消防用設備に使われるいろいろな給水装置

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皆さんこんにちは。

今回は給水装置を紹介していこうと思いますが、消防用設備には水を使う色々な設備があり、これらにとって給水装置は必要不可欠な装置です。

よく設置されているものとしてボールタップがありますが、他にもFMバルブ(定水位弁)や電動弁を用いたものもありますので、電極棒を使用しての警報や電動弁の開閉の方式についてもお話させていただきながら紹介していこうと思います。

 

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ボールタップ方式

消防用設備では屋内消火栓を代表とする消火設備の呼水槽や消火水槽、高架補助水槽の給水装置として用いられて、概ね配管径20A以下の比較的給水量が少なくても大丈夫な給水配管に使用されていて、一般家庭のトイレのタンクの給水にも使用されている良く見かけるタイプの給水装置です。

ボールタップによる給水方式の例

上の写真の装置がボールタップ(複式)という給水装置の一種になります。

作動の原理としては、先端の金色の球が浮き球になっており水位が下がると浮きが沈みボールタップの弁体べんたいが開いて給水を始めて、水位が上がってくると浮きが上がってきて弁体を徐々に閉めていき、最終的に給水が止めるという仕組みになっています。

ちなみにこの弁体にはゴムを使用しているので、ゴミがかんだり経年劣化して定水位で給水を停止出来なくなってきたらボールタップの交換が必要になります。

このボールタップという給水装置はウォーターハンマー(水撃作用)という現象が起きやすいので、上記の写真にもある複式と言う方式のボールタップや、親子2球式のボールタップを使用したりして抑制したりする他、給水時に水面が揺れてボールタップの浮きが上下に揺れて弁を開けたり閉めたりする振動がおこる場合がある時には、波消し用の囲いや、ボールタップの浮きに重り付きのもの(球の中に砂が入っている)を使用してウォーターハンマーなどを抑制しているものもあります。

ウォーターハンマーについて詳しくは下記の記事を参照してください

 

FMバルブ方式(定水位弁)

このFMバルブ(FMは「Fixed Moving」の略)は上記のボールタップ方式では給水量が足らない時などや、ウォーターハンマー(水撃作用)の低減を目的に配管径が概ね25A以上の給水配管に使用される給水装置で、大容量のタンクや水槽に用いられています。

FMバルブ(定水位弁)方式の例 水槽外への設置例

FMバルブ(定水位弁)の例

FMバルブ(定水位弁)方式の例 水槽内への設置例

このFMバルブは本体(主弁)を水槽の外に設置することが出来るので、メンテナンスや交換が楽に行えるというメリットがあり、給水装置としてボールタップを設置する場合に比べてメンテナンスや交換する場合に水槽内へアクセスしなくてはならないというデメリットが無くなります。

このFMバルブの基本的な作動原理(構造)は減圧開方式の一斉開放弁に似ていて、副弁が開いて主弁部分にかかる圧力が減圧すると主弁が開き給水を開始して、副弁が閉鎖して主弁部分に圧力がかかり主弁が閉じると給水が停止するのですが、言葉では伝えずらいので下記の図で解説します(図の方式は説明する為に簡潔にしており、実際の方式とは異なる場合があります)。

FMバルブの動作の例

  • (1)では、副弁が閉まっている状態なので、主弁の上部空間の水に圧力がかかり主弁を押さえている状態になります。
  • (2)では、副弁が開いて主弁上部空間の水が排出され圧力がなくなり主弁を押さえている力が無くなった状態です。
  • (3)では、主弁上部空間から副弁への給水をオリフィスや小口径配管などを用いて流量を絞っているので、副弁が閉まったとしてもすぐには主弁が閉鎖しない状態で、主弁は下側からの圧力で持ち上げられて開きます。
  • (4)では、持ち上げられた主弁部分を通って水槽などへ給水をしている状態です。

FMバルブは仮に副弁が急激に閉まってもオリフィス等で水をゆっくり送り主弁にはゆっくりと圧力がかかり主弁は徐々に閉鎖しますので、副弁を閉鎖してから主弁が閉鎖する(給水が止まる)のに少し時間がかかりますが、これはウォーターハンマーを防止するための構造になっている為で異常ではありません。

この副弁にはボールタップや電極棒を用いた方式(水位の変化を電極で監視し、電磁弁や電動弁を制御する方式。)を使用しますが、電極棒を用いた制御については後述します。

 

電動弁方式

給水装置の弁の開閉をモーターなどで直接行う方式で、簡潔に言うと電気的信号を受信して弁を直接開閉する方式になり、その電気的信号を電極棒や制御盤などから検知・受信して弁を操作するシステムになりますので、電極棒の検知や電動弁の開閉の信号を送受信するのに専用の受信盤(制御盤)が必要になります。

電動弁方式の例

この方式はボールタップ方式やFMバルブ方式に比べて制御盤などを設置する必要がある為高額になりますが、水位監視用電極棒と一緒に満水警報や減水警報を送出することができますので、水位監視警報を取りたい場合にはこちらの方式の方が良い場合もあります。

作動プロセスとしては電動弁開水位(給水開始水位)まで水位が下がったら電極棒が検知し受信盤から信号を受けて電動弁上部にあるモーターが回転して弁を開け、電動弁閉水位(給水停止水位)まで水位が上昇したら電極棒がそれを検知し電動弁を閉め給水を停止しますので電極棒方式の制御については後述します。

電動弁はモーターの回転力で弁を開閉する仕組みの為、弁体は回転力を伝えるのにちょうど良い玉の形状をしているボールバルブを用いて、ゆっくりと弁を開け閉めするので、ウォーターハンマーの起きにくい給水装置と言えます。

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電極棒による水位検知

電極保持器の例

電極保持器(3本式)の配置例

電極保持器(5本式)の配置例

この方式は呼水槽や消火水槽などで減水や満水の警報を出したり、上記の電動弁の開閉信号の送出の為の水位検知によく用いられる方式で、一般的に警報を出すだけの場合(又は電動弁等の開閉信号だけ制御する場合)は電極棒を3本使用し、警報並びに電動弁などの開閉信号を使用する場合には電極棒を5本使用しますので、消防用設備などで警報を出すだけの場合であれば、電極棒を3本使用する方式になります。

そして電極棒は一番短い棒がE1で、短い棒から順番にE1、E2、E3、E4、E5となり一番長い棒がE5(電極棒が3本の場合はE3)で、この一番長い棒(E3又はE5)を共通線として使用し、各電極棒との導通を検知して減水や満水の警報や給水開始や停止の信号をフロートレスリレーなどを用いた制御盤を経由して送出します。

 

電極棒3本における作動原理

電極棒(3本方式)と水位の関係図

それでは電極棒3本を用いて警報を送出する場合の仕組みを上図を参考に説明していきます。(メーカー等により異なる場合があります。)

  • (1)では水位がE1とE2の間にあり平常状態(警報が出ていない状態)で、E2とE3が導通しているので減水警報は送出されません。
  • (2)では水位がE2の電極棒よりも減少してE2とE3の導通がない状態ですので、制御盤が導通がないことを検知して減水警報を送出します。
  • (3)では水位が上昇しE1の電極棒に触れてE1とE3が導通していますので、満水警報を送出します。

以上のことから、試験等で警報を送出したい場合は、電極保持器において減水警報を送出するならE2の端子を外せば減水警報が送出され、満水警報を送出するならE1とE3とショート(短絡)すれば良いということになります。

 

電極棒5本における作動原理

電極棒(5本方式)と水位の関係図

それでは電極棒5本を用いて警報送出及び給水制御を行う場合の仕組みを上図を参考に説明していきます。(メーカー等により異なる場合があります。)

  • (1)では水位がE2とE3の間にあり、警報や給水動作もない平常状態(定水位状態)になります。
  • (2)では水位がE4よりも下がって、E4とE5に導通がなくなっているので減水警報を送出します。
  • (3)では水位がE1の電極棒の触れて、E1とE5が導通しているので満水警報を送出します。
  • (4)では水位がE3の電極棒より下がって、E3とE5に導通がなくなっているので電動弁等の開信号送出を行い給水を開始します。
  • (5)では水位がE2の電極棒に触れて、E2とE5が導通しているので電動弁等の閉信号送出を行い給水を停止します。

これらのことから、水位がE3電極棒より下がると給水を開始して、水位が上がりE2電極棒まで来ると給水が停止する方式になりますので、水位がE3電極棒より下がらないと給水しませんし、E2電極棒まで水位が上がらないと給水が止まりません。

そして万が一給水が開始しない場合は減水警報を、給水が停止しない場合に満水警報を送出する方式になります。

 

まとめ

最後までご覧頂きありがとうございます。

一般的には呼水槽みたいな水量をあまり必要としない小さい水槽はボールタップを良く用いるので給水装置=ボールタップみたいなところがありますが、最近はFMバルブを使用する水槽を見ることが多くて、消火水槽や中間水槽でもFMバルブを用いる水槽が増えてきています。

給水装置いろいろというタイトルでしたが、電極棒方式における制御方式などのお話も盛り上がってしまいましたので、電極棒も給水装置の付属装置と考えれば良いのかなと思います。

ちなみにFMバルブは副弁にボールタップを使用することが多いので、良く確認しないと給水装置=ボールタップだろうになってしまいがちですが、ボールタップを下げて給水量が少ない場合(チョロチョロと出てくる)はオリフィスで絞られている水かもしれないのでFMバルブの可能性を考えて配管を追っかけてみましょう。

最近は電動弁を電極を使って給水制御している消火水槽も良く見受けられますので、当メディアで知識を蓄えて頂ければ幸いです。