特定防火設備と防火設備について

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皆さんこんにちは。

2016年6月より建築基準法が改正となり新たに「防火設備検査」が始まりました。

この防火設備には「特定防火設備」と「防火設備」の2種類がありますが、何がどう違うのかよくわからないので解説していきたいと思います。

 

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防火設備の概要

防火設備とは、建築基準法に規定されている建物内において延焼を防止する為(又は延焼リスクの高い部分)に設けられる防火戸ぼうかどのことで、

  • 扉の形状をした防火戸
  • シャッター形式の防火シャッター
  • 布みたいなカーテンを用いる耐火スクリーン
  • 霧のカーテンを形成するドレンチャー設備(開放型スプリンクラーの一種)

などがあり、これらも防火戸の一種とされています。

また、建物外部の開口部から隣接建築物からの延焼を防止するための袖壁そでかべや塀、鉄製網入りガラスを用いたドアなども防火設備に該当し、最近では遮炎性能を持たせたスクリーン(燃えない布)で防火戸などの代替をするものもあります。

主として、炎を遮るためのものをいい、よく「1時間耐火」とか「20分耐火」と呼ばれる部分がここになり、1時間耐火(遮炎)は特定防火設備で、20分耐火(遮炎)は防火設備となります。

基本的に防火戸は防炎性能を規定していて防煙性能についての規定はありませんが、現実的には防火戸などを防煙区画にも併用したりするので、防火戸の中には防煙性能を持っているものも存在しています。

ドレンチャー設備について詳しくは下記の記事を参照してください。

 

特定防火設備の防火戸

特定防火設備は、火災の火炎を受けても1時間以上火炎が貫通しない構造のものと規定されています。(通称、1時間耐火、かつての甲種防火戸)よく言われる防火戸はこの特定防火設備の防火戸を指しており特定防火設備には以下の種類があります。

常時閉鎖型防火戸

人が戸を開いている時だけ開放され、それ以外は常閉型ドアチェック(開状態を維持しない構造のもの。)などにより戸が自動的に閉鎖するものになります。「常閉防火戸」ともいいます。

このタイプの防火戸は、煙感知器連動タイプなどに比べて非常に安価で設置出来るために、階段などの竪穴区画の出入口によく設置されていました。

ですが、常開出来ない(通行に際し毎回押し開けないといけない)などの理由により物品などで戸を開放状態で固定してしまい、常閉防火戸としての意味をなさないケースが多々ありました。

近年では煙感知器連動タイプを用いるか、あまり人の出入りがない部分にしか常閉防火戸を設置しなくなりました。

下記の写真は、一見普通のガラス戸に見える特定防火設備の例で、このような防火戸も見受けられます。

耐熱板ガラスを用いた特定防火設備の例

 

随時閉鎖型防火戸

随閉式防火戸の例

上記常閉防火戸とは異なり、常時防火戸を収納(開口部を開放状態)しておき、火災時に煙感知器などからの信号を受けて防火戸を収納部分から開放して開口部を閉鎖する方式になります。

常閉防火戸に比べて費用はかかりますが、物品などで閉鎖障害(開放状態で固定)となりにくいというメリットもあります。

開口部閉鎖に鉄製の扉がスイングして閉鎖する防火戸、天井からシャッターが降下してきて閉鎖する防火シャッター、またこの防火シャッターの代わりに防炎性能のあるスクリーン(耐火性能を持つ布)を用いるものもあり、この防火スクリーンはエレベーターの乗り口などによく使用されています。

煙感知器連動の防火シャッターとくぐり戸の例

防火スクリーンの例

 

防火設備の防火戸

こちらは上記の特定防火設備とは違い、火災の火炎を20分間以上遮るものになります。(20分耐火、かつての乙種防火戸。)この防火設備には鉄製の網入りガラスの入った金属製サッシや、袖壁などの主として建築物の外部からの火災の延焼を防ぐ為に開口部に設置されるものです。

もちろん20分以上火炎を遮れれば良いので、特定防火設備の防火戸やドレンチャーも防火設備として使用できます。

また特定防火設備では常閉型とか随閉型などの違いがありましたが、防火設備ではこのような種類はありません。

 

随時閉鎖型防火戸(感知器連動方式)の作動プロセス

上記で感知器などの信号を受けて防火戸が開口部を閉鎖する方式を記載しましたが、どのようなプロセスで作動&閉鎖用するのでしょうか?よくある方式で説明したいと思います。

下記では自動火災報知設備の器具設備も使用していますので、以前の記事も参考にしていただけるとより解りやすいと思います。

以前の記事については下記のリンクから御覧いただけます。

  1. 当該防火戸やシャッターの付近に設置されている火災感知器(煙式や熱式)が火災(煙や熱)を感知して作動。
  2. 感知器からの信号を連動制御盤(自火報受信機と併設されているものもある)が受信し蓄積モードに入る。(蓄積モードのないものもある)
  3. 蓄積モードとはある一定の時間連続して感知器からの信号を受信しないと火災と判定しない誤作動を防ぐ為の機能のこと
  4. 熱感知器なら蓄積モードおよそ10秒、煙感知器なら蓄積モードおよそ50秒経過したら連動制御盤が火災と判断して、当該防火戸や防火シャッターへ閉鎖信号(電圧)を送信。
  5. 閉鎖信号(電圧)が当該防火戸等の自動閉鎖装置へ伝わり、防火戸等を止めているロックを解除して防火戸等が作動して開口部を閉鎖。

このようなプロセスで防火戸等が作動して開口部を閉鎖します。

 

防火戸のくぐり戸

通常、防火戸や防火シャッターが閉鎖した場合に避難経路が塞がれてしまいますが、この防火シャッターのすぐ横にこの防火シャッターを迂回する通路(防火シャッターをくぐる為の扉)を設けており、これがくぐり戸になります。

防火戸のくぐり戸の例

また大型の防火戸の場合にも防火戸自体を開けるのには力が必要なので、防火戸にこのくぐり戸を設けて大型の防火戸を押し開けなくてもくぐり戸を開ければ通行できる様になっているものもあり、この場合防火戸全体を開けないので煙や熱の侵入も抑えることができます。

上記で紹介した防火スクリーンにもくぐり戸が付いていて、スクリーンの一部がマジックテープで剥がれるようになっていて、このマジックテープを剥がすと人間が通れるくらいの開口部が出来るのでここを通過することができます。

防火スクリーンのくぐり戸の例

 

まとめ

最後までご覧頂きありがとうございます。今回の特定防火設備については、

  • 特定防火設備は1時間耐火で、主に防火戸や防火シャッターなど建物内部の区画に使用。
  • 防火設備は20分耐火で、主に建物外部からの火災の延焼を防ぐ網入りガラスや塀、袖壁など。

と覚えて頂ければ良いと思います。

今回の記事は消防法ではなく建築基準法のお話ですが、建築基準法は消防法と非常に密接な関係があり、階段通路誘導灯の設置基準でもこの建築基準法で照度などの条件を達成できるなら階段通路誘導灯は免除などの規定もあるので、切っても切れない関係だと思います。

階段通路誘導灯の設置基準については下記のリンクを参照してください。

最近では「防火設備点検」という特定防火設備を点検(検査)するシステムが出来ましたが、一昔前ではこのようなシステムが無くて、特定防火設備の点検は建築基準法により建築士が行うというのが一般的でした。ですが実際は火災報知器と連動制御盤が併設されている場合が多いので、防火戸の点検(作動確認)は消防設備士が行っていたという過去がありました。(もちろん建築士立会いで。)

この様に消防法と建築基準法は密接です。消防設備士の方も建築基準法を勉強しても無駄ではないということになりますので、ぜひ(筆者含めて)皆さんも勉強してはいかがでしょうか?

建築基準法で人気記事である(特別)避難階段について詳しくは下記の記事を参照してください。