皆さんこんにちは。
先日気温が一気に上がり軽い熱中症になりダウンしていました。気温が上がり暖かくなるのはありがたいのですが、よもやの熱中症で大変でした。今回の記事は泡消火設備についてお話させて頂きます。
泡消火設備とは?
消火栓やスプリンクラーと違い、消火するのにただの水が出るわけではなく、水槽の水と泡消火薬剤の原液を混合器(プロポーショナー)により指定濃度混合した泡水溶液(3%とか6%)に、空気取り入れ口から空気を取り入れ発生させた泡で消火を行うので、普通火災のみならず油火災にも絶大な効果があります。
また泡で消火するので、火災を泡で覆っての窒息効果、泡の水分による冷却効果、油面を泡で覆っての可燃性蒸気の揮発抑制効果等が期待できます。
上記でも説明しましたが油火災に絶大な消火効果があるので、ヘリポート、駐車場やその車路、飛行機格納庫、指定可燃物や危険物施設(可燃性液体等)などに設置されています。この泡消火設備にはどんな種類があるのでしょうか?
泡消火設備の種類
泡消火設備は泡水溶液の混合方式と放出方式に種類があります。
泡水溶液の混合方式
泡消火設備は泡を放出するのに水と泡消火薬剤の原液を混合して泡水溶液を作りますが、この混合方式が4種類あります。ちなみに泡消火薬剤は国家検定品で以下の3種類があり、水に混合する薬剤濃度により3%型と6%型がある。
- たん白泡消火薬剤(たん白質を加水分解したものを基剤とする泡消火薬剤)
- 合成界面活性剤泡消火薬剤(合成界面活性剤を基剤とする泡消火薬剤)
- 水成膜泡消火薬剤(合成界面活性剤を基剤とする泡消火薬剤で、油面上に水成膜を生成するもの)
プレッシャープロポーショナー方式
ポンプからの送水管の途中に泡消火薬剤混合装置(ベンチュリー効果により流水中に泡消火薬剤を吸い込む比率混合器)と置換吸込器を接続して送水の一部を貯水槽に送り込み泡消火薬剤の置換と吸い込み作用により指定濃度の泡水溶液を作る方式です。
この貯蔵槽にはダイヤフラム(ラバーパック)が入っているものと入っていないものがありますが、最近のものはほとんどがダイヤフラム入りになっています。
このダイヤフラム(ラバーパック)が内部で破けているかいないか、またダイヤフラム内の泡消火薬剤の原液の量がどのくらい入っているかですが、貯蔵槽(タンク)の内部のことなので目視では確認出来ない部分があります。
ですが、ダイヤフラム外部(内部)に入っている水を全部抜けば両方わかります。ダイヤフラムの外部に水が入っている状態では正確な泡消火薬剤原液の量がわかりません。
なぜならダイヤフラム外部の水がダイヤフラムを押していて、泡消火薬剤原液の液面が正確ではないからです。なのでダイヤフラム外部の水をゆーーーっくり抜きながらタンク上部のエア抜き弁を開けて空気をタンク内に入れ、タンク内部をダイヤフラムと泡消火薬剤のみにします。(急激に水を抜くとダイヤフラムが破けます。)
この状態で泡消火薬剤原液側のエア抜き弁を開き貯蔵タンク内を大気圧にしてから、検尺棒などを用いて泡消火薬剤量を液面とタンク容量から計算し(目盛りがある場合は目盛りで)原液量を確認します。またこの時にダイヤフラム外部(内部)の水の排水部分から泡消火薬剤原液が出てこなければダイヤフラムは破けていないことがわかります。
上記確認ができたら排水弁を閉めてダイヤフラム外部に水を張りますが、空気が残留しないようにタンク上部のエア抜き弁(水側と薬剤側)を開けた状態で充水して、エア抜き弁から水と薬剤が出てくるまで充水し、エア抜き弁を閉じます。
あとはダイヤフラムの内部と外部の圧力を均等にしておけばダイヤフラムにストレスがかからないので破損を防げます。ちなみに上記の方法はあくまでも一例なので設置してある貯蔵タンクのメーカーの指定方法で行って下さい。
ダイヤフラムなしのプレッシャープロポーショナー方式では、貯蔵槽の中で泡消火薬剤が水との接触面で希釈されるため、その分の薬剤量を加えて貯蔵しなければならないので注意が必要です。
※ベンチュリー効果…配管内の流体の流速に変化をつける(配管の太さを絞るなど)ことにより圧力の高低を発生させることができる技術のこと。
プレッシャーサイドプロポーショナー方式
送水管の途中に泡消火薬剤混合器を設け、泡消火薬剤送液ポンプで泡消火薬剤を圧入して、指定濃度の水溶液を作成する方式で、泡消火薬剤の貯蔵量が多い大規模設備(石油コンビナート等)に適しています。
この混合方式には調圧するための等圧弁、圧力バランス弁などが使われます。ちなみにこの方式には押し込み方式と逃し方式がある。
ポンププロポーショナー方式
ポンプの吐出側と吸水側の間に混合器を取り付けたバイパス管を設けて流水し、泡消火薬剤を吸引し、加圧送水装置の吸引側で指定濃度の泡水溶液を作成する方式です。
またこの方式ではポンプの吸込側の圧力が常にゼロか負圧でなくてはならない。わずかでも吸込側の圧力がプラスだと泡消火薬剤の吸引が減少して貯蔵槽側へ水が逆流する恐れがあります。
ラインプロポーショナー方式
加圧送水装置と泡放出口とを連結する配管の途中に混合器を設け、発生する負圧により泡消火薬剤を吸引し、指定濃度の泡水溶液を作成する方式です。この方式は泡ノズルを使用する移動式には使用出来ません。
設備の種類
泡には低発泡(泡の膨張比が20以下の泡)と高発泡の泡(泡の膨張比が80〜1000未満の泡)があり、高発泡の泡を放出する方式として全域放出方式と局所放出方式があり、消防法第17条関係の低発泡の泡放出口には、泡ヘッド(ーフォームヘッドとフォーム・ウォーター・スプリンクラーヘッド)と泡ノズル、高発泡の泡放出口には、高発泡用泡放出口が使用されます。
移動式泡消火設備は火災発生時、著しく煙が充満するおそれのある場所には設置できません。
※泡の膨張比→発生した泡の体積を泡水溶液の体積で除いた値
泡消火設備の構成機器
この構成部品ですが、前に「スプリンクラーの付属機器とは?」の記事で解説したものと重複するものもありますが再度解説させて頂きます。
「スプリンクラーの付属機器とは?」の記事は下記から御覧いただけます。
泡放出口
泡放出口には低発泡用の泡ヘッド(フォームヘッド・フォームウォータースプリンクラーヘッド)と高発泡用の泡放出口(アスピレート型・ブロアー型)がある。一般的な発泡方法は、圧送された泡水溶液をオリフィス又はノズルから噴出させながら空気を吸引し、デフレクターまたは網に当てて泡を作るか、発泡室で泡を作る構造になっています。
泡ヘッド
この泡ヘッドに指定濃度の泡水溶液を流すとヘッドの空気吸込口から空気が入り泡水溶液と混じって泡が放出されます。フォームヘッドとフォーム・ウォーター・スプリンクラーヘッドの2種類があります。
フォームヘッド
- デフレクターに当てて発泡した泡をさらに金網で分散させます。
- ヘッド1つの放射量は泡消火薬剤やメーカーにより異なるがだいたい次の通りです。
たん白泡・60㍑/分、合成界面活性剤泡・75㍑/分、水成膜泡・35㍑/分 - 防火対象物の用途によって定められた放射率で放射できるように9㎡に1個以上設ける。
フォーム・ウォーター・スプリンクラーヘッド
- 泡の放射の他に水を放射した場合にスプリンクラーヘッドと同様な散水が得られる。
- ヘッド1個の放射量は75㍑/分以上で、上向き型と下向き型がある。
- ヘッドは防護対象物のすべての表面を包含できるように8㎡に1個以上設ける。
高発泡用泡放出口
- ノズルから噴射した泡水溶液をスクリーンネットに当てて発泡して放出する。
- 空気を大量に吸引するアスピレート型は泡の膨張比が250以下。
- ファン又はブロアーの送風機で強制給気するブロアー型は泡の膨張比が500以上。
- 全域放出方式の泡放出口は、1の防護区画の床面積500㎡ごとに1個以上設ける。
- 泡放出口は防護対象物の最高位より上部の位置に設ける。ただし泡を押し上げる能力があるものは防護対象物に応じた高さとすることができる。
- 泡の噴射を停止する装置(非常停止装置)を設ける。
固定泡放出口
- 危険物貯蔵タンクの側板上部又は底面近くの下部に取り付け、液面に泡を放出するもので、タンクの構造(固定屋根タンク・浮屋根タンク・その他のタンク)および放出方法(上部泡注入法・底部泡注入法)により異なる。
泡ノズル(移動式)
- 放射量は用途・設置場所により変わる。
- 防護対象物の各部分から1のホース接続部までの水平距離は15m以下である。
- 泡放出用器具の格納箱には「移動式泡消火設備」と表示し、上部に赤色の灯火を設け、ホース接続口から3m以内の所に設ける。
流水検知装置
これはその名の通り、流水を検知する装置です(アラーム弁とも言います)。
通常配管内は流水ゼロですが、一斉開放弁等が開放し水が流れると、この流水検知装置(以下アラーム弁)の中でも流水が発生して弁体が開き、付属の圧力スイッチを押して泡が放出しているって言う警報を出します。
制御弁などを閉鎖して流水がなくなると、アラーム弁の弁体も閉鎖して圧力スイッチに流水が行かなくなり圧力スイッチも戻り、警報も復旧します。
またこのアラーム弁には湿式・乾式・予作動式がありますが、泡消火設備に用いられるのは湿式だけです。
一斉開放弁
上記アラーム弁は警報を出す為のものですが、この一斉開放弁はそれ自体が制御弁になっていて、圧力の増減や電磁弁等で弁体を開放して通水するものになります。一斉開放弁には以下の種類があります。
加圧型一斉開放弁
弁体を開放するのに圧力を加えるタイプです。ポンプからの加圧水を弁体に送ってその力で弁体を開放します。
減圧型一斉開放弁
弁体を開放するのに圧力を除去するタイプです。常時弁体開放側を加圧しておき、起動時にその圧力を除去して弁体を開放します。
PFOS含有泡消火薬剤について
あまり聞き慣れない言葉が出てきましたが、これは「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」(POPs条約)において、国内で従来から設置されている泡消火薬剤の一部製品に含まれる「ペルフルオロオクタン−1−スルホン酸(以下PFOS(ピーフォス)という)、またはその塩」と呼ばれる科学物質が残留性有機汚染物質に指定されました。
この条約を受けて日本でも平成21年に「科学物質の審査および製造等に規制に関する法律(通称:化審法)の第一種特定科学物質に指定されてPFOS含有泡消火薬剤の取扱が規制されました。
特定科学物質の指定を受けたため、PHOS含有の泡消火薬剤の補充・廃棄・使用に関しては化審法の基準に従った取扱いが必要です。ただし実火災等のやむを得ない使用に関しては認められています。
ちなみに泡消火器にも一部製品でPHOS含有薬剤を使用している消火器があるので、化学泡・機械泡消火器がある場合には注意が必要です。
まとめ
最後までご覧頂きありがとうございます。
普段あまり見かけない泡消火設備ですが、石油コンビナートなどの危険物施設や駐車場などではよく見かけます。
たまに「地下駐車場が泡だらけに・・・」なんてニュースを見ると、これが泡消火設備なんだーと認識されるぐらいです。が、車を運転して立体駐車場や地下駐車場を利用する場合には、この泡消火設備が設置されているかもしれませんので、車で泡消火設備の起動装置にぶつからないように気をつけてください。
万が一ぶつかって泡消火設備が作動し泡が出ちゃった場合はその復旧にウン千万はかかります(規模による)ので、車を運転される方は気をつけてください。ちなみにたん白泡はとっても臭いです(笑)。