消防用設備等の設置の単位

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皆さんこんにちは。

今回は消防用設備等を設置する場合の設置の単位についてお話させていただきます。

防火対象物に消防用設備等を設置する場合に、基準となるのは敷地なのか棟なのか、また棟と棟がくっついている場合の取扱いなどについてお話させて頂きます。

※各市町村の火災予防条例等により以下の内容について取扱い及び内容が若干変わる場合がありますので、予めご了承ください。

※各図はクリックすると拡大できますので、見づらい場合は拡大してください。

 

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消防用設備等の設置の単位

「棟」の例

 

消防用設備等の設置の単位は、基本的に下記のような特段の規定

がない限り、「棟」であり、「敷地]ではありません。

ちなみに「棟」とは、原則として独立した1つの建築物又は、独立した建築物が相互に接続されて一体となったものを言います。

 

また、建築物と建築物が渡り廊下や地下連絡路、洞道により接続されている場合にも原則として1つの棟とみなします。

ただし、下記の条件に適合する場合には別の棟として取り扱うこともできます。

 

渡り廊下で接続されている場合

この渡り廊下で接続されている場合は、渡り廊下の長さや幅員、使用目的によって規定がありますので解説していこうと思います。

 

渡り廊下が規定長さを越える場合

渡り廊下で接続する場合の廊下長さの例

 

 

 

渡り廊下で接続する場合の幅員の幅の例

 

建築物と建築物が地階以外の階において渡り廊下で接続されている場合で、接続されている建築物相互間の距離が、1階の場合は6mを超え、又は2階以上の階の場合は10mを超えるものについては次によること。

    1. 渡り廊下が、通行又は運搬の用途のみに使用され、かつ、可燃性物品等を置いていない状態、及びその他通行上の支障がない状態のものであること。
    2. 渡り廊下の有効幅員(廊下の幅)が、接続される一方又は双方の建築物の主要構造部が木造である場合は3m未満、これ以外の場合は6m未満であること。ただし、接続される双方の建築物の主要構造部が耐火構造で、渡り廊下が、不燃材料で造られた吹き抜け等の開放式である場合、この限りでない。

※渡り廊下の長さが、1階にあるものは6mを越える場合、2階以上にあるものは10mを越える場合、かつその渡り廊下の幅が木造建築物なら3m未満、木造建築物以外なら6m未満で、当該渡り廊下に可燃物などの存置がなく通行と運搬のみの使用なら別棟の扱いにすることができる。

ただし、所轄消防(火災予防条例)によっては、建築物と渡り廊下の接続部分に防火戸の設置が必要だったり、渡り廊下の構造を準不燃材料で造らないといけないなどの制限がある場合もある。

 

渡り廊下が規定長さ以下の場合

建築物相互間の距離が規定距離に満たない場合(1階は6m以内、2階以上は10m以内)は、以下の要件を満たすと別棟扱いにすることができる。

(1)

a.渡り廊下が、通行又は運搬の用途のみに使用され、かつ、可燃性物品等を置いていない状態、及びその他通行上の支障がない状態のものであること。

b.渡り廊下の有効幅員(廊下の幅)が、接続される一方又は双方の建築物の主要構造部が木造である場合は3m未満、これ以外の場合は6m未満であること。ただし、接続される双方の建築物の主要構造部が耐火構造で、渡り廊下が不燃材料で造られた吹き抜け等の開放式である場合、この限りでない。

c.接続される建築物の外壁又は屋根については以下のいずれかによること(渡り廊下の接続部分から3m以内の距離にある部分に限る。)(下図参照)

    1. 耐火構造又は防火構造で造られていること。
    2. 耐火構造又は防火構造の塀(へい)が設けられ保護されていること。
    3. スプリンクラー設備又はドレンチャー設備により延焼防止措置が有効になっていること。

 

(2)

上記c.の外壁及び屋根には開口部を有しないこと(接続部分からそれぞれ3m以内の距離にある部分に限る)。ただし開口部の面積が4㎡以内(建築物相互の接続部分の開口部面積の合計)で、かつ、特定防火設備又は防火設備が設けられている場合はこの限りではない。(下図参照)

 

(3)

a.渡り廊下の構造が吹き抜けなどの開放式の渡り廊下の場合。

b.渡り廊下の構造が吹き抜けなどの開放式以外の場合は以下の要件を満たすこと。(下図参照)

    1. 渡り廊下の構造耐力上主要な部分が①鉄骨造、②鉄筋コンクリート造、③鉄骨鉄筋コンクリート造のいずれかで、かつそれ以外の部分が①不燃材料、②準不燃材料で造られていること。
    2. 渡り廊下の接続部の出入口の大きさが4㎡以内で、さらに出入口に随時開くことができる防火設備を設け、随時開くことができる自動閉鎖装置付き(ドアチェックなど)のもの、又は煙感知器の作動と連動して閉鎖するものであること。
    3. 渡り廊下に下記のいずれかの排煙設備等を設けること。①自然排煙開口部、②機械排煙設備、③スプリンクラー設備又はドレンチャー設備。

 

※渡り廊下の長さが1階にあるものは6m以下の場合、2階以上にあるものは10m以下の場合で、かつその渡り廊下の幅が木造建築物なら3m未満、木造建築物以外なら6m未満で、可燃物などの存置がなく通行と運搬のみの使用の場合において、渡り廊下が接続される建築物の壁や屋根が耐火構造である、又は耐火構造の塀が設けられている、又はスプリンクラー設備やドレンチャー設備により延焼防止措置が取られていて、建築物の壁や屋根に開口部がない場合(特定防火設備等が設けてある開口部ならOk)に別棟扱いにすることができる。

また、煙感知器と連動する防火戸やスプリンクラー設備などの電気を使用する設備は非常電源を付帯していないといけないので注意する。

※特定防火設備や防火設備については下記の記事を参照してください。

特定防火設備と防火設備について
この記事では特定防火設備と防火設備に違いについてお話しています。防火設備の概要(どのようなものを指すのか?)、特定防火設備の種類と概要(防火シャッターやドレンチャーなど)、防火設備の種類と概要(鉄製網入りガラスや袖壁など)などについて詳しく解説しています。

 

※スプリンクラー設備やドレンチャー設備については下記の記事を参照してください。

スプリンクラー設備とは?
この記事ではスプリンクラー設備の概要や構成部品、スプリンクラー設備の種類(湿式・乾式・予作動式)(閉鎖ヘッド、開放ヘッド、放水ヘッド)、ドレンチャー設備について詳しく解説しています。

 

地下連絡路で接続されている場合

上記渡り廊下以外にも、地下連絡路や洞道などで接続されている建築物も1つの棟とみなされますので、地下連絡路で接続されている場合の規定について解説させていただきます。

ちなみに天井部分が直接外気に常時開放されている部分(ドライエリアと呼ばれるもの)については除外しています。(下図参照)

 

    1. 接続される建築物またはその部分(地下連絡路で接続されている階の部分のこと)の主要構造部が耐火構造である。
    2. 地下連絡路が通行・運搬の用途のみに使用され、かつ可燃物の存置やその他通行の妨げとなる状態ではないこと。
    3. 地下連絡路は、耐火構造として、かつ壁・天井・床の仕上げ材料は不燃材料を使用する。
    4. 地下連絡路の長さは6m以上で、幅員は6m未満であること。ただし双方の建築物の接続部分に閉鎖型スプリンクラーヘッド方式のスプリンクラー設備、又はドレンチャー設備が延焼防止上有効に設置されている場合を除く。(地下連絡路の長さとは建築物双方の接続部分に設けられた防火戸相互間の距離である)
    5. 地下連絡路は、地下連絡路両端の出入口以外の部分において開口部のない耐火構造の壁・床で区画されている。
    6. 地下連絡路の両端の出入口の開口部の面積は4㎡以下である。
    7. これらの出入口には特定防火設備で随時開くことができる自動閉鎖装置付き(ドアチェックなど)のもの、又は随時閉鎖することができ、かつ煙感知器の作動と連動して閉鎖する特定防火設備が設けられている。
    8. 地下連絡路には、内部の煙を有効にかつ安全に外部へ排出できる機械排煙設備(非常電源付帯のもの)を設ける。ただし、地下連絡路に閉鎖型スプリンクラーヘッド方式のスプリンクラー設備が設けられている場合には機械排煙設備は不要。

 

洞道で接続されている場合

洞道の例

洞道で接続されている場合には、以下の要件を満たすと別棟として扱うことができます。

    1. 洞道が接続されている部分の開口部(点検口や排気口など)以外の部分は耐火構造の壁・床で区画されている。
    2. 洞道は耐火構造または防火構造となっており、その内側の仕上げ材料と下地材は不燃材料を使用している。
    3. 洞道内の風洞(ダクト)・配管・配線などが建築物の耐火構造の壁・床を貫通する場合はこれらの貫通部分において、風洞・配管・配線等と、洞道や建築物の耐火構造の壁・床との隙間を不燃材料で隙間を埋め戻すこと。ただし洞道の長さが20mを超える場合には埋め戻さなくても良い。
    4. 洞道が接続されている部分の開口部(建築物内にある開口部に限る)には防火戸(開口部の面積が2㎡以上のものは自動閉鎖装置付きに限る)を設ける。
    5. 洞道が接続されている部分の開口部で換気のためのものについて、常時開放式の換気口にあっては防火ダンパーを設ける。

 

まとめ

最後までご覧頂きありがとうございます。

今回は消防用設備等を設置するにあったての「棟」という基準のお話をさせていただきました。

以前に当ブログへのお問い合わせの中に「棟と棟をエキスパンジョイントで接続した場合の取り扱いについて」のお問い合わせがあり、筆者の回答として「基本的に棟と棟を接続したら別棟扱いには出来ない(例外あり)」というお話をさせていただいたことがありました。

今回の記事でこの例外の部分について解説できたのではないかと思います。

よくある事例として「建物を新たに増築して、それを渡り廊下で既設建築物と接続した場合」があると思います。

この場合も上記解説により

  • 開放式の渡り廊下なら別棟扱い(建築物が木造以外であるなどの規定あり)。
  • 開放式以外の場合には渡り廊下の長さ・幅が規定値をクリアーしている。
  • 渡り廊下に可燃物存置がなく、通行に支障がない状態である。

などの条件を満たしていれば別棟扱いにすることができます。

ただし、上記解説はあくまでも一般的な解釈であり、所轄市町村の火災予防条例では上記解説に当てはまらない部分もあるかと思いますので、所轄の火災予防条例などを良く確認していただけると間違いないかと思います。

 

 

 

 

 

 

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・消防法施行令第8条

通称「令8区画」のこと。詳しくは下記の記事を参照してください。

令8区画とは?
この記事では消防法施行令第8条(通称、令8区画)についてお話しています。令8区画の概要(どのようなものを指すのか?)、令8区画を形成するのに必要な構造や貫通部(貫通して良いものと貫通部の処理方法など)について詳しく解説しています。

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・消防法施行令第9条

複合用途防火対象物(政令別表第一の16項イ及びロ)において、管理権原者や階に関係なく同一の用途に供される部分を1つの防火対象物とみなして設置基準などを適用するという部分。

令第9条ではそれぞれの用途を1つの防火対象物(設置の基準)とみなすので、棟を基準としません。

詳しくは下記の記事を参照してください。

令第9条の例外とは
この記事では消防法施行令第9条(複合用途防火対象物に消防用設備等を設置する場合、建物を1つの防火対象物とみなすのか又はそれぞれの用途ごとに防火対象物とみなすのか?)及び令第9条の2(防火対象物の地階が地下街と一体になっている場合の運用)について詳しく解説しています。

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・消防法施行令第9条の2

特定防火対象物(政令別表第一の1〜4項、5項イ、6項、9項イ、16項イ)の地階と地下道(政令別表第一16の2項)とが一体となっている場合において、当該地階のスプリンクラー設備、自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備、非常警報設備の基準については、この地階を地下街の一部とみなして運用するという部分。

詳しくは下記の記事を参照してください。

令第9条の例外とは
この記事では消防法施行令第9条(複合用途防火対象物に消防用設備等を設置する場合、建物を1つの防火対象物とみなすのか又はそれぞれの用途ごとに防火対象物とみなすのか?)及び令第9条の2(防火対象物の地階が地下街と一体になっている場合の運用)について詳しく解説しています。

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・洞道(とうどう)とは

換気や冷暖房設備の風道(ダクト)、給排水管、ガス管、電線管などの配管類やその他これらに類するものを敷設するためのトンネル(地下道)で、これらの保守点検等の為に人間が立ち入れるくらいの大きさのものをいう。

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・消防法施行令第19条第2項

屋外消火栓の設置基準の部分で、建築物と建築物の相互距離によってはそれらを1つの建築物とみなすという部分。

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・消防法施行令第27条第2項

消防用水の設置基準に係わる部分で、建築物相互の距離や床面積などによってはそれらを1つの建築物とみなすという部分。