皆さんこんにちわ。
今回の記事では非常電源(蓄電池設備)の点検要領のその1(点検票1枚目)の内容である蓄電池の設置状況(キュービクル式、又はそれ以外か)や蓄電池の外観や電圧などを確認してきます。
点検を行うにあたっての留意事項
消防用設備等の非常電源として附置する蓄電池設備は、電気事業法による自家用電気工作物としての適用を受けるので、点検や整備に関わる作業はその施設に選任された電気主任技術者と防火管理者の立会いの下に行うことが望ましく、電気事業法による保安規程に基づく維持管理も必要なので、この点検等と同時に行うように計画することが適当であることとされています。
これは自家発電設備の時に解説した内容と同じで、電気主任技術者と連携して作業を行いなさいということになります。
また消防用設備等に用いられる蓄電池設備の維持管理について専門的な知識と技能が必要とされていますが、これに関しては一般社団法人電池工業会で実施する「蓄電池設備整備資格者」講習を受講・修了して資格者となられた方はこの必要とする能力を満たすものとされていますので、点検作業を含む維持管理に際して蓄電池設備整備資格者を有する方が行うのが適当とされています。
点検票 その1
設置状況
下記の事項について確認します。
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- 下記の表に掲げる保有距離があるか目視又は計測にて確認します。
- キュービクル式蓄電池設備は、その前面に1m以上の幅の空地を有しているか目視又は計測にて確認します。
- キュービクル式蓄電池設備を屋外又は主要構造物を耐火構造とした建築物の屋上に設ける場合は、隣接する建築物若しくは工作物から3m以上の水平距離を有しているか目視 又は計測にて確認します。
ただし、隣接する建築物若しくは工作物の部分が不燃材料で造られ、かつ、建築物の開口部に防火戸その他の防火設備が設けられている場合は、3m未満の水平距離で良い。 - キュービクル式蓄電池設備を屋外に設ける場合は、キュービクル式以外の非常電源専用受電設備若しくはキュービクル式以外の自家発電設備又は建築物等から1m以上離れているか目視又は計測にて確認します。
- キュービクル式以外の蓄電池設備を室内に設ける場合は、不燃専用室に設置されていることを目視にて確認します。
- 1.に規定する保有距離及び2.に規定する保有空地内には、使用上及び点検上の障害となる物品が置かれていないか目視にて確認します。
- 不燃専用室には、6.に規定するもののほか、火災を発生するおそれのある設備、火災
の拡大の要因となるおそれのある可燃物等が置かれていないことを目視にて確認します。
下記の事項について確認します。
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- 不燃専用室の区画、防火戸等に著しい変形、損傷等がないことを目視にて確認します。
- 屋外用キュービクル構造のものにあっては、換気口の目づまり、雨水等の浸入防止装置に著しい変形、破損等がないことを目視にて確認します。
- キュービクル式構造のものにあっては、外箱、外箱取付部品、扉、換気口等に著しい変形、破損等がないことを目視にて確認します。
キュービクル内又は不燃専用室内に、水溜り、水の浸透などがないことを目視にて確認します。
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- 室内の温度が40℃以下であることを温度計などを用いて確認します。
- 自然換気口の開口部の状況又は機械換気装置の運転が適正であることを目視又は手動運転などにより確認します。
蓄電池設備の使用上及び点検上に支障がない位置に配置されており、正常に点灯することを目視で確認します。
※ 点検に際して、移動灯や懐中電灯を用意しましょう。
「蓄電池設備」の標識に汚損、破損などがなく見やすい状態で取り付けられていることを目視で確認します。
蓄電池
下記の事項について確認します。
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- 全セルについて電槽、ふた等に変形、破損、著しい腐食、き裂、漏液等がないことを目視にて確認します。
- 全セルについて各種せん体、パッキン等に変形、破損、著しい腐食、き裂、漏液等
がないことを目視にて確認し、かつ制御弁式据置鉛蓄電池及び触媒栓の交換時期を確認し期限内であることを確認します。 - リチウムイオン蓄電池にあっては、単電池又はモジュール等に変形、破損、著しい
腐食、き裂等がないことを目視にて確認します。 - 架台、外箱に著しい変形、著しい破損、腐食等がないことを目視にて確認します。
- 封口部にはがれ、き裂等がないことを目視にて確認します。
下記の事項について確認します(上記画像参照)。
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- 蓄電池設備の基準(昭和48年消防庁告示第2号)に示されている表示が見やすい位
置に行われていることを目視にて確認します。 - 蓄電池設備の基準(昭和48年消防庁告示第2号)に適合するもの又は、総務大臣若
しくは消防庁長官が登録した登録認定機関の認定証票が貼付されていることを目視にて確認します。
- 蓄電池設備の基準(昭和48年消防庁告示第2号)に示されている表示が見やすい位
①比重及び温度について
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- 鉛蓄電池の電解液の比重及び温度は、比重計及び温度計による全セルについて確認します。ただし、構造上電解液が確認できないものにあっては電解液比重及び温度の測定を省略することができるが、この場合蓄電池表面温度を表面温度計により測定します。
- 比重計は、JIS B 7525(比重浮ひょう)に規定された精度±0.005の浮ひょう又はこれと同等以上の精度をもつ比重計を使用します。
- 温度計は、JIS B 7411(ガラス製棒状温度計(全浸没))に規定された精度±1℃の温度計又はこれと同等以上の精度をもつ温度計を使用すること。ただし、水銀温度計は使用しないこと。
- 鉛蓄電池の電解液の比重及び温度は、比重計及び温度計による全セルについて確認します。ただし、構造上電解液が確認できないものにあっては電解液比重及び温度の測定を省略することができるが、この場合蓄電池表面温度を表面温度計により測定します。
② 電解液比重の測定方法について
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- 比重計のゴム球を強く押さえてスポイトの先端を液中に挿入し、ゴム球の力を徐々に弱めてスポイト内に液を吸い込む。
- スポイト内の比重計(浮ひょう)が内部に触れないよう正しく浮かし、液の気泡の消える
のを待って液面の盛り上がった上縁の比重計の目盛を読む。
③電解液面
全セルについては、電解液の量を目視により確認します。
上記の方法により下記の事項を確認します。
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- 電解液比重は、CS CS-E形では1.205(20℃)以上、HS HS-E形では1,230
(20℃)以上で、各セル間に0.03以上の差がないことを確認します。 - 電解液温度(制御弁式据置鉛蓄電池は蓄電池表面温度)は、45℃以下で、各セルは
全セルの平均値の±3度以内であることを確認します。- 比重は、電解液の温度により変化するので、20℃に換算した値で適正かどうか判定を行うこと。標準温度(20℃)と実測温度との間に差があるときは、次の式により温度換算する。
D20=Dt+0.0007(t-20)
D20 :20℃における電解液比重
Dt :t℃における電解液比重
t:比重を測定したときの電解液温度(℃)
※例えば電解液温度が28℃で比重が1.230だとしたら
D20=1.230+0.0007×(28-20)
D20=1.230+0.0007×8 → 1.2356
標準温度(20℃)に換算した比重が1.2356ということになる。 - 比重は、放電の場合は放電量にほぼ比例して低下するが、充電の場合は充電量に比べて比重の上昇は少なく、充電終期にガスの発生量とともに攪拌されて急激に上昇するので、充電中の比重を測定しても充電量を判断することはできない。
また、充電終期電圧を低く、例えば2.3V/セルとした充電方式では、充電終期の電流が少ないため、ガスによる攪拌が行われず、自然拡散にまたなければならない。このため、この充電方式では、常温で約4週間、低温では約6週間経過した後の比重値によって判断する必要がある。 - アルカリ蓄電池の電解液比重は充放電しても変化しないので、年1回、パイロットセルについて、トリクル充電又は浮動充電中の比重を測定し、製造者の指定する値以上であるかを確認することが望ましい。
- 比重は、電解液の温度により変化するので、20℃に換算した値で適正かどうか判定を行うこと。標準温度(20℃)と実測温度との間に差があるときは、次の式により温度換算する。
- 全セルの液面が、最高液面線と最低液面線の中間の範囲にあることを目視にて確認します。
- シール形蓄電池で、液面の点検ができないものにあっては、点検を省略することができる。
- 電解液は、鉛蓄電池では希硫酸を、アルカリ蓄電池では水酸化カリウム溶液を使用しているため、皮膚に付着すると炎症を起こし、機器に付着すると腐食・発錆させるおそれがあるので十分注意して行うこと。
- 電解液を床にこぼしたときは、すぐ拭き取ること。
- 電解液が皮膚や被服に付着したときは水で洗うこと。目に入ったときは直ちに清水で十分洗い流したのち、すぐに医師の手当を受けること。
- 電解液の減少が著しいとき(液面が最高液面線より最低液面線まで低下するには、夏期でも2か月以上を要する。)又は少数のセルのみ減少が著しいときは故障と考え、蓄電池設備整備資格者に不良内容の修理又は整備を依頼する等適切な処置をとる必要があります。
- 電解液比重は、CS CS-E形では1.205(20℃)以上、HS HS-E形では1,230
変形、損傷、腐食、断線等がないことを目視にて確認します。
変形、損傷、腐食、断線等がないことを目視にて確認します。
トリクル充電、浮動充電又は定電流定電圧充電中の蓄電池総電圧値を直流電圧計により下記の事項を確認します。
※直流電圧計は、JIS C 1102(直動式指示電気計器)に規定された精度0.5級以上の計器又はこれと同等以上の精度をもつ計器を使用すること。
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- 測定値は、製造者の指定する充電電圧値の±1%以内であること。
- 鉛蓄電池、アルカリ蓄電池の充電電圧値は、1セルあたりのトリクル充電電圧又は浮動充電電圧値とセル数との積とする。
- リチウムイオン蓄電池の充電電圧値は、セル又はモジュールあたりの浮動充電又は定電流定電圧充電電圧値と、直列接続されたセル数又はモジュール数との積とする。
- 測定値は、製造者の指定する充電電圧値の±1%以内であること。
トリクル充電又は浮動充電中のセルの電圧値を直流電圧計により全セルについて下記の事項を基に確認しますが、リチウムイオン蓄電池、ナトリウム・硫黄電池(NAS電池)及びレドックスフロー電池にあってはこの点検を省略することができます。
※直流電圧計は、JIS C 1102(直動式指示電気計器)に規定された精度0.5級以上の計器又はこれと同等以上の精度をもつ計器を使用すること。
測定値は、次に示す範囲内であることを計測して確認します。
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- ベント形アルカリ蓄電池、シール形据置アルカリ蓄電池は、製造者の指定する電圧値の±5%以内とする。
- 据置型鉛蓄電池は
CS CS-E形 2.15±0.05V
HS HS-E形 2.18±0.05V
HSE MSE型 製造者指定値に対し
2V電池:±0.10V
6V電池:±0.20V
12V電池:±0.30V
上記の範囲内であること。
設置図面と照合して負荷の容量に変化があった場合、蓄電池容量で全負荷に対して規定時間放電できることを確認します。
※負荷容量が増加し判定できない場合は、製造者又は蓄電池設備整備資格者に判定を
依頼すること。
均等充電の実施を記録により確認し、製造者指定の期間どおりに均等充電が実施されていることを確認します。
※セル電圧、電解液比重の点検結果が不良と判定される場合、又は均等充電が実施されていない場合は、均等充電を実施しなければならない。
まとめ
最後までご覧いただきありがとうございます。
今回は非常電源(蓄電池設備)の点検要領について点検票その1の部分を解説させていただきましたけど、最初の留意事項は順守していただいて、電気事故(感電や波及事故など)が無いようにしていただければと思います。
消防用設備等に用いられる蓄電池は鉛蓄電池が多いですが、電解液の保水が必要な「ベント式」と、電解液の保水の必要のない「制御弁式」があり、点検項目もそれぞれで該当したりしなかったりなので良く確認して作業を行いましょう。
例えば「ベント式」であれば電解液がありますので、液量の確認、比重や液温度の測定、均等充電の有無などを確認しなければなりませんが、「制御弁式」であれば電解液は密封されていますので、液量の確認、比重測定、均等充電の有無については確認しなくて良い項目になります(蓄電池表面温度の測定は必要)。
最後に電解液の液温度を測定するのに「水銀温度計」を使用したり、鉛蓄電池とアルカリ蓄電池で比重計や温度計を共用してはいけません。
なぜかというと、「水銀温度計」の場合は万が一水銀温度計が破損して水銀が電解液に少量でも入ってしまった場合に電解液がダメになり蓄電池ごと交換をしなければならなくなるからで、器具の共用も同じく電解液にアルカリ(または希硫酸)が混入した場合に蓄電池ごと交換しなければならないからです。
しっかりと点検要領を確認して正確に安全に作業を行いましょう。