二酸化炭素消火設備における法令改正のまとめ

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皆さんこんにちは

2022年9月に二酸化炭素消火設備についての法令改正があり、既存の防火対象物の関係者や私達消防設備士にとっての話題になりました。

ですがこの法令改正も新規設置向けの改正と既存設置設備向けの改正(いわゆる遡及)がありますので、何がどこまで必要なのかをまとめましたのでどうぞご活用ください!

今回の改正で対象となるのは「全域放出方式」のものだけで「局所放出方式」と「移動式」は対象外です

 

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法令改正の内容

みなさんもご存知かと思いますが令和2年から3年にかけて二酸化炭素消火設備における誤放射事故が立て続けに発生し死者が出てしまいました。

それを防ぐ目的で今回の法令改正では主に10の改正があります。

  1. 起動用ガス容器を設けること
  2. 起動装置に消火剤の放出を停止する旨の信号を制御盤へ発信するための緊急停止装置を設けること
  3. 自動式の起動装置については、2以上の火災信号により起動するものとすること
  4. 常時人のいない防火対象物であっても、自動式の起動装置を設けた場合の音響警報装置は音声による警報装置とすること
  5. 集合管又は操作管に消防庁長官が定める基準に適合する閉止弁を設けること
  6. 二酸化炭素を貯蔵する貯蔵容器を設ける場所及び防護区画の出入口等の見やすい箇所に二酸化炭素の危険性等に係る標識を設けること
  7. 閉止弁は、工事、整備、点検等により防護区画内に人が立ち入る場合は、閉止された状態を維持すること
  8. 自動手動切替え装置は、工事、整備、点検等により防護区画内に人が立ち入る場合は、手動状態に維持すること
  9. 消火剤が放射された場合は、防護区画内の消火剤が排出されるまでの間、当該防護区画内に人が立ち入らないように維持すること
  10. 制御盤の付近に設備の構造並びに工事、整備及び点検時においてとるべき措置の具体的内容及び手順を定めた図書を備えておくこと
※上記の5.〜10.は既存の二酸化炭素消火設備にも適応されます

ではこれらの改正内容の中で既存の二酸化炭素消火設備に適応される項目について解説していきます。

 

閉止弁を設ける

集合管に設置された閉止弁の例

これは閉止弁と呼ばれ、万が一設備が誤って起動してもガスが誤放射しないように止めておく弁ですが、古い設備だとこの閉止弁が設置されていない場合があるので集合管又は操作管のいづれかに一定の基準を満たす閉止弁を設置しなければならないという改正になります(2024年3月31日までに設置すれば一部緩和要件あり)。

現在すでに設置されている閉止弁についても一定の要件が必要とされていますので後述します。

期間内に新たに閉止弁を設置する場合にはある一定の要件に合致する閉止弁を設置しないといけませんが、その要件は

  1. 材質
  2. 耐圧試験
  3. 気密試験
  4. 等価管長
  5. 表示

上記の内容についてそれぞれ要件を満たした閉止弁を設置しなければなりません。

また

現在すでに設置されている閉止弁についても一定の要件が必要になります

ではどのような要件かというと、既存で設置されている閉止弁が

  1. 直接操作により操作する部分に、操作の方向又は開閉位置が表示されているものであること
  2. 見やすい箇所に常時開放し、点検時に閉止する旨が表示されているものであること
  3. 直接操作又は遠隔操作により操作した場合に、確実に開閉するものであること
  4. 次のa.~e.を閉止弁の見やすい箇所に容易に消えないよう表示すること。
    1. 製造者名又は商標
    2. 製造年
    3. 耐圧試験圧力値
    4. 型式記号
    5. 流体の流れ方向(流れ方向に制限のない場合は除く。)

このような要件がありますので既設の閉止弁に操作方向又は開閉位置が示されているか?表示が脱落していないか?などを確認しておかなければなりません。

 

二酸化炭素の危険性等に係る標識を設ける

既設の設備の場合には

  • 防護区画の中
  • 防護区画の出入口
  • 防護区画に隣接する区画の出入口

上記の場所に注意銘板と呼ばれる標識が貼ってあります(写真参照)

注意銘板(防護区画内のもの)の例

ですが法令改正に伴いこの標識も張り替える必要がありますので解説します。

既存の標識を張り替える必要があるのは、改正によって標識に

  1. 二酸化炭素が人体に危害を及ぼす恐れがあること
  2. 消火剤が放射された場合は、原則として放射された場所に立ち入ってはならないこと

上記の2つの内容が標識に入っていないといけないからです。

二酸化炭素消火設備に係る安全対策 | 二酸化炭素消火設備に係る安全対策 | 総務省消防庁
火災の予防や消火、救急、救助など国民一人ひとりが安心して暮らせる地域づくりに取り組む消防庁の情報を発信しています。

その為ガイドラインでは消防庁のホームページ(上記リンク)でこれらの標識をダウンロード及び印刷して掲示してくださいとなっていますので、既設の標識を撤去して「消火薬剤貯蔵容器を設ける場所(ボンベ室)」と「防護区画の出入口扉(外側)」には必ず設置、「防護区画の室内」及び「防護区画に隣接する区画の出入口」には必ず設置する標識と設置を推奨する標識がありますので詳しくは下記を確認してください。

標識の種類 標識の大きさ ボンベ室の出入口 防護区画の出入口 防護区画の室内 防護区画に隣接する部分の出入口
縦30cm以上

横30cm以上

(シンボルの部分の大きさ)

縦20cm以上

横30cm以上

縦20cm以上

横30cm以上

縦27cm以上

横48cm以上

※〇…設置が必要  △…設置を推奨

上記の標識(指定の大きさ以上の大きさ、かつ指定の色)を当該出入口又は室内に設置しなければなりませんので、消防庁のホームページで印刷をして掲示が必要になります。

既存設備の場合は設置してある標識を撤去しその部分に貼れば良いですが、一応標識を設置する位置の例を図にしましたので参考にしてください。

防護区画と隣接する部分の関係と標識を設置する場所の例

 

関係図書の備え付けが必要

閉止弁の設置と標識の設置(又は貼替え)と続いては「制御盤の付近に設備の構造並びに工事、整備及び点検時においてとるべき措置の具体的内容及び手順を定めた図書を備えておくこと」になりますが、どのような図書を備えるのかというと

  1. 機器構成図
  2. 系統図
  3. 防護区画及び貯蔵容器を貯蔵する場所の平面図
  4. 閉止弁の開閉操作手順及び手動自動切替え装置の操作手順

これらについて備えておく必要があります。

現状では事務室や防災センターなどにファイルに綴じられて保管されている例が多いかと思いますが、それを制御盤付近に備え付け、かつ閉止弁の開け閉め方法と自動・手動の切り替え方法の書類(写真やフローチャートなど)も作成して一緒に備えておかなければなりません。

もちろんファイルに綴じられている原本をコピーしたものを制御盤付近に備えても良いので、原本は大切に保管していただいた方が良いと思います。

 

その他必要な事項

上記の対策の他に必要な事項として「二酸化炭素消火設備の維持管理と安全対策」がありますので解説しますと、事故の発生を受けて防護区画内における工事・改修等の作業前及び平時からの管理についても徹底されました。

  1. 防護区画及び当該防護区画に隣接する部分の利用者、利用状況等について、十分な管理をすること。
  2. 維持管理点検等のために、関係者のみが出入りする場所にあっては、当該部分の関係者以外の者が出入りできないように出入口の管理の徹底を図ること。また、閉止弁を閉止せずに防護区画内に人が立ち入ることを禁止すること。
  3. 防火管理者、利用者及び作業員等に対して、二酸化炭素の人体に対する危険性、設備の適正な取り扱い方法、作動の際の通報、警報音並びに避難経路及び方法等について、周知徹底すること。
  4. 工事等のため防護区画内に立ち入る場合は閉止弁を閉止することとなるため、工事又は点検実施中に火災が発生した場合の対応について、計画を定め、作業員等に周知徹底すること。
  5. 建物関係者が不在となる夜間等の時間帯において、機械式駐車場等のメンテナンス等のため緊急的に作業員等が防護区画に立ち入ることが想定される建物にあっては、閉止弁が設けられた部分に当該作業員等が立ち入って閉止弁を確実に閉止することができるよう、所要の計画等を定めておくこと。
  6. 工事等の終了後は、閉止弁を確実に開放すること。
  7. 二酸化炭素消火設備が作動し、二酸化炭素が放出された場合には、直ちに消防機関への通報、当該設備の設置・保守点検等に係る専門業者等への連絡を行うとともに、二酸化炭素が放出された防護区画及び当該防護区画に隣接する部分への立入りを禁止すること。
  8. 二酸化炭素が放出された防護区画及び当該防護区画に隣接する部分に立ち入る場合にあっては、消防機関、専門業者等の指示に従うとともに、次の事項に留意すること。
    1.  二酸化炭素の排出は、消火が完全にされていることを確認した上で行うこと。
    2. 防護区画及び当該防護区画に隣接する部分に入室する場合は、二酸化炭素が十分に排出されていることを確認した後とすること。
  9. 避難訓練等で音響警報装置の警報音を聞く機会を設けること。
  10. 二酸化炭素消火設備が設けられている付近で、他の設備機器の設置工事、改修工事(特にハツリ工事等)又はメンテナンスが行われる場合には、第三類の消防設備士又は二酸化炭素消火設備を熟知した第一種の消防設備点検資格者が立会う事
  11. 点検要領書のより一層の充実化を図ること
  12. 点検者の技術レベルの向上を図ること

二酸化炭素消火設備の事故防止の為上記の事項について普段から維持管理・周知徹底・計画作成をする必要があります。

 

最後に

最後に今回の記事はある程度まとめた記事になりますので詳細ではありません。

もっと詳しく確認したい方はこのリンクにあるPDFを読んでください(消防予第573号 二酸化炭素消火設備の設置に係るガイドラインの策定について(令和4年11月24日))

またリーフレットもありますので確認してみてください(二酸化炭素消火設備に係る
基準改正のポイント )

また法令的な文章では分かりづらい!という方は消火装置メーカーのコーアツさんのホームページにコーアツさんがまとめたPDFがあるので見てみてください(下記リンク)

【更新】二酸化炭素消火設備の法令改正について | 株式会社コーアツ
株式会社コーアツからの重要なお知らせをご紹介します。