消防設備士4類の試験対策 差動式感知器の規格編

この記事は約11分で読めます。

皆さんこんにちは。

今回は消防設備士4類の試験対策「規格に関する部分」における感知器や発信機の種類、構造及び機能について「差動式感知器」の部分を解説していきます。

本当は差動式と定温式と熱複合式、アナログ式を1つの記事でまとめたかったのですが、そうするとかなり長くなってしまうので「差動式感知器」と「定温式とその他」の2記事に分けました。

重要な所や覚えたい所は重要度や赤文字アンダーラインを引いていますので参考にしてください。

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感知器の概要

感知器とは熱や煙などを感知して、その信号(火災信号という)を受信機と呼ばれる火災信号を受信する機械へ送ることにより、受信機が火災信号を警報信号(非常ベル等を鳴らすための信号)に変換して受信機のブザー(主音響装置という)と館内の非常ベル(地区音響装置という)を鳴らし館内の人へ火災を報知する(知らせる)もので、感知器は火災の時にONになる一種のスイッチみたいなものだと思っていただければ良いと思います。

自動火災報知設備の作動概要

また自動火災報知設備に用いられる感知器には以下の表のようなものがあり、熱式・煙式・炎式の3つに分類されます。

感知器の種類

熱式には

  • 差動式
  • 定温式
  • 複合式
  • アナログ式

があり、煙式には

  • イオン化式
  • 光電式
  • 煙複合式
  • アナログ式(イオン化式・光電式)

があり、炎式には

  • 紫外線式
  • 赤外線式
  • 炎複合式

があり、ここで覚えておきたいのは各感知器の種類とスポット型及び分布(分離)型の有無です。

ちなみに熱感知器は熱を感知して作動し、火災信号を受信機へ送信するもので、熱の感知方法や種類にはいろいろな方法が用いられているのでそれぞれ解説していきます。

差動式スポット型感知器

差動式とは温度の差で作動するという事からきているもので、感知器の周囲温度が一定量以上の割合になった場合(いわゆる急激な温度変化の場合)に作動する方式の感知器のことを言います。

定義としては

周囲の温度の上昇率が一定の率以上になった時に火災信号を発信するもので一局所の熱効果により作動するもの

となっていて、この定義文は虫食い問題で良く出題されますので覚えておきましょう。

例えば差動式スポット型感知器の2種という感度の感知器であれば、1分間に15℃の割合で直線的に上昇する水平気流を受けた時に4分30秒以内に作動しなければならないと省令※1で決められています

またこの差動式感知器にはスポット型と分布型があり、

  • スポット型というのは定義文の通り「一局所」という意味で、感知器が設置されている場所の限定された部分の周囲温度を感知する方式のもの
  • 分布型というのは体育館のような広い空間の熱の温度変化を監視するもので広範囲の熱を感知する方式のもの

またスポット型において温度を感知する方式も

  • 空気の膨張力を利用したもの
  • 温度検知素子を利用したもの
  • 熱起電力を利用したもの

これらにもそれぞれ特徴がありますのでまずは空気の膨張力を利用した感知器から解説していきます。

それぞれの方式における作動原理・各部品の名称・部品の役割は覚えておきたい部分です。

空気の膨張力を利用したもの

まずは空気の膨張力を利用した感知器から解説していきますが、このタイプの感知器は熱感知器の中で非常に良く使われている感知器で良く見かけます。

空気の膨張力を利用した差動式スポット型感知器の例

空気の膨張力を利用した感知器の構造イメージ

空気の膨張力を利用した感知器の断面

この感知器は上図のような構造をしていて

  • 空気室(火災の熱を受けて空気を膨張させる部分で感熱室とも言う)
  • ダイヤフラム(空気室の空気の膨張を受けて膨らみ接点を押す)
  • リーク孔(膨張した空気の一部を逃がして誤作動を防止する)
  • 接点(感知器線と共通線をくっつける一種のスイッチみたいなもの)

これらの部品から構成されている感知器で、試験問題ではこれら部品の名称と役割を回答させる問題が良く出題されますので覚えておきましょう。

では感知器の作動原理を解説していきます。

作動原理としては下図のように火災の熱を空気室が受けて空気室内部の空気が膨張した時に一部の空気はリーク孔から逃げますが、逃げる量よりも膨張の方が大きいとダイヤフラムを押し上げて接点がくっついて+とーが短絡して火災信号を送出するという原理になります。

空気の膨張力を利用した感知器の作動原理のイメージ

ただし日常的にある緩やかな温度上昇(暖房使用など)の場合は、空気室内部の膨張した空気の一部がリーク孔から逃がすことによりダイヤフラムが接点を閉じるほど膨張しないため作動しないという仕組みになっていますので誤作動(非火災報ともいう)を防いでいます。

 

温度検知素子を利用したもの

温度検知素子とは温度が変化した際に温度検知素子の抵抗値が変化するという性質を持つ半導体のことでサーミスタとも呼ばれており、この性質を利用して火災の温度変化を検出する仕組みになっていて、一般家庭にある電子式温度計の先っぽにも利用されている身近なものがサーミスタです。

温度検知素子を利用した感知器の例

温度検知素子を利用した感知器の例

温度検知素子を利用した差動式感知器の構成イメージ

上図の様にサーミスタが温度変化を受けた時の温度上昇率が設定された温度上昇率と比較して大きければ火災と判断して検出回路が働いてスイッチング回路を作動させ火災信号を受信機へ送るという構造になっていていますので、温度上昇が緩やかな場合(温度上昇率が低い場合)は検出回路は作動しない様になっています。

この感知器は構造的に密閉構造(防水仕様)にできるので、水蒸気の多い所や結露が発生しやすい場所へ設置が可能な感知器です。

 

熱電対(熱起電力)を利用したもの

熱電対とは異なる性質の金属の両端をつないだもののことで、代表的な熱電対に「鉄」と「コンスタンタン」と言う金属を用いたものがあり、この金属に温度差を与えると金属間に電力が発生するという性質(ゼーベック効果という)を利用して、その起電力をメーターリレーと呼ばれる部分が感知して接点を閉じて火災信号を送出する仕組みになっています。

熱電対(熱起電力を利用した感知器の構成イメージ

 

差動式分布型感知器

差動式分布型は先ほどの差動式スポット型とは違い広範囲の火災を感知することができる感知器のことで、定義文は

周囲の温度の上昇率が一定の率以上になった時に火災信号を送出するもので、広範囲の熱効果の累積によって作動するものである

となっていますので、先ほどのスポット型と同じく覚えておきたい所です。

また熱を感知する方式として

  • 空気の膨張力を利用した「空気管式」
  • 熱起電力を利用した「熱電対式」
  • 半導体を利用した「熱半導体式」

の3つがありますのでそれぞれ解説していきます。

 

空気管式

正式名称は「差動式分布型感知器 空気管式」

これは「空気管」と呼ばれる銅でできたパイプを天井等に張り巡らして、広範囲の温度変化を感知して火災信号を送出するものですが、動作原理はスポット型の時と同じで、空気管内部の空気が火災による熱を受けて膨張し、それが検出器と呼ばれる機器のダイヤフラムを押し上げることにより接点が閉じて火災信号を送出します。

先ほど解説した差動式スポット型感知器の空気膨張を利用する感知器の空気室(感熱室)を空気管に置き換えればわかりやすいかと思います。

この空気管式は広い空間(体育館や倉庫など)の火災感知に非常に多く用いられている感知器で、筆者の割合的には空気管式9・熱電対式1くらいの感覚です。

差動式分布型感知器(空気乾式)の検出部の例

空気管式を用いた分布型の構成イメージ

上図にある各部品

  • ダイヤフラム
  • リーク孔
  • 接点
  • コックスタンド(回路切替部)
  • コックハンドル(回路を切替える為のレバー)
  • 試験孔(テストポンプを接続して空気管の試験を行う部分)

の名称は覚えておきましょう。

また空気管の規格である

  • 外径は1.94mm以上
  • 厚みは0.3mm以上
  • 空気管は1本(継ぎ目がないもの)の長さが20m以上で、内部及び肉厚が均等であり、その機能に有害な影響を及ぼす恐れのある傷・割れ・ねじれ・腐食等を生じないこと

これらも空気管式の動作原理と一緒に覚えておきたいところです。

語呂合わせで覚えるなら「空気管おっさん0.3mm行くよ1.94mm20m1本の長さ以上」でどうでしょうか?

ちなみにコックハンドルを切替えることにより以下の試験を行なうことができます。

  1. 通常監視位置(いわゆる定位置)
  2. 作動試験
  3. 流通試験
  4. 接点水高試験

これらの試験の詳細は「自動火災報知設備の試験・点検」編で解説しますので、今回は試験名称だけ軽く覚えておけばOKです。

 

熱電対式

正式名称は「差動式分布型感知器 熱電対式」

これは差動式スポット型感知器の時に解説した「熱電対(熱起電力)を利用したもの」と原理が同じものでゼーベック効果を利用しており、感知器の中にあった熱電対が空気管のように外へ出てきたものと思っていただければわかりやすいかと思います。

差動式分布型感知器(熱電対式)の検出器の例

熱電対の例

差動式分布型感知器 熱電対式の構成イメージ

上図の様に熱電対式では熱電対と呼ばれる異種金属をつなぎ合わせたもの(鉄とコンスタンタンなど)を天井等に設置して、火災により温度が上昇した場合に熱電対がその熱により微弱な電力を発生させ、その電力を検出器のメーターリレーが感知して、電力が一定以上になると接点を閉じて火災信号を送出する仕組みになっています。

最近の検出器ではメーターリレーに代わりに電子制御素子(SCRという)を用いているものもあります。(上の写真の検出器はメーターリレーを使用)

もちろん緩慢な温度上昇では熱電対の起電力が一定値以下になるのでメーターリレー(又はSCR)は作動しません。

 

熱半導体式

正式名称は「差動式分布型感知器 熱半導体式」

作動原理は差動式スポット型感知器の熱起電力を利用するものとほぼ同じで、感熱部と呼ばれるものの中に熱半導体素子が入っており、これが火災で温度上昇を受けた時に電力を発生(起電力)してその電力を検出器内部のメーターリレーが感知して一定以上の電力になったら接点を閉じて火災信号を送る仕組みになっています。

差動式分布型感知器 熱電対式の構成イメージ

この感知器も温度上昇が緩慢な場合には起電力が低いのでメーターリレーは作動しない仕組みになっています。

 

まとめ

最後までご覧頂きありがとうございます。

今回は消防設備士4類の試験対策として差動式感知器の規格について

  • 感知器の概要
  • 差動式感知器の概要
  • 差動式スポット型感知器の種類と特徴
  • 差動式分布型感知器の概要
  • 差動式分布型感知器の種類と特徴

これらについて解説させていただきました。

この記事で覚えておきたい所は

  • 感知器の種類(差動式・定温式・光電式・イオン化式など)
  • 差動式スポット型感知器の定義と作動原理
  • 差動式スポット型感知器の熱感知方式(空気膨張式・温度検知素子・熱電対式)
  • 各感知方法ごとに使用されている部品の名称及び役割(ダイヤフラム、リーク孔など)
  • 差動式分布型感知器の定義と作動原理
  • 差動式分布型感知器の熱感知方式(空気管式・熱電対式・熱半導体式)
  • 各感知方法ごとに使用されている部品の名称及び役割(コックハンドル、試験孔など)

特に赤文字とアンダーラインが引いてあるところは要確認です。

熱感知器(定温式その他)と煙感知器の規格について確認したい方は下記のリンクより確認できます。

 

 

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※1 省令  …  火災報知設備の感知器及び発信機の係る技術上の規格を定める省令のこと