泡消火設備の点検要領 総合点検編

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皆さんこんにちは。

今回は泡消火設備の総合点検の部分について解説していこうと思いますが、令和3年5月27日消防予第270号通知(消防用設備等の点検要領の一部改正について)に併せて内容を更新しています。

 

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固定式の泡消火設備

ポンプ方式

非常電源に切り替えた状態で、手動式起動操作部又は自動式起動装置の作動により以下の事項について確認を行う。

  1. 一斉開放弁については設置後15年を経過したものに限り実施することとし、設置後20年を経過しないものにあっては、設置後15年を経過した日以後5年を経過する日までの間に、設置後20年を経過したものにあっては、総合点検において機能が正常であることを確認した直近の日以後5年を経過する日までの間に実施すること。
    この場合においては当該期間内に機器点検において機能が正であることを確認した時は、その日において確認したものとみなす。
  2. 発泡倍率・放射圧力・混合率は次により確認する。
    1. 別記1「泡消火設備発泡倍率及び25%還元時間測定方法」の発泡倍率測定方法に従って、発泡倍率を測定するとともに当該測定により採取された水溶液を用いて、糖度計法・比色計法又は電気抵抗法により混合率(希釈容量濃度)を測定する。
      ただし、設置後又は消火薬剤の交換後15年(たん白泡消火薬剤を用いるものにあっては5年)を経過したものに限ること。
  3. 減圧のための措置は、加圧送水装置の直近及び最遠の放射区画の起動装置の開閉弁の開閉操作等によりポンプを起動させて確認する。
病院等で非常電源に切り替えて確認することが短時間でも困難な場合は常用電源で点検することができるものとする。この場合は点検票備考欄に常用電源を使用した旨を記入する。
消火薬剤の機能を維持するための措置が講じられている場合は、非常電源に切り替えた状態で、一斉開放弁の二次側の止水弁を閉鎖するとともに排水弁を開放し、手動起動操作部又は自動式起動装置も作動により確認することができるものとする。
この場合において、消火薬剤の機能を維持するための措置とは、別記2に示す措置を言い、当該措置が講じられていることを確認することで分布等の点検項目を確認したものとみなすことができること。

 

起動性能等

加圧送水装置

加圧送水装置が確実に起動するか確認する。

表示・警報等

表示・警報等が適正に行われるか確認する。

電動機の運転電流

電動機の運転電流値が許容範囲内であるか確認する。

運転状況

運転中に不規則若しくは不連続な雑音・異常な振動又は発熱がないか確認する。


一斉開放弁

一斉開放弁が確実に作動(開放)するか確認する。


分布等

  • 低発泡を用いるもの
  • 高発泡を用いるもの
    1. 分布・放射圧力・発泡倍率・混合率等は、設計図書に基づく範囲内であるか確認する。
    2. 放射圧力が規定の圧力範囲であるか確認する。

減圧のための措置

当該泡放出口の性能の上限を超えない範囲内であるか確認する。

 

高架水槽方式および圧力水槽方式

非常電源に切り替えた状態で、手動式起動操作部又は自動式起動装置の作動により以下を確認する。

  1. 一斉開放弁については設置後15年を経過したものに限り実施することとし、設置後20年を経過しないものにあっては、設置後15年を経過した日以後5年を経過する日までの間に、設置後20年を経過したものにあっては、総合点検において機能が正常であることを確認した直近の日以後5年を経過する日までの間に実施すること。
    この場合においては当該期間内に機器点検において機能が正であることを確認した時は、その日において確認したものとみなす。
  2.  発泡倍率・放射圧力・混合率は次により確認する。
    1. 別記1「泡消火設備発泡倍率及び25%還元時間測定方法」の発泡倍率測定方法に従って、発泡倍率を測定するとともに当該測定により採取された水溶液を用いて、糖度計法・比色計法又は電気抵抗法により混合率(希釈容量濃度)を測定する。
      ただし、設置後又は消火薬剤の交換後15年(たん白泡消火薬剤を用いるものにあっては5年)を経過したものに限ること。
  3. 減圧のための措置は、加圧送水装置の直近及び最遠の放射区画の起動装置の開閉弁の開閉操作等によりポンプを起動させて確認する。
病院等で非常電源に切り替えて確認することが短時間でも困難な場合は常用電源で点検することができるものとする。この場合は点検票備考欄に常用電源を使用した旨を記入する。
消火薬剤の機能を維持するための措置が講じられている場合は、非常電源に切り替えた状態で、一斉開放弁の二次側の止水弁を閉鎖するとともに排水弁を開放し、手動起動操作部又は自動式起動装置も作動により確認することができるものとする。
この場合において、消火薬剤の機能を維持するための措置とは、別記2に示す措置を言い、当該措置が講じられていることを確認することで分布等の点検項目を確認したものとみなすことができること。

表示・警報等

表示・警報等が適正に行われるか確認する。

一斉開放弁

一斉開放弁が確実に作動(開放)するか確認する。

分布等

  • 低発泡を用いるもの
  • 高発泡を用いるもの
    1. 分布・放射圧力・発泡倍率・混合率等は、設計図書に基づく範囲内であるか確認する。
    2. 放射圧力が規定の圧力範囲であるか確認する

減圧のための措置

当該泡放出口の性能の上限を超えない範囲内であるか確認する。

 

移動式の泡消火設備

ポンプ方式

非常電源に切り替えた状態で、手動式起動操作部又は自動式起動装置の作動により以下を確認する。

  1. 発泡倍率・放射圧力・混合率は次により確認する。
    1. 別記1「泡消火設備発泡倍率及び25%還元時間測定方法」の発泡倍率測定方法に従って、発泡倍率を測定するとともに当該測定により採取された水溶液を用いて、糖度計法・比色計法又は電気抵抗法により混合率(希釈容量濃度)を測定する。
  2. 減圧のための措置は、加圧送水装置の直近及び最遠の放射区画の起動装置の開閉弁の開閉操作等によりポンプを起動させて確認する。
病院等で非常電源に切り替えて確認することが短時間でも困難な場合は常用電源で点検することができるものとする。この場合は点検票備考欄に常用電源を使用した旨を記入する。

起動性能等

加圧送水装置

加圧送水装置が確実に起動するか確認する。

表示・警報等

表示・警報等が適正に行われるか確認する。

電動機の運転電流

電動機の運転電流値が許容範囲内であるか確認する。

運転状況

運転中に不規則若しくは不連続な雑音・異常な振動又は発熱がないか確認する。

発泡倍率・放射能力・混合率

放射圧力・発泡倍率・混合率等は、設計図書に基づく範囲内であるか確認する。

減圧のための措置

当該泡放出口の性能の上限を超えない範囲内であるか確認する。

 

高架水槽方式および圧力水槽方式

表示・警報等

表示・警報等が適正に行われるか確認する。

発泡倍率・放射能力・混合率

放射圧力・発泡倍率・混合率等は、設計図書に基づく範囲内であるか確認する。

減圧のための措置

当該泡放出口の性能の上限を超えない範囲内であるか確認する。

 


別記1「泡消火設備発泡倍率及び25%還元時間測定方法」

その1(たん白泡消火薬剤・合成界面活性剤泡消火薬剤)

適用範囲

本測定方法は、たん白泡消火薬剤又は合成界面活性剤泡消火薬剤のうち低発泡のものを使用したものについて規定する。(水成膜泡消火薬剤はその2参照

必要器具
  • 発泡倍率測定器具
    1. 1400mℓ容量の泡試料コンテナ 2個
    2. 泡試料コレクタ 1個
    3. 秤 1個
  • 25%還元時間測定器具
    1. スットプウォッチ 2個
    2. 泡試料コンテナ台 1個
    3. 100mℓ容量の透明プラスチック容器 4個

出典“財団法人 日本消防設備安全センター 消防用設備等点検実務必携より” 泡試料コレクタの例


泡試料の採取法

泡ヘッドの場合

発泡面積内の指定位置に、1400mℓ泡試料コンテナ2個を乗せた泡試料コレクタを位置につけ、当該コンテナに十分泡が満たされるまでコンテナをコレクタの上に乗せ、満たされたらストップウォッチを押し、秒読みを開始するとともに、泡ヘッドより発泡落下中の泡から採取した試料を外部に移して、まっすぐな棒でコンテナ上面を平らにして余分な泡及びコンテナ外側又は底面に付いている泡を取り除き、当該試料を分析する。

泡ノズルの場合

発泡落下地点のほぼ中央に、1400mℓ泡試料コンテナ2個を乗せた泡試料コレクタを位置につけ、当該コンテナに十分泡が満たされるまでコンテナをコレクタの上に乗せ、満たされたらストップウォッチを押し、秒読みを開始するとともに、泡ノズルより発泡落下中の泡から採取した試料を外部に移して、まっすぐな棒でコンテナ上面を平らにして余分な泡及びコンテナ外側又は底面に付いている泡を取り除き、当該試料を分析する。

出典“財団法人 日本消防設備安全センター 消防用設備等点検実務必携より” 泡試料コンテナの例


測定法

発泡倍率

発泡倍率は空気混入前の元の泡水溶液量に対する最終の泡量の比を計算するもので、あらかじめ泡試料コンテナの重量を測定しておき、泡試料をグラム単位まで測定し、下記の計算式により求める。

発泡倍率=1400mℓ/コンテナ重量を除いた全重量(g)

25%還元時間

泡の25%還元時間は、採取した泡から落ちる泡水溶液量がコンテナ内の泡に含まれている全泡水溶液量の25%(1/4)排液するのに要する時間を分で表したものをいい、水の保持能力の程度、泡の流動性を特別に表したもので、下記の方法で測定する。

測定は、発泡倍率測定の試料で行い、泡試料の正味重量を4等分することにより、泡に含まれている泡水溶液の25%容量(単位mℓ)を得る。

この量が排液するに要する時間を知るためにコンテナをコンテナ台におき、一定時間内にコンテナの底に溜まる液を100mℓ容量の透明プラスチック容器に排液する。

測定の一例をあげると次のとおりである。
泡試料の正味重量が180gあったとすると

25%容量値=180/4=45(mℓ)

そして排液量の値が次のように記録されたとする
時間(分)    排液量(mℓ)
0        0
0.5        10
1.0        20
1.5        30
2.0        40
2.5        50
3.0        60
この記録から25%容量の45mℓは2.0分と2.5分の間にあることがわかる。
即ち、
45mℓ(25%容量値)    -40mℓ(2.0分時の排液量値)1  
50mℓ(2.5分時の排液量値)-40mℓ(2.0分時の排液量値) 2

以上から2.25分が求められ、これにより性能を判定する。

出典“財団法人 日本消防設備安全センター 消防用設備等点検実務必携より” 泡試料コンテナ台の例

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その2(水成膜泡消火薬剤)

適用範囲

本測定方法は、水成膜泡消火薬剤を使用して発泡させたものについて規定する。


必要器具
  • 発泡倍率測定器具
    1. 1000mℓ目盛り付シリンダ 2個
    2. 泡試料コレクタ 1個
    3. 1000g秤(またはこれに近いもの) 1個
  • 25%還元時間測定器具
    1. スットプウォッチ 1個
    2. 1000mℓ目盛り付シリンダ 2個

出典“財団法人 日本消防設備安全センター 消防用設備等点検実務必携より” 泡試料コレクタの例


泡試料の採取法

泡ヘッドの場合

発泡面積内の指定位置に、1000mℓ目盛り付シリンダ2個を乗せた泡試料コレクタを位置につけ、当該シリンダに泡が満たされるまで試料を採取し、満たされたらストップウォッチを押し、秒読みを開始するとともに、採取した試料を外部に移して、余分な泡及びシリンダ外側又は底面に付いている泡を取り除き、当該試料を分析する。

泡ノズルの場合

発泡落下地点のほぼ中央の位置に、1000mℓ目盛り付シリンダ2個を乗せた泡試料コレクタを位置につけ、当該シリンダに泡が満たされるまで試料を採取し、満たされたらストップウォッチを押し、秒読みを開始するとともに、採取した試料を外部に移して、余分な泡及びシリンダ外側又は底面に付いている泡を取り除き、当該試料を分析する。


測定法

発泡倍率

発泡倍率は空気混入前の元の泡水溶液量に対する最終の泡量の比を計算するもので、あらかじめ1000mℓ目盛り付シリンダの重量を測定しておき、泡試料をグラム単位まで測定し、下記の計算式により求める。

発泡倍率=1000mℓ/シリンダ重量を除いた全重量(g)

25%還元時間

泡の25%還元時間は、採取した泡から落ちる泡水溶液量がシリンダ内の泡に含まれている全泡水溶液量の25%(1/4)還元するのに必要な時間を分で表したものをいい、水の保持能力の程度、泡の流動性を特別に表したもので、下記の方法で測定する。

測定は、発泡倍率測定の試料で行い、泡試料の正味重量を4等分することにより、泡に含まれている泡水溶液の25%容量(単位mℓ)を得る。

この量が還元するに要する時間を知るためにシリンダを平らな台上におき、一定時間内にシリンダの底に溜まる液を泡と容易に分離していることが判然とする計量線で測定する。

測定の一例をあげると次の通りである。
泡試料の正味重量が200gあったとすると1gを1mℓとして換算し

25%容量値=200mℓ/4→50mℓ

そして還元量の値が次のように記録されたとする。
時間(分)    還元量(mℓ)
0        0
1.0        20
2.0        40
3.0        60

この記録から25%容量の50mℓは2.0分と3.0分の間にあることがわかる。
即ち、
50mℓ(25%容量値)    -40mℓ(2.0分時の還元量値)10=0.5
60mℓ(3.0分時の還元量値)-40mℓ(2.0分時の還元量値) 20

以上から2.5分が求められ、これにより性能を判定する。

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別記2 消火薬剤の機能を維持するための措置

「消火薬剤の機能を維持するための措置」とは、次のいずれかの措置が講じられていることをいう。

  1. 総合点検等により実際に泡放射を行い、消火薬剤の機能を確認してから5年(基準年から30年を経過したもの、又はたん白泡消火薬剤にあっては3年)以内であること。
  2. 消火薬剤貯蔵槽から消火薬剤の一部をサンプリングし「比重」「粘度」「水素イオン濃度」「沈殿量」「膨張率」「25%還元時間」「その他消火薬剤の種類ごとの項目」を検査することによって、消火薬剤の機能を確認してから5年(基準年から30年を経過したもの、又はたん白泡消火薬剤にあっては3年)以内であること。

 

まとめ

最後までご覧いただきありがとうございます。

今回は泡消火設備の総合点検の部分について解説させていただきましたが、令和3年5月にこの泡消火設備の点検要領について一部改正がありましたのでこの記事もそれに併せてリライトさせていただきました。

改正の主な内容は(簡単に言うと)

  • 一斉開放弁の開放点検について(設置後15年を経過してから点検開始)
  • 総合点検における「分布等」について消火薬剤の機能を維持するための措置(サンプリングなど)を講じている場合は分布や放射圧力、発泡倍率などの項目について、一斉開放弁の開放により確認ができるものとする。

ちなみに皆さんは総合点検時に泡放射試験行っていますか?泡放射時にでる泡水溶液は産業廃棄物なのでそこらに廃棄・・・ってわけにはいかないし、泡原液の補充や、一斉開放弁二次側の配管内の水溶液を水抜きしたり、金銭面の問題となかなか難しいところです。

PFOS含有泡原液ならサンプリングで放射試験を行ったとみなすことができるので実際に放射しなくても済みます。ですがPFOS含有泡原液は徐々にPFOS非含有の泡原液へと交換されていくでしょう。

いくら実火災等の災害時に使用が認められているとはいえ、実際に使用すれば環境への悪影響は避けられませんからね。もし泡原液を全量交換する場合はついでにダイヤフラム(ラバーパック)の交換も一緒に行いましょう(プレッシャープロポーショナー方式の場合)。