皆さんこんにちわ。
筆者が昔務めた消防設備業の会社で「屋内消火栓の放水試験は直近と最遠で試験」と教わった「2基同時放水試験」ですが、何の法令を基にどのように直近と最遠なのかと疑問に思ったので解説していこうと思います。
まずポンプの確認から
まずは当該防火対象物に設置されている加圧送水装置について確認すると、以前に公開した「屋内消火栓設備の技術基準その1」の記事でも解説していますが、屋内消火栓設備の設置を要する防火対象物(又はその部分)において1つの階に設置される屋内消火栓の個数によりポンプの吐出量を選定しますが、これは消防法施行規則第12条第1項第7号ハ(イ)の規定に
ポンプの吐出量は、屋内消火栓の設置個数が最も多い階における当該設置個数(設置個数が二を超えるときは、二とする。)に百五十リットル毎分を乗じて得た量以上の量とすること。
となっていますので設置台数が最も多い階で屋内消火栓が1基しか設置されていない防火対象物(又はその部分)であればポンプの吐出量は150ℓ/minになります(図A参照)。
逆に設置台数が最も多い階に2基以上の屋内消火栓が設置されていればポンプの吐出量は150ℓ/minに2を乗じて300ℓ/minになります(図B参照)。
まずはこれらを踏まえて次に行きます。
放水圧力と放水量について
それでは「放水圧力と放水量」について確認しましょう。
これらについては消防法施行令第11条第3項第1号ニに規定があり
屋内消火栓設備は、いずれの階においても、当該階のすべての屋内消火栓(設置個数が二を超えるときは、二個の屋内消火栓とする。)を同時に使用した場合に、それぞれのノズルの先端において、放水圧力が〇・一七メガパスカル以上で、かつ、放水量が百三十リットル毎分以上の性能のものとすること。
となっており、いずれの階においても当該階のすべての屋内消火栓と規定されていますので、1つの階を基準として階をまたいでの消火栓使用は規定していないことになります。
それは仮に3階で火災が発生した場合に、3階の屋内消火栓を使用して消火活動を行いますが、基本的に5階の屋内消火栓は使わないですよね。
また「設置個数が2を超える時には2個の屋内消火栓とする」の部分も、仮に3階に屋内消火栓が10基設置されていても同時に使用を想定しているのは3階における2基の屋内消火栓ということになります。
屋内消火栓設備の試験基準
それでは屋内消火栓の試験基準ではどう規定されているのでしょうか?
(一財)日本消防設備安全センターが発行している「消防用設備等試験実務必見」の屋内消火栓の放水試験の項目では
放水圧力が最も低くなると予想される箇所で、規定個数の屋内消火栓を同時に使用した場合及び放水圧力が最も高くなると予想される箇所の消火栓1個を使用した場合のそれぞれのノズルの先端における放水圧力及び放水量を測定する。
と記載されています。
この項目でも「規定個数の屋内消火栓を同時に使用した場合~」となっていますので、消防法施行令第11条第3項第1号ニの規定に従って、1つの階を基準として屋内消火栓(2基以上ある場合は2基)を同時に放水試験するとなっています。
同時放水ができない場合について
2基同時放水の場所選定
まとめ
- ポンプの吐出量選定には1号消火栓の設置個数により150ℓ/min or 300ℓ/minになる。
- 屋内消火栓の放水圧力と放水量は1つの階におけるすべての屋内消火栓(2基を超えるときは2基)にて確認を行う(階をまたいでの試験は規定していない)。
- 試験基準は
- 最も放水圧力が低くなると予想される箇所における同一階の屋内消火栓2基を用いて同時放水試験を行う
- 最も放水圧力が高くなると予想される箇所の1基の屋内消火栓にて放水試験を行う
- 屋内消火栓の設置台数が最も多い階が1基の防火対象物(ポンプ吐出量が150ℓ/min)において階をまたいで同時放水をすると放水圧力と放水量が不足する
上記になります。