防火上有効な措置が講じられた構造を有する部分とは

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皆さんこんにちわ。

屋内消火栓やスプリンクラー設備に携わったり設計したりするとでてくる「基準面積の算定」に使用するこのキーワードですが、実は意外に重要なので解説していきたいと思います。

 

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根拠条文について

今回の記事タイトルにもなっている「防火上有効な措置が講じられた構造を有する部分」ですが、これは消防法施行規則第13条の5の2に規定されている部分で

令第十二条第二項第三号の二の総務省令で定める部分は、次のいずれにも該当する部分(当該部分の床面積の合計が当該部分が存する防火対象物の延べ面積に二分の一を乗じて得た値を超える場合にあつては、当該二分の一を乗じて得た値の面積に相当する部分に限る。)とする。
一 第十三条第三項第七号又は第八号に掲げる部分であること。
二 次のいずれかに該当する防火上の措置が講じられた部分であること。
イ 準耐火構造の壁及び床で区画され、かつ、開口部に防火戸(随時開くことができる自動閉鎖装置付きのもの又は随時閉鎖することができ、かつ、煙感知器の作動と連動して閉鎖するものに限る。)を設けた部分
ロ 不燃材料で造られた壁、柱、床及び天井(天井のない場合にあつては、屋根)で区画され、かつ、開口部に不燃材料で造られた戸(随時開くことができる自動閉鎖装置付きのものに限る。)を設けた部分であつて、当該部分に隣接する部分(第十三条第三項第六号に掲げる部分を除く。)の全てがスプリンクラー設備の有効範囲内に存するもの
三 床面積が千平方メートル以上の地階若しくは無窓階又は床面積が千五百平方メートル以上の四階以上十階以下の階に存する部分でないこと。

上記のように規定されていて、これは「スプリンクラー設備の設置を要しない構造」の一部分であり、この規定を全てクリアできればスプリンクラー設備の設置を要しないという規定ですが、法令文章って難解なので1つづつ解説していきます。

 

条文の基礎

まずは条文最初の「令第十二条第二項第三号の二の総務省令で定める部分」についてですが、これは特定施設水道連結型スプリンクラー設備を設置できる防火対象物又はその部分についての条文で、この「総務省令で定める部分」が今回の「防火上有効な措置が講じられた構造を有する部分」のことを指しており、この部分以外の部分の床面積の合計が1000㎡未満であれば特定施設水道直結型スプリンクラー設備を設置することができるということで、大元おおもとはスプリンクラー設備の設置基準に使われている用語であることがわかりました。

 

条文の解説

条文一の部分

それでは一の「第十三条第三項第七号又は第八号に掲げる部分であること。」の部分ですが、これは消防法施行規則第13条の3の7と第13条の3の8の条文を指し

第13条の3の7は

手術室、分べん室、内視鏡検査室、人工血液透析室、麻酔室、重症患者集中治療看護室その他これらに類する室

第13条の3の8は

レントゲン室等放射線源を使用し、貯蔵し、又は廃棄する室

となっており、「防火上有効な措置が講じられた構造を有する部分」が上記の部屋を規定していることがわかります。

 

条文二の部分

次に二の「次のいずれかに該当する防火上の措置が講じられた部分であること。」の部分である

イ 準耐火構造の壁及び床で区画され、かつ、開口部に防火戸(随時開くことができる自動閉鎖装置付きのもの又は随時閉鎖することができ、かつ、煙感知器の作動と連動して閉鎖するものに限る。)を設けた部分

ロ 不燃材料で造られた壁、柱、床及び天井(天井のない場合にあつては、屋根)で区画され、かつ、開口部に不燃材料で造られた戸(随時開くことができる自動閉鎖装置付きのものに限る。)を設けた部分であつて、当該部分に隣接する部分(第十三条第三項第六号に掲げる部分を除く。)の全てがスプリンクラー設備の有効範囲内に存するもの

になりますが、これは上記一の部屋(手術室など)の部屋の壁や床等及び開口部が指定の材質及び施工方法で施工してあれば「防火上有効な措置が講じられた構造を有する部分」である基準を1つ満たすことができる規定ですが、文章だといまいちわかりずらいので図で解説いたします。

防火上の措置が講じられた部分の解説図

まずは上図左の「イ」の解説ですが

  • 手術室等とその他の部屋(廊下や病室など)の区画が準耐火構造の壁・床で区切られていること
  • 開口部※1に防火戸を設け、かつ下記のどっちかの施工方法にて行う
    • 常時閉だがいつでも人力で開けられる防火戸(引き戸タイプ含む)で、開けても自動で閉鎖する装置(ドアチェックやドアクローザーなど)が付いているもの
    • 常時開の防火戸だけど人力じんりきでいつでも閉鎖でき、なおかつ煙感知器の作動と連動して自動で防火戸が開口部を閉鎖できる機構のもの

これらの要件を満たす必要があります。


 

一方、上図右の「ロ」のほうは

  • 手術室等とその他の部屋(廊下や病室など)の区画が不燃材料の壁・床・柱・天井(天井が無い場合は屋根)で区切られていること
  • 開口部※1に不燃材料で造られた戸を設けて、常時閉だがいつでも人力で開けられる戸(引き戸タイプ含む)で、開けても自動で閉鎖する装置(ドアチェックやドアクローザーなど)が付いているもの
  • 区画された隣接する部分(直接外気に開放されている廊下やその他の外部の気流が流通する場所を除く)の全てが、スプリンクラー設備の有効範囲内※2であること

これらの要件を満たさなければなりません。

※1:区画貫通の隙間を不燃材などで埋め戻した配管等の貫通部、及び防火ダンパーが設けられたダクトの貫通部は含まない。

※2:消防法施行令第12条第3項(他設備設置によるスプリンクラー設備の設置免除の部分)に規定する消防用設備等(スプリンクラー設備と同等以上の効力を持つ他の消火設備で、移動式のものは除く)の有効範囲内であっても良い。(水噴霧、泡、不活性ガス、ハロン、粉末消火設備)

 

条文三の部分

そして最後の三の部分ですが、これは上記の部屋があるべき部分についての解説になり

三 床面積が千平方メートル以上の地階若しくは無窓階又は床面積が千五百平方メートル以上の四階以上十階以下の階に存する部分でないこと。

となっていますので、以下に示す階や部分に部屋がある場合には「防火上有効な措置が講じられた構造を有する部分」には該当しなくなります。

  • 床面積が1000㎡以上の地階・無窓階
  • 床面積が1500㎡以上の4階以上10階以下の階

ですので上記の階や部分以外の所であれば問題ありません。

この部分は消防法施行令第12条第1項第11号にも同じ4階から10階までのスプリンクラー設置に関わる文章がありますので、それと同じ解釈になります。

 

まとめ

最後までご覧いただきありがとうございます。

今回は「スプリンクラー設備の設置を要しない構造」の一部分である「防火上有効な措置が講じられた構造を有する部分」の解説をさせていただきました。

簡単にまとめますと

  • 該当する部屋は手術室や分娩室、麻酔室、レントゲン室などの特定用途の部屋であること
  • 以下のどちらかの防火上の措置が取られていること
    1. 準耐火構造の床・壁で区画され、開口部に防火戸(随時開放できる防火戸でドアチェック等付のもの、又は随時手動で閉鎖でき、煙感知器と連動して閉鎖できる防火戸)を設置したもの
    2. 不燃材料の壁・床・天井・柱で区画され、開口部に不燃材料で造られた戸(防火戸でなくてもよい)(随時開放でき、ドアチェック等付のもの)を設置し、なおかつ当該部分に隣接する部分がスプリンクラー設備の有効範囲内であること
  • 上記の部分が床面積1000㎡以上の地階・無窓階又は床面積1500㎡以上の4階以上10階以下の部分に存しないこと

これらの全ての要件に該当する場合に「防火上有効な措置が講じられた構造を有する部分」としてスプリンクラーの設置を要しない部分として計算することができます。

病院や診療所の設計などに携わる場合に必要な知識で、点検などを主とする場合にはあまり必要としない知識ではありますが、雑学として覚えておくのも良いかと思います。