自動火災報知設備の設置基準 その4

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皆さんこんにちわ。

今回は煙感知器(スポット・光電分離)と、複合式感知器・炎感知器・アナログ式感知器の設置基準を説明していきます。

熱感知器の設置基準については下記の記事を参照してください。

 

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煙感知器(スポット型)の設置基準

設置位置

  1. 感知器の下端は、取付面の下方0.6m以内の位置に設ける。
  2. 感知器は、壁・はりなどから0.6m以上離れた場所に設ける。(下図 図1参照)
  3. 天井が低い居室・狭い居室は、感知器を入口近くに設置する。(下図 図2参照)
    ※天井が低い居室とは、床面から天井面までの距離がおおむね2.3m未満の居室をいう。
    ※狭い居室とは、おおむね40㎡未満の居室をいう。
  4. 天井付近に吸気口(換気扇など)がある場合は、その吸気口(換気扇など)付近に感知器を設ける。(下図 図3参照)

    煙感知器の設置基準

  5. 感知器は、廊下・通路・階段・傾斜路を除く感知区域ごとに、感知器の種別・取付面の高さに応じて、下表に示す床面積に1個以上の感知器を、火災を有効に感知できるように設ける。

    煙感知器の算定面積

  6. 感知器を、廊下・通路に設ける場合は感知器相互間の歩行距離を30m(3種の煙感知器は20m)以下とする。この場合、歩行距離が30mにつき垂直距離がおおむね5m以下となるような勾配の傾斜路は通路に準じて歩行距離30mにつき1個以上の感知器を設ける。(下図 図4参照)
  7. 階段・傾斜路は、垂直距離15m(3種は10m)につき1個以上の感知器を設ける。この場合、地階の階数が2以上ある時は警戒区域設定上、地上階と地階が別の警戒区域になる為感知器は別々に設けなければならない。
    だが、地階の階数が1の場合は警戒区域を地上階に含められるので別個で設けなくてもよい。
    ただし、特定1階段防火対象物の場合には垂直距離7.5mにつき1個以上の感知器をそれぞれ室内に面する部分・上階の床の下面又は頂部に設置する。(煙感知器は1種か2種に限る。)(下図 図5参照)

    煙感知器の設置基準

  8. 開放式の階段で外部からの気流が通る場所などで、火災を有効に感知できない所は煙感知器を設置しなくても良い。
  9. 風速は5m/秒以上になるおそれのある場所に設置する場合は、感知器に直接風圧がかからないような遮へい板などを設ける。
  10. エスカレーターや廻り階段などに感知器を設ける場合は、垂直距離15mにつき1個以上の煙感知器を設置する。(下図 図6参照)
  11. エレベーター昇降路・パイプシャフトや、これらに類する場所(水平断面積1㎡以上のもの)の最上部に感知器を設置する。(下図 図7参照)

    煙感知器の設置基準

    なお、エレベーター昇降路の上部に機械室があり、エレベーター昇降路と機械室が完全に水平区画されていない場合は、感知器を機械室に設置することができる。ただし、完全に水平区画されている場合は、エレベーター昇降路の最上部に感知器を設置しなければならない。(下図 図8参照)
    また、エレベーターシャフト・パイプシャフトなどに煙感知器を設置した場合に設置後の維持管理が困難となる場合が多いので、点検口付きのもの(点検BOX)や感知器の取付台を移動式にするなどの措置を講じておく必要がある。(下図 図9参照)

    煙感知器の設置基準

 

感知器を設置しなくてもよい場所

  1. 階段に接続していない10m以下の廊下・通路など(下図 図10(a)参照)
  2. 廊下・通路から階段に至るまでの歩行距離が10m以下の場合の廊下・通路(下図 図10(b)・(c)参照)
  3. パイプシャフト、これらに類する場所が2の階以下で完全に水平区画されている部分。なお、出入口がある場合は出火に危険性が少ない部分を除き、水平断面積1㎡以上のものには感知器が必要である。(下図 図10(d)参照)

    煙感知器を免除できる部分

 

 

光電式分離型感知器の設置基準

  1. 感知器の受光面が日光をうけないように設置する。
  2. 複数設置する場合にはお互いの干渉を防ぐために走光部と受光部を逆向き(互い違い)に設置する。
  3. 感知器の光軸(感知器の送光面の中心と受光面の中心を結ぶ線のこと。以下同じ)が並行する壁から0.6m以上離れた位置に設置する。(下図 図11参照)
  4. 感知器の送光部・受光部のレンズの位置はその背後の壁から1m以内の位置に設置する。
  5. 感知器を設置する区域の天井などの高さが20m未満の場所に設置する。また、天井高さが15m以上20m未満の場所に設置する感知器は1種の感知器を用いる。
  6. 感知器の光軸の高さが天井などの高さの80%以上となる部分に設置する。
  7. 感知器の光軸の長さが感知器の公称監視距離の範囲内となるように設置する。
  8. 感知器は、壁によって区画された区域ごとに、その区域の各部分から1の光軸までの水平距離が7m以下となるように設置する。
    また、壁面に凹凸がある場合には壁面の最深部から7m以下になるように設け、7mを超えた部分は未警戒部分となるので、スポット型感知器などを設置して警戒させる。(下図 図12参照)

    光電式分離型感知器の設置基準

 

複合式スポット型及び多信号感知器

複合式スポット型・多信号感知器のように種別・感度が異なる感知器を組み合わせた感知器の警戒区域・取付面の高さ・取付面から感知器下端までの距離については、それぞれの種別に応じて定められた規定を遵守する必要があり、以下により設置する。

(1)感知区域

感知区域は熱式スポット型感知器は壁又は取付面から0.4m以上のはりなど、煙式スポット型感知器は0.6m以上突出したはり又は壁などで区画された部分と決まっているので、熱煙複合式スポット型感知器を設置する場合は0.4mの規定が適用になる。

(2)取付面の高さ

熱式スポット型感知器の取付面の高さは8m未満、煙式スポット型感知器の取付面の高さは最高20m未満と規定されているので、熱煙複合式スポット型感知器を設置する場合は、8m未満の高さの位置に設置する。

(3)感知区域の面積

感知区域の面積は、感知器の種別・取付面の高さに応じて定められた床面積のうち最も大きい床面積となっている。
例えば差動式スポット型2種の感知器と光電式スポット型2種の複合感知器を、取付面の高さが3.5m、建物構造は耐火構造以外の場所に設置する場合、感知面積は差動式2種は40㎡、光電式2種は150㎡なので、大きいほうの150㎡が適用される。

(4)感知器の下端

感知器の下端は、熱式スポットの場合は取付面の下方0.3m以内、煙式スポットの場合は取付面から下方0.6m以内となっているので、熱煙複合感知器を設置する場合は0.3mの規定が適用される。

(5)その他の適用

上記(1)~(4)の規定もふまえて、以下の要件も適用する。

  1. 天井が低い居室又は狭い居室は、入口付近に感知器を設ける。
  2. 天井付近に吸気口(換気扇など)がある場合は、その吸気口付近に感知器を設置する。
  3. 感知器は、壁又ははりなどから0.6m以上離れた位置に設置する。
  4. 廊下・通路に設置する場合は、歩行距離30m(煙感度3種の場合は20m)につき1個以上の感知器を設置する。

 

炎感知器の設置基準

炎感知器(道路の用に供される部分に設けるものを除く)の設置基準は以下による。

  1. 感知器は、天井、または壁に設置する。
  2. 感知器は、壁などによって区画された区域ごとにその区域の床面からの高さが1.2mまでの空間(監視空間という。以下同じ)の各部分から感知器までの距離が公称監視距離の範囲内となるように設置する。(下図 図13参照)
  3. 感知器は障害物などにより有効に火災の発生を感知できないことがないように設置する。間仕切りなどが増設されて監視空間に未警戒部分が発生してしまった場合は、警戒する為の感知器を別で設ける。(下図 図14参照)
  4. 感知器は日光を受けない位置に設置する。ただし、感知障害が起きないように遮光板などを設けた場合は差し支えない。

炎感知器の設置基準

 

炎感知器(道路の用に供される部分に設けるものに限る)の設置基準は以下による。

  1. 感知器は、道路の側壁部又は路端の上方に設置する。
  2. 感知器は、道路面(監視員通路がある場合は、その通路面)からの高さが1.0m以上1.5m以下の部分に設置する。
  3. 感知器は、道路の各部分から感知器までの距離(監視距離という。以下同じ)が公称監視距離の範囲内となるように設置する。ただし、感知器の設置個数が1の場合は2個設置する。
  4. 感知器は、障害物などで有効に火災の発生を感知できないことがないように設置する。
  5. 感知器は、日光を受けない場所に設置する。ただし、感知障害が起きないように遮光板などを設けた場合は差し支えない。

 

アナログ式感知器の設置基準

熱アナログ式スポット型感知器・イオン化アナログ式スポット型感知器・光電アナログ式スポット型感知器・光電アナログ式分離型感知器(以下「アナログ式感知器」という)の設置基準は、消防法施行規則第23条に定める規定の他、以下による。

  1. アナログ式自動火災報知設備は、受信機において注意表示・火災表示を行うためにアナログ式感知器、アナログ式中継器から火災情報信号を受信したときに表示する温度の値・煙濃度の値の設定を行わなければならない。なので設置するアナログ式感知器は設定する表示温度・濃度の値を消防法施行規則第23条第7項の表により示す種別の感知器の温度等の範囲において設定する。この温度等の範囲により、当該アナログ式感知器を1種で運用するのか、2種で運用するのかを選択できる。
  2. アナログ式感知器から受信機までの配線は、消防法施行規則第12条第1項第5号に規定されている耐熱配線を用いること。
  3. アナログ式中継器・アナログ式受信機には、その付近に「表示温度等設定一覧表(図)」を常備しておくこと。またこの「表示温度等設定一覧表」は、その値を変更した場合にはその変更した値及び年月日を記載しておく。

 

まとめ

最後までご覧いただきありがとうございます。

今回は煙感知器・複合式感知器・炎感知器・アナログ式感知器の設置基準を説明してきました。煙感知器は天井高さ20m未満まで設置できて、警戒面積の熱感知器に比べて大きく魅力的ではありますが、熱感知器に比べて価格が高いのと、点検時に煙の感度を測定しなくてはならず一長一短です。

また縦穴区画(階段やエレベーターシャフトなど)には煙感知器しか設置できないので、煙感知器をまったく使わずに警戒できる防火対象物っていうのはなかなか無いかと思います。(無窓階以外で平屋建てとか)

アナログ式感知器は個々の感知器の感度を設定したりする労力はかなりのものですが、自動試験機能付きのアナログ式感知器であれば、後の点検で煙感度を測定しなくても良いのでこれも一長一短です。

P型受信機でも煙感知器に自動試験機能を付加させた感知器を使用して煙感度の点検をしなくても良いシステム(通称PA感知器)があったり、煙感知器を遠隔で試験(作動試験とか煙感度試験)できるものもあるので、自火報の設計を行う機会がありましたらこれらのシステムもあるので一考されてはいかがでしょうか。

 

消防法施行規則第23条

自動火災報知設備の感知器等の設置基準について記されている部分。

 

消防法施行規則第12条第1項第5号

耐熱保護配線に係る配線及び施工方法について記されている部分。