自家発電設備の法令一部改正について

皆さんこんにちわ。

今回は2018年に法令が一部改正された非常電源(自家発電設備)についてお話させて頂きます。

皆さんの中にはご存知の方もいらっしゃるとは思いますが、復習の意味も込めて解説していこうと思います。

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一部改正のねらい

この一部改正は平成30年(2018年)に行われたもので、有識者が実機での検証や現場における実態調査を基に自家発電設備における点検方法を合理化するという内容になっています。

例えば改正前の総合点検の運転性能の確認方法では負荷運転しかなく、病院などで負荷運転が出来ない場合にそれっきりになってしまう場合がありましたが、法令一部改正によりこの負荷運転に加えて内部観察等という点検方法が出来たので、上記のような負荷運転が出来ない場合には内部観察等をもって負荷運転に代えることができるようになりました。

また、災害などで自家発電設備が運転するべき状態なのに上記のような点検不足や整備不足などにより運転しなかったという事案もあり、このような事を無くすというねらいもあるみたいです。

一部改正の内容

ではこの一部改正でどのように変わったのでしょうか?

1,負荷運転に代わる点検方法として内部観察等が追加されました。

負荷運転の例

上記でもお話しましたが、以前は総合点検における自家発電設備の運転性能の確認には負荷運転しかありませんでしたが、この内部観察等が追加されたことにより病院などで自家発電設備を負荷運転させられない場合でも代わりに内部観察等で点検ができるようになりました。

この内部観察等ですが、自家発電設備の原動機(一般的にはディーゼルエンジン)の内部を観察することで、負荷運転するのと同等以上に不具合を発見できるということみたいです。詳しくは後述します。

2,負荷運転や内部観察等の点検周期を6年に1回延長できる。

以前は毎年負荷運転を行わければなりませんでしたが、この改正により負荷運転などの点検周期を6年に1回に延長することができるようになりました。

ただし、この延長を行うには「運転性能に係る予防的な保全策」が講じられている場合に限るとのことなので、保全策を講じていれば延長が可能です。

この予防的な保全策について詳しくは後述します。

3,原動機がガスタービンなら負荷運転不要。

以前はガスタービン方式を含む全ての自家発電設備において負荷運転が必要でしたが、改正によりガスタービン方式の自家発電設備は負荷運転が不要になりました。

ガスタービン方式の無負荷運転とディーゼルエンジン方式の負荷運転において、両方に機械的・熱的負荷に差があまりなく未燃焼物質(スラッジ)もほとんど堆積しないからだそうです。

確かにボイラーなどで化石燃料(灯油や重油)を燃やすとスス等がでたりしますが、LPガスなどはスス等とかはでませんのでスラッジが堆積しずらいという見解もうなずけます。

4,換気性能点検が負荷運転時から無負荷運転時に実施

以前は負荷運転時に換気性能の確認を行っていましたが、法令一部改正により無負荷運転時に確認を実施することになりました。

これも有識者の検証データなどから、負荷運転時の原動機や発電機の発熱よりも外気温に関係があり、それよりも吸気口(自然吸気や機械吸気)より確実に吸気が行われているかの確認のほうが重要と判断されたみたいです。

ですので機器点検でも上記の確認が必要になりました。

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内部観察等とは?

ではこの内部観察等とはどのような点検を行うのでしょうか?

内部観察等は文字通り原動機(ディーゼルエンジンなど)の一部を分解してその内部の状態を観察(確認)して、原動機が運転するにあったての不具合が無いかを点検していくものになります。

具体的にはどこの部分を確認するかというと

  1. 過給器コンプレッサ(ターボチャージャーなど)内部の回転羽やその内部状況、また排気管(マフラー)等の内部の状態(スラッジの付着状況など)を確認。
  2. 燃料噴射弁(インジェクター)の作動状況の確認。
  3. シリンダ摺動面の内部の確認(異常なキズが無いかなど)
  4. 潤滑油(エンジンオイル)の成分分析
  5. 冷却水の成分分析

上記のような観察(点検)を行います。

これらの内容は各部品を外したりする為、原動機(ディーゼルエンジンなど)を理解している方(自動車整備士みたいな方)じゃないと難しい内容になっていますので、内部観察等を行う方はこれらの知識も持ち合わせていないと点検が出来ないような内容になっています。

ちなみに上記の4と5の成分分析の部分で、エンジンオイルや冷却水を全量新品に交換すれば成分分析は行わなくても良いのではないか?という感じですが、これについては平成30年8月24日付け消防予第528号通知の質疑応答にて、「 潤滑油及び冷却水の成分を分析することにより、自家発電設備内部の異常を確認することを目的としているため、交換を行うだけでは当該点検を行ったことにはならない。 」との回答が出ていますので注意が必要です。

また、上記通知にて自主的に原動機(ディーゼルエンジン等)をオーバーホール(機械製品を部品単位で分解して、清掃・再組立を行って新品状態同様にする作業のこと)を行っていて、これらが上記の内部観察等の内容に適合していることが確認できれば、このオーバーホールを内部観察等の点検が実施されているとみなすことができます。

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予防的な保全策とは?

ではこの予防的な保全策とはどのような内容なのでしょうか?

これは自家発電設備が運転するのに必要な部品等(Vベルトや潤滑油など)を定期的に点検及び交換することにより、自家発電設備が必要な時に確実に運転できるように行う確認及び整備のことを指します。

具体的には以下の部品等の確認及び交換を行います。

1,1年ごとに確認するべき項目

    1. 予熱栓(オイルパンヒーターなど)の確認
    2. 点火栓(点火プラグ)の確認
    3. 潤滑油プライミングポンプの確認
    4. 冷却水ヒーターの確認

上記の確認(断線や変形の有無、絶縁抵抗、正常な動作など)を行います。

これらについては、当該自家発電設備に設けられていないものもありますので、その場合には確認不要です(例としてディーゼルエンジンには点火栓はありませんので確認不要)。

ちなみに潤滑油プライミングポンプとは、非常用自家発電設備などは通常時は運転せず非常時や点検時だけの運転になり、運転から運転の期間が長く潤滑油による潤滑作用が無くなりやすく、その状態で運転すると潤滑不足によりシリンダーなどにキズがついたりして故障の原因になるので、それを防止する為にエンジンを運転する前に潤滑油だけをこのプライミングポンプで送り、各箇所を潤滑油にて潤滑させる為のポンプになります。

2,製造者(メーカー)が指定する交換推奨期間での部品交換

上記では確認するべき事項でしたが、ここでは部品等の交換になります。

交換するべき部品等には

    1. 潤滑油
    2. 冷却水
    3. 燃料フィルター
    4. 潤滑油(オイル)フィルター
    5. ファン駆動用Vベルト
    6. 冷却水などのゴムホース
    7. 各部品に用いられるシール材(パッキンやOリングなど)
    8. 始動用の蓄電池

上記の部品をメーカーが指定する期間で交換を行います。

例えば潤滑油(エンジンオイル)は原動機を運転しなければ悪くならないイメージですが油は酸化して劣化しますので、メーカーでも「運転時間500時間又は半年間」などという運転時間と使用期間の両方のいずれかで交換するように推奨しています。

またVベルトやゴムホースなども日々劣化していきベルト破断やホース穴開きなどの異常がでますので、こちらもメーカー指定の使用期間での交換が必要になります。

負荷運転などの実施期間について

ではこれらの負荷運転(内部観察等)を実施する期間はどのように計画すればよいのでしょうか?

基本的には上記でお話した「予防的な保全策」を講じていなければ毎年総合点検時に負荷運転(又は内部観察等)を行う必要があります。

ですが、予防的な保全策を毎年講じている場合には製造年(又は前回の負荷運転実施)から6年が経過するまでに負荷運転(内部観察等)を行えば良いとなっています。

もちろん予防的な保全策を毎年講じていれば負荷運転等を6年を経過するまで延長することができるとなっていますので、予防的な保全策を講じていても毎年負荷運転等を行って問題ありません。

負荷運転点検時の注意事項

上記の「内部観察等とは?」でもお話しましたが今回の法令一部改正に伴う質疑応答(平成30年8月24日付け消防予第528号通知)があり、その中で点検実施にあたり気をつけたい事柄がありましたので紹介したいと思います。

Q1,負荷運転はどのくらいの時間行えば良いか?

A1,「負荷運転を実施して、点検基準に定める事項を確認することが目的であるため、負荷運転はこれらの確認に要する時間行えば足りる。」となっていますが、自家発電設備を用いて接続されている設備(消火栓など)が有効に作動する時間として一般的には30分間行います(消防法施行規則第12条第4項ロ(イ)を参照)。

Q2,負荷運転は30%以上の負荷にて行うとなっているが、火災が発生した場合において設計上想定されている負荷が30%を下回る事が確認できる場合には、その負荷(30%以下の負荷)にて負荷運転の点検を実施しても良いか?

A2,「一般的に設置される自家発電設備がポンプ等起動の際に、定常運転時の約3倍の電力が瞬間的に必要になり、これらの事を想定して自家発電設備容量が定常運転時の3倍で設計されているので、火災が発生した場合において設計上想定されている定常運転時の負荷により異常の有無が確認できるように求めている」とのことなので、当該自家発電設備に接続されている消防用設備等の負荷がこの30%に満たない場合でも差し支えないとのこと。

Q3,負荷運転や内部観察等をの点検周期を6年に1回に延長する場合の対応として、運転性能に関わる点検(負荷運転等)を行った年については、予防的な保全策を講じている書類の添付は不要か?

A3,添付しなくても差し支えないが、自家発電設備の維持管理の観点からは、その年においても予防的な保全策を講じることが望ましい。

Q4,非特定防火対象物において自家発電設備が設置されている場合に

    1. 点検報告期間は3年に1回であるが、報告時に添付する予防的な保全策を講じている書類は直近に講じた書類のみ添付すれば良いか?
    2. 報告する年と運転性能に関わる点検(負荷運転等)を実施した年が異なる場合に自家発電設備点検票(その3)の備考欄に負荷運転等の最終実施年月日を記載し、直近に行った予防的な保全策を講じている書類を添付すれば「運転性能」欄の点検結果の記載は不要か?

A4,Ⅰ・Ⅱともに差し支えない

まとめ

最後までご覧いただきありがとうございます。

今回は自家発電設備の一部法令改正についてお話させていただきました。

法令改正で総合点検時における運転性能の確認で、以前は負荷運転しかなかったけど、改正により内部観察等が追加され、負荷運転又は内部観察等のいずれかを選べるようになりました。

また、上記負荷運転等も最大で6年間延長できる「予防的な保全策」という項目も追加されて、病院などで負荷運転が厳しい場合に内部観察等を行うわけですがこの点検を6年延長できるというのも追加されました。

内部観察等は文字の通り、原動機を分解してその内部を観察することにより異常を発見するという点検になり、原動機を分解するのでその知識を持ち合わせていないとできない点検になります。

予防的な保全策は自家発電設備の周期的な整備及び確認で、潤滑油や冷却液の交換や各部品の作動状況等の確認になります。

これらに伴い自家発電設備の点検票も記載内容が変更になっていますので注意が必要です。

負荷運転には、実負荷運転(自家発電設備に接続されている消防用設備等を実際に運転して電力を消費して負荷をかける方法)や模擬負荷装置を用いての模擬負荷運転(実際に接続されている消防用設備等に代わり電力を消費する試験装置を用いて負荷をかける方法)がありますので、どちらで負荷をかけても問題ありません。