消火水槽に使用する水について

皆さんこんにちわ。

先日筆者が訪れた某旅館で、消火設備の消火水槽(水源)に温泉(しかも廃湯)を使っていました。

通常は消火水槽の水は上水(水道水)を使うことになっていますが上水以外の水(上記温泉や井戸水、工業用水など)を使用するにあたってのリスクなどをお話していこうと思います。

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技術基準の内容について

屋内消火栓等の設置及び維持に関する技術基準というものが各市町村単位で存在していて、大元の消防法や消防法施行規則などで記載のない部分についての規定があります。

この技術基準に今回の消火水槽に何の水を給水するかという規定があり、おおよそどこの市町村でも「水源の水質は、原則として原水を上水道水(都市水道等)とし、消火設備の機器、配管、バルブ等に影響を与えないものであること」「水温はおおむね40℃以下であること」となっています。

なぜ上水道水を使うのを原則としているのかというと、配管等や付属機器に悪影響(腐食等の誘発防止や故障防止)を与えないようにこの規定になっています。

一応原則上水道水を使用になっていますが、既存の防火対象物によっては工業用水や雑用水を水源にしている所もありますので、なぜこれら上水道水以外を給水したがるのかを考察していこうと思います。

上水道水以外を使う理由を考察

では、なぜ上水道水以外の原水を使いたがるのかを筆者の超個人的見解でお話いたします。

  1. まず考えられるのは、消防用設備(屋内消火栓や消防用水など)はお金はかかるけど生産性が何もない設備で、できるだけお金はかけたくないから水も上水道水ではない水を使うという説
  2. 次に、たまたま防火対象物内で工業用水等(井戸水や温泉など)を使っているのでその水を使いたいという説
  3. 最後に、ポンプ室などが屋外にあって、上水道水の配管をそこまで施工するのが大変(又は不可能)なのですぐ近くにある井戸水などを使用する説

色々な説があるかと思いますが筆者は①の説が有力ではないかと思っています。

ですが上水道水以外を原水にするのはデメリットしかないとも思っていますのでそれを解説していきます。

上水道水以外を使うデメリットについて

では筆者がデメリットしかないというのを解説していきます。

①消火水槽の水は普段使いません

よく考えてみましょう。普段屋内消火栓などを頻繁に使って放水などしていますか?していませんよね?

そうなんです、消火栓とかは消防点検などでしか放水等行わないと思いますので、消火水槽の水ってほぼ一年中水量の入れ替わりがありません。(ポンプ性能試験時はほとんどの場合、水が水槽に戻るので基本的に減る量は微々たるもの)

仮に消防点検で放水試験を行ったとしても、屋内消火栓ならおおよそ200ℓ/分であり、ゆっくり放水したとしても1000ℓくらいで、この量は一般家庭で使用する水の量の2~3日分くらいですので、年間で消防設備等が使用する水ってそんなに多くありません。(スプリンクラー設備で末端試験を10か所行ったとしても、1か所でだいたい80~160ℓ/分✕10か所→800~1600ℓ)

②原水の成分によっては配管が腐食する

皆さんもご存じのステンレス配管ですが、SGP等の異種金属と接続すると電蝕を起こすので施工に気を遣う配管ですが耐食性に非常に優れている配管ですよね。

ですがとある文献でステンレス配管(SUS304)でも水の成分(特に塩素イオン)によっては配管の耐食性を劣化させる為、配管の腐食は避けられないとするものがあります。

この塩素イオンは地域差はありますが温泉水や井戸水に豊富に含有していたりしているものだそうですので、これらの水を使用する場合はろ過するなどの措置をしておく必要があります。

他の要因としては主に「PH」「アルカリ度」「全硬度」「残留塩素」「溶存酸素」などがあります。

③工業用水や井戸水は腐ります。

上記①のように消火水槽内の水はほぼほぼ入れ替わりがありませんので、きれいな上水道水を入れておかないと水槽の水が腐ったり(悪臭や浮遊物や沈殿物が発生)するほか配管等(フート弁とか)が腐食するリスクが高くなります。

下記の写真は井戸水を原水としている消火水槽で、水の入れ替わりがほぼない状態のために浮遊物と沈殿物が多くなっていて俗に言う「腐ってる」状態になっているものです。

沈殿物が堆積していますので、この状態でポンプを運転すれば沈殿物も一緒に吸われてしまい、圧力計の中に沈殿物が入って指針がゼロに戻らないといった症状や、最悪スプリンクラーヘッド内部などに堆積して火災時にヘッドから散水できないといった事態も予想されます。

消火水槽内の例

この状態になってしまうと水槽の水をいったん全て抜いて沈殿物を除去したあとに水槽内を高圧洗浄機等で清掃してからきれいな水を入れなければなりませんので、清掃にかかる費用はかなりの負担になってしまいます。(消火水槽内はピット作業で酸素欠乏危険作業になるので酸素欠乏危険作業主任者を選任しての作業になりますから注意しましょう)

まとめ

最後までご覧いただきありがとうございます。

今回は消火水槽等の原水に上水道水以外を用いる場合におけるリスクについてお話させていただきました。

筆者の個人的見解(上水道水を使用したとして)として

  • 消火水槽を新設(水量20トン)したときには20000ℓの水道料金が発生します。
  • 一回水槽を規定水量にすれば通常は年1回程度の放水試験しか行わないので、水道料は多くても年間2000ℓ(2㎥)くらい
  • 水道料金よりも設備の保護のほうが重要である。
  • 水道代を節約してもフート弁を1回交換しただけで損する

になります。

筆者が以前点検にお邪魔した某生産工場では原水に工業用水を使用していて、水槽内は悪臭漂うものでしたが、その工場は建設されてまだ2年の新しい工場です。

しかもその時の点検でフート弁より落水が確認(フート弁ネジ部が腐食)されてしまいましたので、上記の様に水道代を節約しようとしたかもしれないけど最終的に損することになってしまいました。

ですが最近では防火管理や設備の維持管理にとても真剣な防火管理者が意外と多くて、多少金額が高くてもしっかりとやってくれる業者(設備の点検や維持管理)を求めている防火対象物も少なくありませんので、上記のような事をする方も少なくはなりました。

防火対象物へ点検等で訪れた際に消火水槽の原水が上水道水以外であった場合には関係者に上記のリスクを伝えて原水の切替と水槽の清掃の提案ができると良いかと思います。