誘導灯及び誘導標識の設置基準 その2

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皆さんこんにちは。

今回の記事は誘導灯の設置基準の後半を解説していて、内容としては

  • 階段や傾斜路に設ける通路誘導灯の設け方
  • 誘導標識の設置基準
  • 長時間定格型誘導灯の設置基準
  • 図解による誘導灯設置例
  • 避難口誘導灯、通路誘導灯を設置する場合の手順

上記の内容になります。

 

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誘導灯及び誘導標識の設置基準

それでは前回に引き続き、誘導灯や誘導標識も設置基準について解説していきます。

通路誘導灯(階段・傾斜路に設けるもの)の設置方法

階段又は傾斜路に設ける通路誘導灯の場合は、路面又は踊場の中心線の照度が1ルクス以上となるように設け、また、地震動等に耐えられるよう壁、床等に堅固に設ける必要がありますが、政令別表第1(1)項から(16 の3)項までに掲げる防火対象物の階段又は傾斜路のうち、非常用の照明装置により避難上必要な照度が確保されるとともに、避難の方向の確認(当該階の表示等)ができる場合には,通路誘導灯の設置を要しません。

※建築基準法の規定により非常用の照明器具などで階段の床部分の照度が1ルクス(蛍光灯の場合は2ルクス)以上ある場合は階段通路誘導灯の設置を要しない。(非常用の照明器具で代用できる。)
現在流通している階段等に設ける非常用照明器具は、この階段通路誘導灯を兼用した非常用照明器具がほとんどであるので、この兼用型の非常用照明器具を設置すれば新たに階段通路誘導灯を設けなくても良い。

 

誘導標識の設置基準

これまで誘導灯の設置基準等について解説してきましたが、今度は誘導標識の設置基準を解説していきます。

  1. 避難口である旨、又は避難の方向を明示した緑色の標識とし、多数の者の目に触れやすい箇所に、避難上有効なものとなるように設置する。
  2. 避難口又は階段に設けるものを除き、各階ごとに、その廊下及び通路の各部分から1の標識までの歩行距離が7.5m以下となる箇所及び曲がり角に設置する。
  3. 誘導灯の有効範囲内の部分には、誘導標識を設置しないことができる。
  4. 多数の者の目に触れやすく、かつ、採光が識別上十分である箇所に設置する。(採光が不十分な場合は一般照明などにより補完する必要がある)
  5. 設置に関して、容易にはがれないように接着剤や両面テープなどを用いて固定すること、及び設置場所(床面や壁面等)に応じて耐水性や耐摩耗性のあるものを使用する必要がある。

誘導標識の設置例

 

誘導灯に代えて設置できる蓄光式誘導標識

誘導標識の中には誘導灯の代わりに設置できるものがありますが、その要件を確認していきましょう。

  1. 高輝度蓄光式誘導標識を使用する。
  2. 避難口の上部又はその直近の箇所に設ける。
  3. 周囲には蓄光式誘導標識とまぎらわしい、または蓄光式誘導標識を遮る広告物、掲示板等を設けてはいけない。
  4. 性能を保持するために必要な照度が採光又は一般照明等により確保されている箇所に設ける。
  5. 設置に関して、容易にはがれないように接着剤や両面テープなどを用いて固定すること、及び設置場所(床面や壁面等)に応じて耐水性や耐摩耗性のあるものを使用する必要がある。

 

通路誘導灯を補完するために設置できる蓄光式誘導標識

こちらは、通路誘導灯を補完(不十分な部分を補って完全なものにすること)するために誘導標識を設置する場合の要件になります。

  1. 高輝度蓄光式誘導標識を使用する。
  2. 床面又はその直近の箇所(おおむね床面から1m以内)に設ける。
  3. 廊下及び通路の各部分から1の誘導標識までの歩行距離が7.5m以下となる箇所及び曲がり角に設ける。
  4. 周囲には蓄光式誘導標識とまぎらわしいまたは蓄光式誘導標識を遮る広告物、掲示板等を設けてはいけない。
  5. 性能を保持するために必要な照度が採光又は一般照明等により確保されている箇所に設ける。
  6. 設置に関して、容易にはがれないように接着剤や両面テープなどを用いて固定すること、及び設置場所(床面や壁面等)に応じて耐水性や耐摩耗性のあるものを使用する必要がある。

通路誘導灯を補完する誘導標識の設置例

光を発する帯状の標示を設けること、その他の方法によりこれと同等以上の避難安全性が確保されている場合にあっては、上記1.~5.によらないことができる(所轄消防により取扱いが異なる場合があります)。

※高輝度蓄光式誘導標識について詳しくは下記の記事を参照してください。

 

長時間定格型(60分作動型)誘導灯の設置について

通常設置される誘導灯の非常電源(蓄電池)の容量は20分間作動できる容量ですが、下記のいずれかに該当する防火対象物では、60分定格(60分間作動できる容量のもの)の誘導灯を設置しなくてはなりません。(20分間を超える時間における作動に係わる容量には自家発電設備によるものを含む)

  1. 述べ面積50000㎡以上のもの
  2. 地下街で述べ面積1000㎡以上のもの
  3. 地階を除く階数が15以上であり、かつ、述べ面積30000㎡以上のもの
  4. 地下駅舎(乗車場、階段、通路など)

上記の要件に該当する場合は60分定格の誘導灯の設置が必要になり、60分定格の誘導灯の設置場所として、

  1. 屋内から直接地上へ通ずる出入口(附室が設けられている場合にあっては、当該附室の出入口。)
  2. 直通階段の出入口(附室が設けられている場合にあっては、当該附室の出入口。)
  3. 直通階段(※階段通路誘導灯を非常用の照明装置で代替する場合も予備電源が60分間作動できる容量以上が必要。
  4. 避難階の廊下及び通路(ⅰの避難口に通ずるものに限る。)
  5. 乗降場(地下にあるものに限る。)
  6. 上記ⅴに通ずる階段、傾斜路及び通路。
    なお、上記ⅳについては上記ⅰとⅲを接続する部分としてさしつかえないこと。

 

図解による誘導灯設置例

避難口誘導灯

避難口誘導灯は下記の(ア)~(エ)までに掲げる避難口の上部又はその直近の、避難上有効な位置に設置する。

避難口誘導灯の設置例

※「居室」とは、居住・執務・作業・集会・娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室のことを指し、事務室・役員室・応接室・会議室・休憩室・荷捌室などが該当するので、倉庫・階段室・更衣室・トイレ・洗面室・浴室・押入などは該当しない

 

通路誘導灯

通路誘導灯は廊下・通路及び居室等のうち、下図の(ア)~(ウ)に掲げる箇所に設置する。

通路誘導灯の設置例

また通路誘導灯間の配置は以下の距離によること。

通路誘導灯間の距離

 

避難口誘導灯、通路誘導灯を設計する場合の手順

それでは実際に誘導灯の設置を設計してみましょう。

避難階への誘導灯設置例

 

避難階以外の階への誘導灯設置例

上図を参照して、

  1. 直接地上へ通ずる出入口や直通階段、居室の出入口等に避難口誘導灯を設置する(図中①)
  2. 曲がり角に通路誘導灯を設置する(図中②)
  3. 主要な出入口等(規28の3-3-1、イとロ)に設置されている避難口誘導灯の有効範囲内の箇所に通路誘導灯を設置(図中③)
  4. 廊下又は通路の各部分について、図中①~③の誘導灯の有効範囲外となる部分がある場合、当該部分をその有効範囲内に包含できるように通路誘導灯を設ける(図中④)
  5. 以上の他、防火対象物又はその部分の位置、構造及び設備の状況、使用状況から判断して、避難上の有効性や建築構造(防火戸や防火シャッターの有無等)、日常の利用形態などを加味して設置位置や使用機器を調整する。

まとめ

最後までご覧いただきありがとうございます。

かなり細かい内容ですが、今回の記事の誘導灯設置基準は点検でも役に立つと思っていて、間仕切り変更や改修工事などで部屋や通路の変更があった場合に、正規な位置・距離に誘導灯(誘導標識)が設置されているか確認ができます。

通常であれば改修工事後には消防署が検査に来て確認するのですが、まれに消防署に書類(模様替え等に係る資料提出や消防用設備等試験結果報告書など)を提出しないで工事を行う業者がいて、その場合消防署は改修工事が行われたことがわからないので検査等ができません。その後点検に入ったときに「あれっ?配置が違うなぁ」といった時に役に立つと思います。

まぁこのブログへ勉強に来ている方々には無資格工事や無届出を行う方はいないと思いますが、器具交換をしたら設置届を提出しましょう。

上記の設置基準や要件は火災予防条例や所轄消防により取扱いが異なる場合がありますので予めご了承ください。

 

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消防法施行規則第28条の3第3項

  • イ…屋内から直接地上へ通じている出入口(附室が設けられている場合にあっては、その附室の出入口)
  • ロ…直通階段の出入口(附室が設けられている場合にあっては、その附室の出入口)