試験器スイッチボックスを用いて露出、又は埋込工事で設置する。
  3. 感知器と試験器を接続する空気管は指定された長さ以内で接続する。

 

 

差動式分布型感知器

空気管式のもの

(1)露出長(小感知区域の場合)

空気管の露出部は、一感知区域ごとに20m以上とする。
空気管の露出部が小部屋・押入れ・小区画などで20mに満たない場合は、コイル巻きや二重巻きなどにより20m以上露出させる。(下図 図5参照)

(2)接続長

空気管の接続長全長は、一の検出部につき100m以下とする。
この場合は検出部まで接続する空気管の長さも全長に含まれる。

(3)取付位置

  • 空気管は、取付面の下方0.3m以内の位置に設置し、かつ、感知区域の取付面の各辺から1.5m以内の位置に設ける。(下図 図6参照)
  • 検出部は点検が容易な場所、通行に支障とならない位置に、5°以上傾斜させないようにしっかりと取り付ける。

空気管の設置位置の例

(4)空気管の相互距離

(a)原則

相対する空気管の相互距離は、主要構造部を耐火構造とした防火対象物では9m以下、その他構造の場合は6m以下となるように設置する。(下図 図7参照)

(b)例外

感知区域の規模・形状により有効に火災を感知できると認められる場合は、下図のような設置方法を用いることができる。

空気管の相互距離の例外


熱電対式のもの

(1)最低接続個数・最大接続個数

熱電対部の最低接続個数は、一感知区域ごとに4個以上とする。

また、最大接続個数は、一の検出部につき20個以下とする。

(2)感知面積

熱電対部は、感知区域ごとにその床面積が72㎡(耐火構造は88㎡)以下の場合は4個以上設け、72㎡(耐火構造は88㎡)を超える場合は、熱電対部4個に18㎡(耐火構造は22㎡)までを増すごとに1個を加えた個数を設置する。

例えば感知区域(耐火構造以外)が110㎡だとして、熱電対で警戒しようとした場合に

110 ÷ 18 = 6.11 ≒ 7

なので7個の熱電対部を設ければ足りる。

(3)取付位置

  1. 熱電対部は取付面の下方0.3m以内に設置する。
  2. 検出部は点検しやすく、かつ、通行に支障のない位置に、5°以上傾けないようにしっかりと取り付ける。

(4)極性及び最大合成抵抗

  1. 熱電対部には極性があるので熱電対部及び検出部への接続は極性を確認して起電力が蓄積されるように直列に接続しなければならない。
  2. 熱電対部と接続電線の最大合成抵抗は、検出部に指定された値以下でなければならない。ちなみに○電気製の検出部の指定合成抵抗は9Ωである。

熱電対部の設置例


熱半導体式のもの

(1)最低接続個数及び最大接続個数

感熱部の最低接続個数は、一感知区域ごとに2個(取付面の高さが8m未満の場合は1個)以上とする。

また、感熱部の最大接続個数は、一の検出部につき15個以下とする。

(2)取付位置

  1. 感熱部は取付面の下方0.3m以内に設置する。
  2. 検出部は点検しやすく、かつ、通行に支障のない位置に、5°以上傾けないようにしっかりと取り付ける。

(3)最大合成抵抗

感熱部と接続電線との最大合成抵抗は、検出部に指定されている数値以下とする。


定温式感知線型感知器

(1)取付位置

感知器は、取付面の下方0.3m以内の位置に設ける。

(2)取付間隔

感知器は、感知区域ごとに取付面の各部からいずれかの部分までの水平距離が下図に示す数値以下となるように設置する。

(3)感知線の接続

感知線の全長は指定された抵抗値以内とし、感知線の作動後は再利用が出来ないことを考慮して、1室ごとに電線との接続箇所を端子などで接続しておき、後の交換が容易に出来るようにしておくこと。

定温式感知線型感知器の取付間隔の例

 

まとめ

最後までご覧いただきありがとうございます。

今回は感知器の個数算定と熱感知器の設置基準を説明しました。算定の部分の表を見ると頭がこんがらがってくるので一言。差動スポットは一般的に2種を、定温式は特種を使用するのでその面積を覚えれば楽です。まぁ差動スポット2種と定温スポット特種の算定面積は同じなので、耐火構造なら4m未満→70㎡、8m未満→35㎡と覚え、その他構造なら4m未満→40㎡、8m未満→25㎡と覚えましょう。

また熱感知器の設置位置も取付面から下方30cm以内に設置というのは覚えておきましょう。既設の空気管や熱電対の点検で感熱部がたるんで取付面の下方30cmを超えている場合は不良になるので、検出部だけ点検してOKにしないで、感熱部(感知線)も目視で確認してたるんでいないか確認しましょう。メッセンジャーワイヤーが破断して感熱部がたるむのはよくあります。

次回は煙感知器(スポット・分離)と炎感知器の設置基準を説明します。