機能従属とみなし従属について

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皆さんこんにちは。

前回の「収容人員の算定」の記事でも少し触れましたが、防火対象物の用途を決めるのに政令別表第一を考慮して決定しますが、その時にこの機能従属やみなし従属といった防火対象物に附随する部分の取扱いについて規定された決まり事があります。それではこの機能従属とみなし従属とはいったいどんな規定なのでしょうか?

ちなみに政令別表第一ってなに?って方は下記の記事を参照してください。

防火対象物とは
この記事では消防用設備には欠かせない防火対象物(政令別表第一の用途一覧)についてや、特定防火対象物と非特定防火対象物の違いなどについて詳細に説明・解説しています。また3項イとロの違いについて、6項における細分化についても記載しています

 

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防火対象物の用途選定の原則

まずは基本からおさらいしていきます。

防火対象物の用途を決定するには、政令別表第一の各項(各用途)を1項から順に追っていけば、どれかの項に該当する(1項〜14項に該当しなければ15項)というわけです。

ですが、1つの防火対象物でも用途が別れているものも存在します。

例えば3階建てのビル(令8区画などは考慮しない)があり、1階は駐車場(13項・イ)、2階は事務所(15項)、3階は食堂(3項・ロ)とします。それぞれ独立した用途(管理権限が別)であれば、この防火対象物は複合用途防火対象物(16項・イ)になります。

ですが、この3階建てのビルが管理権限がすべて同じで、1階の駐車場と3階の食堂が2階事務所の従業員の為の施設だとしたら、機能従属として捉えてこのビルは15項として運用することが出来るかもしれません。では機能従属として運用できる条件などを見て行きましょう。

令8区画について詳しくは下記の記事を参照してください。

令8区画とは?
この記事では消防法施行令第8条(通称、令8区画)についてお話しています。令8区画の概要(どのようなものを指すのか?)、令8区画を形成するのに必要な構造や貫通部(貫通して良いものと貫通部の処理方法など)について詳しく解説しています。

 

機能従属として運用できる場合。

元々は消防法施行令第1条の2第2項のただし書き

「異なる2以上の用途のうちに、1の用途で、当該1の用途に供される防火対象物の部分がその管理についての権原、利用形態その他の状況により他の用途に供される部分の従属的な部分を構成すると認められるものがあるときは、当該1の用途は、当該他の用途に含まれるものとする」

という文章があり、それを詳しくしたのが「令別表第1に掲げる防火対象物の取り扱いについて (昭和50年4月15日消防予第41号消防安第41号) 」という通知で、この通知の中に詳しく条件が記されています。

その条件が下記に掲げる、当該防火対象物の主たる用途に供される部分に機能的従属していると認められる用途に供される部分が、

  1. 当該従属的な部分についての管理権原を有する者が主たる用途に供される部分の管理権原を有する者と同一であること。
  2. 当該従属的な部分の利用者が主たる用途に供される部分の利用者と同一であるか又は密接な関係を有すること。
  3. 当該従属的な部分の利用時間が主たる用途に供される部分の利用時間とほぼ同一であること。

上記の要件で機能的従属となるのですが、なんだかわかりずらいので要約すると

  1. 主用途と従属用途の管理権限(所有者や使用者のこと。社長・オーナーなど)が同じである。
  2. 従属用途を使用する人物が、主用途を使用する人物と同じか、関係が非常に近い人物の場合。
  3. 主用途と従属用途の使用される時間(営業時間など)がほぼ同じである場合。

これらの要件を満たす場合は機能従属として運用できるということになります。

下記の図で説明します。

機能従属の例

この図で、左側の防火対象物は地下の駐車場と5階の事務所、1階~4階の物品販売店とはそれぞれ無関係なので、防火対象物の用途は複合用途防火対象物(16項・イ)になります。

ですが右側の防火対象物では、地下駐車場を含むすべての用途が同一管理権限、同一使用者、同一使用時間の要件を満たしているので、防火対象物は4項(物品販売店)の取扱いになります。

これが機能従属になります。

 

みなし従属として運用できる場合。

機能従属では管理権限や営業時間などの項目がありましたが、みなし従属ではそのような項目は無く、防火対象物の主たる用途の床面積と、みなし従属としたい用途の床面積の割合で決定されますので確認していきましょう。

  1. 主たる用途に供される部分の床面積の合計(他の用途と共用される廊下、階段、通路、便所、管理室、倉庫、機械室等の部分の床面積は、主たる用途に供される部分及び他の独立した用途に供される部分のそれぞれの床面積に応じ按分するものとする。以下同じ。)が当該防火対象物の延べ面積の 90 パーセント以上である。
  2. 当該主たる用途以外の独立した用途に供される部分の床面積の合計が 300 平方メートル未満である場合における当該独立した用途に供される部分(政令別表第1(2)項ニ、(5)項イ・(6)項イ(1)から(3)・(6)項ロ、又は(6)項ハに掲げる防火対象物(利用者を入居させ、又は宿泊させるものに限る。)の用途に供される部分を除く。)

これもよくわからないので要約します。

  1. 防火対象物で主用途に使われる部分の床面積(共用部の廊下・トイレなどの床面積は主用途と従属用途で按分して算定する。)の合計が、防火対象物の述べ面積の90%以上である場合。
  2. 従属用途に使用される部分の床面積の合計が300㎡未満であり、かつ、その従属用途の用途が政令別表第一の2項二・5項イ・6項イ(1)~(3)・6項ロ・入居や宿泊を伴う6項ハ以外の用途の場合。

上記の要件を満たす場合にみなし従属として取り扱うことが出来ます。

これも文章だけでは分かりづらいので下記の図を参照してください。

みなし従属の例

この図で、左側の防火対象物は1階~5階が事務所(15項)で6階に物品販売店(4項)が存在していますが、みなし従属の要件を満たしていないので複合用途防火対象物(16項・イ)になります。

ですが右側の防火対象物では6階に物品販売店が1/3存在していますが、みなし従属の要件(床面積が300㎡未満など)を満たしているので、防火対象物は15項(事務所)の取扱いになります。

これが機能従属になります。

 

 

一般住宅が存在する防火対象物の取扱い

また、防火対象物の中に一般住宅が存在する場合の取り扱いについても記載がありますので説明させていただきます。

ちなみに一般住宅とは「個人の住居の用に供されるもので寄宿舎、下宿及び共同住宅以外のものをいう。」と規定されています。要するに個人の住宅であって、政令別表第一5項ロに該当しないものを指しています。

  1. 政令別表対象物の用途に供される部分の床面積の合計が一般住宅の用途に供される部分の床面積の合計よりも小さく、かつ、当該令別表対象物の用途に供される部分の床面積の合計が50㎡以下の場合は、当該防火対象物は一般住宅に該当する。
  2. 令別表対象物の用途に供される部分の床面積の合計が一般住宅の用途に供される部分の床面積の合計よりも大きい場合又は令別表対象物の用途に供される部分の床面積の合計が一般住宅の用途に供される部分の床面積の合計よりも小さく、かつ、当該令別表対象物の用途に供される部分の床面積の合計が 50㎡を超える場合は、当該防火対象物は令別表対象物又は複合用途防火対象物に該当する。
  3. 令別表対象物の用途に供される部分の床面積の合計が一般住宅の用途に供される部分の床面積の合計とおおむね等しい場合は、当該防火対象物は複合用途防火対象物に該当する。

これもよくわからないので図で説明します。

一般住宅の取扱いの例

 

まとめ

最後までご覧いただきありがとうございます。

今回の記事を簡単にまとめると

機能従属は、管理者等が同じで、使用者・使用時間が同一の場合に認められる。

みなし従属は、防火対象物の主用途の床面積が90%以上で、従属用途の床面積が300㎡未満の場合に認められる。

一般住宅は

  1. 一般住宅が他用途より大きくて他用途が50㎡以下なら一般住宅。
  2. 一般住宅より他用途が大きい場合、又は一般住宅より他用途が小さいが床面積が50㎡を超える場合は、他用途若しくは複合用途防火対象物。
  3. 一般住宅と他用途がほぼ同じ大きさなら複合用途防火対象物。

と覚えましょう。

私の周辺でもこの機能従属じゃないの?という物件が多いです。特に自動車整備工場(有名ディーラー)(ショールームと整備工場併設)で、A市とB市は16項イで運用され、C市では12項イで運用されています。どちらも同じようなディーラー整備工場です。私的には12項イの運用で十分じゃないかと思います。同じ権限、同じ使用者、同じ営業時間ですので機能従属で良いのでは?と思います。これがよく言われる「所轄消防署による」といわれる所以です。

 

 

 

 

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消防法施行令第1条の2第2項のただし書き

防火管理者を定めなければならない防火対象物等の規定の中に、機能従属とみなし従属と一般住宅の取扱いについての原文が記されている部分。