パッケージ型自動消火設備とは(概要と設置基準)

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皆さんこんにちは。

通常用いられる消防用設備等(屋内消火栓やスプリンクラー)の代替設備として、パッケージ型消火設備やパッケージ型自動消火設備(防火安全性能を有する消防の用に供する設備)があります。

以前に屋内消火栓の代替設備であるパッケージ型消火設備のお話をさせて頂いたので今回はパッケージ型自動消火設備のお話をしていこうと思います。

パッケージ型消火設備については下記の記事を参照してください。

パッケージ型消火設備とは(概要と設置基準)
この記事ではパッケージ型消火設備について、パッケージ型消火設備の概要、構成部品と種類(Ⅰ型とⅡ型)、設置できる防火対象物、設置基準(水平距離・防護距離・必要な免状の種類など)について詳しく解説しています。

 

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パッケージ型自動消火設備とは?

パッケージ型自動消火設備の例

パッケージ型自動消火設備はスプリンクラー設備の代替設備(スプリンクラー設備に代えて用いることができる設備)として、必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備(通常使われる消防用設備等に代えて使うことができる設備)(以下、消防の用に供する設備)として登場しました。

この消防の用に供する設備には、他には、屋内消火栓設備の代替設備としてパッケージ型消火設備、共同住宅用スプリンクラー設備、特定駐車場用泡消火設備などがあります。

 

パッケージ型自動消火設備の構成と種類

パッケージ型自動消火設備は専用火災感知器(自動火災報知設備の感知器を2種類使用)が火災を感知した時に、加圧用ボンベを開いて消火剤貯蔵容器内に圧力をかけ、薬剤を銅管に導入して薬剤放出口から放射して消火をする消火設備で

  • 消火薬剤貯蔵容器
  • 容器弁開放装置
  • 加圧用ガス容器
  • 安全装置(安全弁など)
  • 電動弁(放射区画が多数ある場合)(主選択弁と個別選択弁がある)
  • 銅管(薬剤導入管)(薬剤放出管)
  • 薬剤放出口
  • 感知器(熱式・煙式)
  • 制御盤(受信機・中継器)
  • 非常電源(蓄電池設備)

上記の機器などにより構成されています。

また、放射性能や消火性能によりⅠ型とⅡ型に区分されます。(詳しくは、後述)

 

設置できる防火対象物

設置できる防火対象物は下表の通りで、政令別表第一の5項と6項、16項・イとロ(5項や6項の用途がある場合)、16の2項に設置することができます。

政令別表第一って何?って方は下記の記事を参照してください。

防火対象物とは
この記事では消防用設備には欠かせない防火対象物(政令別表第一の用途一覧)についてや、特定防火対象物と非特定防火対象物の違いなどについて詳細に説明・解説しています。また3項イとロの違いについて、6項における細分化についても記載しています

 

Ⅰ型を設置できる場合

消防法施行令第12条第1項第1号、第3号、第4号、第9号から第12号までに掲げる防火対象物又はその部分(第12条第2項第2号ロに掲げる部分を除く。)のうち、政令別表第一の5項・6項の防火対象物または16項の防火対象物のうち5項や6項の用途に使用される部分が存するもので、延べ面積が10000㎡以下のものに設置することができます。

 

Ⅱ型を設置できる場合

消防法施行令第12条第1項第1号、第9号に掲げる防火対象物又はその部分で、延べ面積が275㎡未満のもの(易燃性の可燃物があり消火が困難と認められるものを除く。)に設置することができます。

パッケージ型自動消火設備の設置基準

 

設置・維持の基準

パッケージ型自動消火設備は、下記に定めるところにより設置・維持しなければなりません。

  1. 同時放射区域は原則として、パッケージ型自動消火設備を設置しようとする防火対象物又はその部分のうち、壁・床・天井・戸(ふすまや障子などに類するものを除く。)などで区画されている居室や倉庫などの部分ごとに設定する。
  2. 壁・床・天井・戸などで区画されている居室などの面積が13㎡を越えている場合には、同時放射区域を2以上に分割して設定することができます。この場合、それぞれの同時放射区域の面積は13㎡以上とします。
  3. 防護面積(2以上のパッケージ型自動消火設備を組み合わせて使用する場合には、当該設備の防護面積の合計)が各同時放射区域の面積以上であるものを設置する。
  4. 同時放射区域で発生した火災を有効に感知して、かつ、消火出来るように設置する。
  5. 同時放射区域を2以上のパッケージ型自動消火設備により防護する場合は、同時に放射出来るように作動装置などを連動させるようにする。
  6. Ⅰ型のパッケージ型自動消火設備の場合は、以下により消火薬剤・消火薬剤貯蔵容器・受信装置・中継装置・作動装置などを2以上の同時放射区域で共用することができる。
    1. 隣接する同時放射区域の設備を共用しないこと。ただし、以下の場合には隣接する同時放射区域の設備を共用することができる。
      1. 隣接する同時放射区域が建基令第107号に規定する耐火性能若しくは建基令第107号の2に規定される準耐火性能又はこれと同等以上の防火性能がある壁や間仕切り壁で区画され、かつ、開口部に建基法第2条第9号の2ロに規定する防火戸が設けられている場合。
      2. 入所者が就寝に使用する居室以外で、講堂・機能訓練室などに類するもので、可燃物の集積量が少なく、かつ、延焼拡大の恐れが少ないと認められる場所に設置する場合。
      3. 上記のⅠ又はⅡの場合の他、消防法施行令第12条第2項第3号の2に規定する床面積の合計が1000㎡未満の防火対象物又はその部分に設置する場合であっても、火災が発生した同時放射区域以外の同時放射区域に対応する防護区域に設ける放射口から消火薬剤が放射されないように設置する場合。
    2. 共用する2以上の同時放射区域にそれぞれ対応する警戒区域において発生した火災を有効に感知することができ、かつ、火災が発生した同時放射区域に有効に消火薬剤を放射できるパッケージ型自動消火設備を用いる。
    3. 作動装置が作動してから共用するいずれかの同時放射区域においても30秒以内に消火薬剤を放射することができるパッケージ型自動消火設備を用いる。

 

 

性能などについて

パッケージ型自動消火設備の感知部や消火薬剤の放射性能などは以下の様になっています。

感知部

    1. 感知器型感知部は、感知器等規格省令の規定に適合するものを使用する。
    2. その他の感知部は、感知器等規格省令の規定に適合するものと同等以上の性能があるものを使用する。
    3. 感知部は、検出方式の異なる2以上のセンサーにより構成する。

放射性能

    1. 作動後速やかに防護区画内に消火薬剤を有効に放射できること。
    2. Ⅰ型にあっては、充填された消火薬剤の容量又は質量の85%以上の量を放射できること。
    3. Ⅱ型にあっては、充填された消火薬剤の容量又は質量の90%以上の量を放射できること。
    4. 放出口を複数設置するものの各放出口から放射される消火薬剤の容量又は質量は、放射された全消火薬剤の容量又は質量を放出口の数で除した値の90%以上110%以下であること。

消火薬剤の種類・貯蔵量

    1. 消火薬剤の種類及び消火薬剤量は下表のとおりとする。
    2. 消火薬剤の量は、原則として下表に示す消火薬剤量の1.2倍以上の量とする。
    3. Ⅰ型における放出時間は、1分以上とする。

消火薬剤の種類及び消火薬剤量

 

工事や整備・点検に係る資格区分

工事

第1種・第2種・第3種の甲種消防設備士

整備

第1種・第2種・第3種の甲種又は乙種消防設備士

点検

上記消防設備士の他、第1種消防設備点検資格者

 

まとめ

最後までご覧いただきありがとうございます。

今回はたまたまパッケージ型自動消火設備を扱う業務に携わりましたので記事にしてみました。

上記の設置防火対象物の表を見ても、10,000㎡以下の防火対象物でなおかつ5項や6項(又はその用途のある複合用途防火対象物)や地下街にしか設置することができないので、なかなかお目にかかれない設備の1つだと思います。

私もこの業界にかれこれ10年以上いますが、最近初めてこのパッケージ型自動消火設備を目にしました。

この設備の点検要領や機器の説明などは次回に説明させていただきます。

 

 

 

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※消防法施行令第12条第1項第1号、第3号、第4号、第9号から第12号

スプリンクラー設備の設置に関する基準の部分。

地階を除く階数が11以上の部分にはスプリンクラー設備を設置しなさい等の設置の基準。上記した設置基準の表にうたっている基準そのもの。

 

 

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※消防法施行令第12条第2項第2号ロ

スプリンクラーヘッドの設置に関する基準の部分

指定可燃物を貯蔵したり又は取り扱う部分、及び高天井部分(高さが10mを超える部分)には放水型のスプリンクラーヘッドを設置しなさいという基準。

 

 

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※同時放射区域とは

火災が発生した場合に、作動装置や選択弁などに接続する1の放出銅管に接続される、一定の区域に係わる全ての放射口から消火や延焼拡大防止のために同時に消火薬剤を放射して防護するべき区域のこと。

 

 

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※建基令(建築基準法施行令)第107条

耐火構造に関する基準の部分

耐火構造について非損傷性(壊れない)、遮熱性(熱くならない)、遮炎性(火を出さない)の3つを規定しています。

 

 

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※建基令(建築基準法施行令)第107条の2

準耐火構造に関する基準の部分

準耐火構造について非損傷性(壊れない)、遮熱性(熱くならない)、遮炎性(火を出さない)の3つを規定しています。

 

 

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※建基法(建築基準法)第2条第9号の2ロ

延焼のおそれのある開口部等に防火戸などの防火設備を設置しなさいという基準。

その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に、防火戸その他の政令で定める防火設備(その構造が遮炎性能(通常の火災時における火炎を有効に遮るために防火設備に必要とされる性能をいう。)に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものに限る。)を有すること。

 

 

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※消防法施行令第12条第2項第3号の2

特定施設水道直結型スプリンクラー設備の設置基準に関する部分。

特定施設水道連結型スプリンクラー設備(スプリンクラー設備のうち、その水源として、水道の用に供する水管を当該スプリンクラー設備に連結したものであつて、次号に規定する水量を貯留するための施設を有しないものをいう。以下この項において同じ。)は、前項第一号及び第九号に掲げる防火対象物又はその部分のうち、防火上有効な措置が講じられた構造を有するものとして総務省令で定める部分以外の部分の床面積の合計が千平方メートル未満のものに限り、設置することができること。

 

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※易燃性の可燃物

綿、ウレタンフォーム、マッチ類、化繊類などの着火性が高くて、燃焼速度の早い物質のこと。又はそういう状態にあるもののことをいう。