避難通路の概要と関係法令について

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みなさんこんにちは。

当メディアのお問い合わせフォームから質問を頂いたりしていますが、その中でよくある内容の中にこの避難通路(経路)についての質問があり、「避難通路の大きさ(幅)を教えて下さい」とか、「当該法令はどこですか?」などの質問がありましたので皆さんにもご紹介しようと思います。

 

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避難通路とは

まさに字のごとく有事の際、避難するために使用する通路(廊下など)のことで、建築基準法及び消防法にて設置が義務付けられています。

ちなみに避難経路は避難場所へ安全に行く為の通り道(屋内と屋外)を予め決めておいた道順になります。

では建築基準法における避難通路と消防法における避難通路はどのようにちがうのでしょうか?

 

建築基準法における避難通路

この避難通路は建築基準法の施行令第119条の避難規定に定められた廊下の幅(以下、避難経路の有効幅)を指しています。この避難経路の有効幅はある一定の建築物に適用されることになっており、一般的な戸建て住宅などはこの規定は適用されません。

この避難通路の定義は結構あいまいですが、単純に居室から階段(出口)につながる経路は全て廊下とイメージしてもらえばわかりやすいと思います。

ではある一定の建築物とはどのような建築物をいうのでしょうか?

  1. 特殊建築物である
  2. 階数が3以上である
  3. 採光無窓居室が存在している階
  4. 延べ面積が1,000㎡以上

これらの要件に該当する場合には上記の避難経路の有効幅を満たさなければなりません。

あと、有効幅の大きさについても規定があり、これも建築基準法施行令第119条の「廊下の用途」と「廊下の配置」の要件により変わってきます。

  • 用途が小学校・中学校・義務教育学校・高等学校又は中等教育学校における児童用又は生徒用のもので、配置が両側に居室のある廊下→2.3m以上
  • 用途が小学校・中学校・義務教育学校・高等学校又は中等教育学校における児童用又は生徒用のもので、配置が上記以外の廊下→1.8m以上
  • 用途が病院における患者用のもの、共同住宅の住戸もしくは住室の床面積の合計が100㎡を超える階における共用のもの、または3室以下の専用のものを除き、居室の床面積の合計が200㎡(地階にあっては100㎡)を超える階で、配置が両側に居室がある廊下→1.6m以上
  • 用途が病院における患者用のもの、共同住宅の住戸もしくは住室の床面積の合計が100㎡を超える階における共用のもの、または3室以下の専用のものを除き、居室の床面積の合計が200㎡(地階にあっては100㎡)を超える階で、配置が上記以外の廊下→1.2m以上

以上のようになります。詳しくは建築基準法の関係法令を確認してください。

 

消防法における避難通路

では消防法ではどのように規定しているのでしょうか?

消防法の第8条の2の4の「避難上必要な施設等の管理」という項目に

学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、当該防火対象物の廊下、階段、避難口その他の避難上必要な施設について避難の支障になる物件が放置され、又はみだりに存置されないように管理し、かつ、防火戸についてその閉鎖の支障になる物件が放置され、又はみだりに存置されないように管理しなければならない。

と記載されています。

ここで記されているのは要するに、防火管理者などは廊下や階段など避難に際し使用する部分について物品の放置・存置による避難障害がないか、防火設備(防火戸や防火シャッターのくぐり戸など)に閉鎖障害などがないかを日々確認(管理)しなさいと記載されています。

あれっ?と思ったあなたはするどいです。この法第8条の2の4には詳細な規定(通路幅など)がありません。

ではこの詳細な規定はどこにあるのかというと、各市町村の火災予防条例に記載があります。

ということは、各市町村でこの避難通路についての規定が変わるということですので注意が必要です。

 

各市町村における避難通路規定の例

では各市町村でごのように避難通路の規定が変わるのか見ていきましょう。

 

大阪市の火災予防条例

避難通路の規定は防火対象物の用途により変わってきますが、大阪市の火災予防条例を例にまずは劇場等(政令別表第一の1項イ)の規定を見ていきましょう。

 

(5) 客席の避難通路は、次によること

ア いす席を設ける客席の部分には、横に並んだいす席の基準席数(8 席にいす席の間隔が 35 センチメートルを超える1センチメートルごとに1席を加えた席数(20席を超える場合にあつては、20席とする。)をいう。以下この条において同じ。)以下ごとに、その両側に縦通路を保有すること。ただし、基準席数に2 分の1を乗じて得た席数(1席未満の端数がある場合は、その端数は切り捨てる。)以下のときは、これを片側のみとすることができる。

イ アの縦通路の幅は、当該通路のうち避難の際に通過すると想定される人数が最大となる地点での当該通過人数に0.6 センチメートルを乗じて得た幅員(以下算定幅員という。)以上とすること。ただし、当該通路の幅は、80センチメートル(片側のみがいす席に接する縦通路にあつては、60センチメートル)未満としてはならない。

ウ いす席を設ける客席の部分には、縦に並んだいす席20席以下ごと及び当該客席の部分の最前部に算定幅員以上の幅員を有する横通路を保有すること。ただし、当該通路の幅は、1 メートル未満としてはならない。

エ ます席を設ける客席の部分には、横に並んだます席2ます以下ごとに幅40センチメートル以上の縦通路を保有すること

オ アからエまでの通路は、すべての避難口(出入口を含む。)に直通させること

と規定されています。

消防法にはなかった詳細な規定がこの火災予防条例に記されてることがわかりました。

この劇場等の他にも、キャバレー等・ディスコ等・カラオケボックス等・百貨店等というくくりでそれぞれ規定がされています。

 

札幌市の火災予防条例

次に札幌市の火災予防条例の劇場等の避難通路の規定を見ていきましょう

(5) 客席の避難通路は、次によること。
ア いす席を設ける客席の部分には、横に並んだいす席の基準席数(8席にいす席の間隔が35センチメートルを超える1センチメートルごとに1席を加えた席数(20席を超える場合にあつては、20席とする。)をいう。以下この条において同じ。)以下ごとにその両側に縦通路を保有すること。ただし、基準席数に2分の1を乗じて得た席数(1席未満の端数がある場合は、その端数は切り捨てる。)以下ごとに縦通路を保有する場合にあつては、片側のみとすることができる。
イ アの縦通路の幅は、当該通路のうち避難の際に通過すると想定される人数が最大となる地点での当該通過人数に0.6センチメートルを乗じて得た幅員(以下「算定幅員」という。)以上とすること。ただし、当該通路の幅は、80センチメートル(片側のみがいす席に接する縦通路にあつては、60センチメートル)未満としてはならない。
ウ いす席を設ける客席の部分には、縦に並んだいす席20席以下ごと及び最下階にある客席の部分の最前部に算定幅員以上の幅員を有する横通路を保有すること。ただし、当該通路の幅は、1メートル未満としてはならない。
エ ます席を設ける客席の部分には、横に並んだます席2ます以下ごとに幅40センチメートル以上の縦通路又は横通路のいずれかを保有すること。
オ 大入場を設ける客席の部分には、座席の幅3メートル以下ごとに幅40センチメートル以上の縦通路を保有すること。
カ アからオまでの通路は、いずれも客席の避難口(出入口を含む。以下同じ。)に直通させること。

多少の差異はありますが、大阪市の火災予防条例に加えて オ の条文が加わっているのがわかります。

このように各市町村により避難通路の規定に違いがあるので注意しましょう。

 

まとめ

最後までご覧いただきありがとうございます。

今回は避難通路についてお話させていただきました。

避難通路の幅などの規定は建築基準法や消防法、各市町村の火災予防条例で規定されていることがわかりました。

建築基準法では特殊建築物などでこの避難通路の規定があり、消防法では避難通路などの避難上必要な施設等の管理についての記載があり、避難通路の詳細は各市町村の火災予防条例に各用途における避難通路の幅等の規定の記載がありました。

各市町村の火災予防条例をいろいろ見てみましたが、各市町村でそんなに大きな違いはなく、基本的にはほぼ同じ内容でした。

ですが上記の札幌市のように条文が一つ多いなどの場合がありますので、避難通路等を確認する場合にはめんどくさがらずに各市町村の火災予防条例に目を通すことをオススメします。

各市町村の火災予防条例について詳しく記載した記事がありますのでどうぞご覧ください

 

 

 

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建築基準法第2条第2項に記載のある「学校(専修学校及び各種学校を含む。以下同様とする。)、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、市場、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、旅館、共同住宅、寄宿舎、下宿、工場、倉庫、自動車車庫、危険物の貯蔵場、と畜場、火葬場、汚物処理場その他これらに類する用途に供する建築物」のことをいう。