工事整備対象設備等着工届出書とは?

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皆さんこんにちは。

今回は消防用設備等において工事に着手しようとした時に消防本部等へ提出が必要になる工事整備対象設備等着工届出書(通称、着工届)の記入例といった解説をしていきます。

また、着工届が省略できる「軽微な工事の範囲」も併せて説明させていただきます。

ちなみに工事整備対象設備等における「工事」と「整備」の区分について確認したい場合は下記の記事から確認できます。(自火報感知器の交換は工事?整備?など)

 

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工事整備対象設備等着工届出書とは?

これは、消防用設備等(工事整備対象設備等)の工事(新設・増設など)を行う場合にこれらの工事を行う消防設備士が消防機関へ届け出る書類(通称、着工届)になります。(消防法第17条の14消防法施行令第36条の2消防法施行規則第33条の18

消防用設備等の点検票や設置届は防火対象物の関係者(所有者・占有者・使用者など)が届出を行いますが、着工届は甲種消防設備士が届出を行います。

例えば自動火災報知設備を工事する場合の着工届は甲種4類の消防設備士が届出を行います。

また届出はいつまでに行えば良いのかというと防火対象物・製造所等の事業所ごとに工事を開始する日の10日前までに届出を行いますが、着工届が必要な工事なのに着工届を届け出なかった場合は、消防設備士免状の減点対象になるので注意しましょう。

 

着工届の工事開始の基準日

着工届は工事を開始する10日前までに届出を行いますが、その工事開始の基準日とは何を指すのでしょうか?

消火設備

各設備の配管(各種ヘッド、ノズルなどを直接取り付ける配管を除く)の接続工事又は加圧送水装置などの設置工事を行おうとする日

警報設備

警報設備の受信機の設置工事を行おうとする日。ただし受信機の設置工事を伴わない場合は、感知器又は検知器を設置しようとする日。

避難器具

避難器具の取付金具の設置に関わる工事を行おうとする日。

パッケージ型消火設備

パッケージ型消火設備の格納箱の取付工事を行おうとする日。

パッケージ型自動消火設備

パッケージ型自動消火設備の放出導管(放出口を直接取り付ける放出導管を除く)の接続工事を行おうとする日。

 

着工届が必要な設備・工事の種類

甲種消防設備士が行う工事には以下の種類があります。

新設

防火対象物(新築のものを含む)に従前から設けられていない消防用設備等を新たに設けること。

増設

防火対象物に設置されている消防用設備等を、その構成機器・装置等の一部を付加すること。

移設

防火対象物に設置されている消防用設備等を、その構成機器・装置等の全部又は一部の設置位置を変えること。

取替え

防火対象物に設置されている消防用設備等を、その構成機器・装置等の一部を既設のものと同等の種類・機能・性能などを有するものに交換すること。

改造

防火対象物に設置されている消防用設備等を、その構成機器・装置等の一部を付加若しくは交換し、又は取り外して消防用設備等の構成・機能・性能などを変えることをいい、取替えに該当するものを除く。

補修

防火対象物に設置されている消防用設備等について、変形・損傷・故障部分などを元の状態又はこれと同等の構成・機能・性能などを有する状態に修復することでいわゆる「整備」のこと。

撤去

防火対象物に設置されている消防用設備等について、その全部を当該防火対象物から取り外すことをいう。

※上記☆印の工事種類は、軽微な工事の範囲部分について着工届を省略することができる(一定要件あり。)

※上記の補修と撤去の工事は着工届は必要ありません。

また着工届が必要な設備(工事整備対象設備等)は以下になります。

  • 屋内消火栓設備
  • スプリンクラー設備
  • 水噴霧消火設備
  • 泡消火設備
  • 不活性ガス消火設備
  • ハロゲン化物消火設備
  • 粉末消火設備
  • 屋外消火栓設備
  • 自動火災報知設備
  • ガス漏れ火災警報設備
  • 消防機関へ通報する火災報知設備
  • 金属製避難はしご(固定式のものに限る)
  • 救助袋
  • 緩降機
  • 総合操作盤
  • パッケージ型消火設備
  • パッケージ型自動消火設備
上記設備の部分で電源・配管・水源の部分の工事を除く

上記の設備を新設や改造する場合には必ず着工届が必要なので気を付けましょう。

また一部消防機関では上記以外の消防用設備等についても火災予防条例などで定めた独自の様式(設備等設置計画届出書など)で届出を求められるので上記以外の設備で工事を開始するときでも所轄消防へ確認しましょう。

 

着工届に添付する書類

着工届に添付する書類は設備ごとに変わりますが、共通するものは以下になります。

添付図面は折り上げでJIS A4になるように、又、縮尺は1/100が原則です。

付近見取図

防火対象物又は製造所の所在地付近の地図・略図。敷地が大きい場合が敷地内の建物配置図も添付する。

防火対象物又は製造所等の概要表

・各消防用設備の概要表

・平面図

各設備の設置に係わる階の防火区画や部屋用途を明記したもの、各設備の機器などの配置や配管・配線状況などを明記したもの。

・断面図

各設備の設置に係わる階の断面を明記したもの。

消火設備の場合

配管系統図

消火設備の構成、配管の経路、口径などを系統的に明記したもの。

配線系統図及び展開図

電線の種類や、電源系統・配線系統並びに作動順序を示す接続関係を明記したもの。

計算書

圧力損失やポンプの選定計算・消火薬剤量の算定などを明記したもの。

使用機器図

加圧送水装置・ノズル・弁・警報装置などに使用されている機器及び非常電源に係わる機器の詳細を明記したもの。

警報設備の場合

配線図

電線管の口径、配線本数、電線路の立ち上がり、警戒区域などを明記したもの。

使用機器図

受信機・感知器・検知器などの機器の詳細を明記したもの。

避難器具の場合

立面図

避難器具の設置に係わる部分の立面を明記したもの。

避難器具の設計図等

避難器具を取り付ける開口部の詳細、避難器具の取付金具および取り付ける部分の詳細を明記したもの。

計算書

避難器具の取付金具及び取り付ける部分の強度の算出方法を明記したもの。

パッケージ型消火設備の場合

配線系統図及び展開図

配線の種類及び電源系統の接続関係を明記したもの。

使用機器図

パッケージ型消火設備本体やノズル・弁などに使用されている機器の詳細を明記したもの。

パッケージ型自動消火設備の場合

放出導管系統図

パッケージ型自動消火設備の構成、放出導管の経路、口径などを系統的に明記したもの。

配管系統図

設備の構成・配管の経路・口径などを系統的に明記したもの。

使用機器図

感知部、放出口などに使用されている機器及び非常電源に係わる機器の詳細を明記したもの。

上記以外にも提出を求められる書類がある場合があるので所轄消防で確認しましょう。

また既存防火対象物の工事では付近見取図など、すでに消防機関へ提出済の図書を省略できる場合があるので確認しましょう。

 

軽微な工事の着工届の省略等

甲種消防設備士は下記にある軽微な工事を実施した場合に、その工事の内容の記録、また、

  • 試験結果報告書
  • 関係図書類(設計書、仕様書、計算書、系統図、配管・配線図、平面図、立面図、断面図などや、現場の状況を補足する資料(写真、試験データなど))

を作成、整備して防火対象物の関係者に提出することにより着工届を省略することができますが、設置届は軽微な工事でも省略できません(届出が必要)。

また軽微な工事に係る消防検査については設置届に添付された試験結果報告書、当該消防用設備等の関係図書等の確認が行われ、書類上で確認が出来れば消防検査は省略することができるのですが、所轄消防が検査に行きますといえば消防検査になります。

軽微な工事については、甲種消防設備士による適切な工事を前提に、着工届及び消防検査の簡素化が図られたものであることから、消防設備士の業務独占に係る工事以外の工事についてはここに言う運用の対象外になります。

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軽微な工事の範囲

消火設備

屋内・屋外消火栓

増設

消火栓箱は2基以下で既設と同種類のものに限る。
・加圧送水装置等の性能(吐出量・揚程)、配管サイズ及び警戒範囲に影響を及ぼさないものに限る。

移設

・消火栓箱は同一の警戒範囲内での移設に限る。

取替

・加圧送水装置を除く構成部品。

スプリンクラー設備

増設

・SPヘッドは5個以下で、既設と同種類のもので、かつ、散水障害がない場合に限る。
・加圧送水装置等の性能(吐出量・揚程)、配管サイズに影響を及ぼさないものに限る。
・補助散水栓は2個以下で既設と同種類のものに限る。

移設

・ヘッドは5個以下で防護範囲が変わらない場合に限る。
・補助散水栓は同一警戒範囲内での移設に限る。

取替

・加圧送水装置、減圧弁、圧力調整弁、一斉開放弁を除く構成部品。

水噴霧消火設備

増設

・ヘッドは既設と同種類のもので、かつ、1の選択弁において5個以内。
・加圧送水装置等の性能(吐出量・揚程)、配管サイズ及び警戒範囲に影響を及ぼさないものに限る。

移設

・ヘッドは1の選択弁において2個以下。
・手動起動装置は同一放射区域内で、かつ、操作性に影響のない場合に限る。

取替

・加圧送水装置、減圧弁、圧力調整弁、一斉開放弁を除く構成部品。

泡消火設備

増設

・ヘッドは既設と同種類のもので、1の選択弁において5個以内。
・加圧送水装置等の性能(吐出量・揚程)、配管サイズ及び警戒範囲に影響を及ぼさないものに限る。

移設

・ヘッドは1の選択弁において5個以下で、警戒区域に変更のない範囲。
・手動起動装置は同一放射区域内で、かつ、操作性に影響のない場合に限る。

取替

・加圧送水装置(制御盤含む)、泡消火薬剤混合装置、減圧弁、圧力調整弁を除く構成部品。

不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備

増設

・ヘッド・配管(選択弁の二次側に限る)は既設と同種類のもので、5個以下で薬剤量、放射濃度、配管のサイズなどに影響を及ぼさないものに限る。
・ノズルは既設と同種類のもので、5個以下で薬剤量、放射濃度、配管のサイズなどに影響を及ぼさないものに限る。
・移動式の消火設備は既設と同種類のもので、同一室内に限る。
・制御盤・操作盤などの電気機器で起動用ガス容器、操作管、手動起動装置、火災感知器、放出表示灯、スピーカー、ダンパー閉鎖装置、ダンパー復旧装置は既設と同種類のもので、同一室内で、かつ、電源容量に影響を及ぼさないものに限る。

移設

・ヘッド、配管(選択弁の二次側に限る。)は5個以下で、放射区域の変更のない範囲。
・ノズルは5個以下で、放射区域の変更のない範囲。
・移動式の消火設備は同一室内に限る。
・制御盤・操作盤などの電気機器で起動用ガス容器、操作管、手動起動装置、火災感知器、放出表示灯、スピーカー、ダンパー閉鎖装置、ダンパー復旧装置は同一室内で、かつ、電源容量に影響を及ぼさないものに限る。

取替

・すべての構成部品(放射区域に変更のないものに限る。)

警報設備

自動火災報知設備

増設

・感知器は既設と同種類のもので、10個以下。
・発信機、ベル、表示灯は既設と同種類のもので、同一警戒区域内に限る。

移設

・10個以下で、警戒区域に変更のない場合に限る。
・発信機、ベル、表示灯は同一警戒区域内に限る。

取替

・感知器は10個以下。
・受信機、中継器は7回線を越えるものを除く。
・発信機、ベル、表示灯

ガス漏れ火災警報器

増設

・検知器は既設と同種類のもので、5個以下で警戒区域に変更がない場合に限る。

移設

・5個以下で警戒区域に変更がない場合に限る。

取替

・受信機を除く。

避難器具

金属製避難はしご(固定式のものに限る)・救助袋・緩降機

増設

・該当なし

移設

・本体、取付金具は同一階で、かつ、設置時と同じ施工方法に限る。

取替

・標識
・本体、取付金具は設置時と同じ施工方法に限る。

 

まとめ

最後までご覧いただきありがとうございます。

今回から着工届シリーズをやっていこうと思いますが、みなさんは着工届をちゃんと提出していますか?

つい先日、うちの相方が自火報の改修工事で感知器増設4個、移設8個、取替3個の工事を行いました。合計数が10個を超えているのにうっかり着工届を出し忘れていて、工事が終わって設置届を出しに行ったら着工届が必要だと指摘されて、消防に怒られていました。

改修工事なんかだと、最初は移設5個だから〜と言われて軽微な工事の範囲内だなぁなんて思っていたら、あとからここ移設〜、ここ増設〜とかがあるので、気がつくと軽微な工事の範囲を超えているなんてのがよくあります。

なので、改修工事が始まるときにとりあえず着工届を出しておけば後々困らなくて済みます。施主のハンコもいらないですし、甲種消防設備士のハンコだけあれば提出できますので。

本日の合言葉「着工届はとりあえず出しておこう!」

 

 

 

 

 

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消防法第17条の14

甲種消防設備士は、第十七条の五の規定に基づく政令で定める工事をしようとするときは、その工事に着手しようとする日の十日前までに、総務省令で定めるところにより、工事整備対象設備等の種類、工事の場所その他必要な事項を消防長又は消防署長に届け出なければならない。

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消防法施行令第36条の2

第十七条の五の政令で定める消防用設備等又は特殊消防用設備等の設置に係る工事は、次に掲げる消防用設備等(第一号から第三号まで及び第八号に掲げる消防用設備等については電源、水源及び配管の部分を除き、第四号から第七号まで及び第九号から第十号までに掲げる消防用設備等については電源の部分を除く。)又は必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等若しくは特殊消防用設備等(これらのうち、次に掲げる消防用設備等に類するものとして消防庁長官が定めるものに限り、電源、水源及び配管の部分を除く。次項において同じ。)の設置に係る工事とする。
一 屋内消火設備
二 スプリンクラー設備
三 水噴霧消火設備
四  消火設備
五 不活性ガス消火設備
六 ハロゲン化物消火設備
七 粉末消火設備
八 屋外消火設備
九 自動火災報知設備
九の二 ガス漏れ火災警報設備
十 消防機関へ通報する火災報知設備
十一 金属製避難はしご(固定式のものに限る。)
十二 救助袋
十三 緩降機
2 法第十七条の五の政令で定める消防用設備等又は特殊消防用設備等の整備は、次に掲げる消防用設備等又は必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等若しくは特殊消防用設備等の整備(屋内消火設備の表示灯の交換その他総務省令で定める軽微な整備を除く。)とする。
一 前項各号に掲げる消防用設備等(同項第一号から第三号まで及び第八号に掲げる消防用設備等については電源、水源及び配管の部分を除き、同項第四号から第七号まで及び第九号から第十号までに掲げる消防用設備等については電源の部分を除く。)
二 消火器
三 漏電火災警報器

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消防法施行規則第33条の18

法第十七条の十四の規定による届出は、別記様式第一号の七の工事整備対象設備等着工届出書に、次の各号に掲げる区分に応じて、当該各号に定める書類の写しを添付して行わなければならない。
一 消防用設備等 当該消防用設備等の工事の設計に関する図書
二 特殊消防用設備等 当該特殊消防用設備等の工事の設計に関する図書、設備等設置維持計画、法第十七条の二第三項の評価結果を記載した書面及び法第十七条の二の二第二項の認定を受けた者であることを証する書類