消防設備士の試験対策 共通法令 前編

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皆さんこんにちは。

消防設備士の試験対策をやっていこうと思うのですが、今回は消防関係法令(共通)の前編として

  • 用語解説
  • 火災予防に関する一般的事項
  • 危険物規制
  • 消防用設備等の設置と維持管理

を説明していきます。

これからの解説においてマーカー色違い文字は重要な部分を指していますのでよく確認しましょう。

 

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消防関係法令(共通)

この共通法令に関する問題は各類に共通するもので、基本的な項目として立入検査等・防火管理・消防用設備の種類・消防用設備等の設置維持・消防設備士制度・検定制度などの幅広い範囲となっています。

この共通法令は甲種であれば法令問題15問のうち8問が、乙種であれば法令問題10問のうち6問出題され、法令問題の半分以上を占めていますので甘く見ずにしっかりと確認を行い、他の類の免許をお持ちの方はこの共通法令は科目免除をすることができます。

 

用語解説

消防法で使用されている用語を説明していきますが、この用語を理解できないとこの先の内容が理解できなくなりますのでいきなりですがとても重要な部分です。

①防火対象物

山林・舟車・船きょもしくはふ頭に繋留された船舶・建築物やその他の工作物若しくはこれらに属する物

を定義とし、消防法施行令別表第一という一覧表に記載のある建築物の用途を指し、簡単に言うと「一般家庭(一戸建て住宅)」を除いた建築物と思っていただければ良いです。

以下余談です…

ちなみに「山林」とは、単に山岳森林に限らず、森林はもとより原野や荒蕪地こうぶちも含まれます。

「舟車」(しゅうしゃ)とは、船舶や車両(電車・バス・自家用車など)を指します。難しく言うと、「船舶安全法第2条第1項の規定を適用しない船舶・端舟(たんしゅう)・はしけ・被曳船(ひえいせん)その他の舟及び車両をいう」になります。

ちなみに

  • 端舟  →  航行推進力としてエンジンや帆を使用しない舟、ボートや小舟など。
  • はしけ  →  本船と波止場の間を行き来して乗客や貨物を運ぶ小舟のこと。
  • 被曳船  →  他の船に引っ張られている船。

「船きょ若しくはふ頭に繋留された船舶」とは、船の建造や修理・荷役作業などのために造られた設備や施設の総称(英語でドック)をいい、船渠(せんきょ)ともいう。航行中のものは含まれない。

「建築物その他の工作物」の「建築物」とは、「土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの、これらに附属する門若しくはへい、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行所、倉庫その他これらに類する施設をいい、建築設備を含む」と規定されている。また「工作物」とは、人為的に土地に固定して設備されたものをいい、橋梁(きょうりょう)、トンネル、電柱などがこれに該当する。

 

②消防対象物

山林・舟車・船きょもしくはふ頭に繋留された船舶・建築物やその他の工作物又は物件

を定義とし、これには防火対象物と無関係な物件(一般家庭の一戸建て住宅など)を含む建物を指します。

上記「防火対象物」との違いとして、定義の文言の最後の「その他の工作物若しくはこれらに属する物」と「その他の工作物又は物件」を比較する問題は良く出題されます。

 

③関係ある場所

防火対象物、又は消防対象物がある場所のことをいう。

 

関係者

よく防火対象物の関係者…といいますが、関係者には所有者管理者占有者の3つがありますが、防火管理者は含まれません

  • 所有者…防火対象物を所有する者で、大家・オーナー・社長など所有権のある者。
  • 管理者…防火対象物を管理する者で、ビル管理会社・管理委託業者など所有者ではないが管理権限を持つ者。
  • 占有者…防火対象物を使用・占有する者で、賃貸マンションの入居者・テナントの使用者や従業員など。

 

無窓階むそうかい

建築物の地上階のうち、総務省令で定める避難上・消火活動上有効な開口部を有しない階のことで、要するに出入口・窓などが規定よりも少なく(窓等がゼロなわけではない)避難や消火活動が制限される階のこと

詳しくは下記の記事を参照してください。

 

⑥危険物

消防法別表第一の品名欄に掲げる物品のことでこの表に定められている区分に応じ、この表の性質欄に掲げる性状を有するものをいい、簡単に言うと火災の原因になりかねない理由から、製造・貯蔵・取扱設備の設置などが規制の対象になっている物質の総称のこと。

例えば身近な危険物であるガソリンは第4類危険物(引火性液体)、第1石油類に区分されて、200㍑以上を取り扱う場合は危険物取扱者乙種4類の資格が必要である。

  詳しくは下記の記事を参照してください。

 

特定防火対象物

これは、火災時に人命の危険性が大きい防火対象物として指定されているもので

  • 不特定多数の人が出入りするところ。
  • 幼児、老人、身体的弱者の為の施設。

などがあげられ、令別表第一という表の中では、(1)項〜(4)項、(5)項イ、(6)項、(9)項イ、(16)項イ、(16の2)項、(16の3)項が該当になります。

この特定防火対象物の反対となるものに「非特定防火対象物」というものがあり、上記以外の防火対象物のことを言います。

 

⑧複合用途防火対象物

これは、1の建築物の中に2以上の用途に供される防火対象物をいい、例えば、3階建てのビルで、1階が飲食店((3)項ロ)、2階が洋品店((4)項)、3階が事務所((15)項)など、階などで用途が分かれているものが2以上ある場合には複合用途防火対象物になります。

この場合

  • 特定防火対象物が1つでも入っている場合は令別表第一の(16)項イに分類され
  • 特定防火対象物が一切ない複合用途防火対象物は(16)項ロに分類されます

 

特定1階段等防火対象物

地階又は3階以上の階に特定防火対象物が存在し、直接地上へ通じる屋内階段又は傾斜路が1つしかない防火対象物を指しますが、特別避難階段や屋外階段が設置されている場合は対象外になります。

特定1階段等防火対象物について詳しくは下記の記事を参照してください。

 

消防吏員しょうぼうりいん

消防吏員とはいわゆる消防士のことで、市町村の消防本部に勤務する消防職員のうち階級を有する者、制服・制帽を着用し胸に階級章をつけている者。(階級を有する者とは、消防士・消防副士長・消防士長・消防司令補・消防司令長・消防監(消防本部での消防長の階級))

 

火災予防に関する一般事項

消防職員の立入検査

消防長や消防署長(消防本部を置かない市町村にあっては、市町村長)は、消防職員や常勤の消防団員に関係のある場所に立ち入らせて、検査や資料提出を求めたり、関係者へ質問することができます。

この立入検査ですが、以前は立入検査できる時間や事前通告を行なわなければならないなどの規定がありましたが、平成14年に消防法が改正され現在では24時間いつでも事前通告なしに立入検査をすることができます。

このときに消防職員は市町村長の定める証票を携帯し、関係者から請求がある場合はこの証票を提示しなければならず、また、この立入検査で知り得た関係者の秘密をみだりに他人に漏らしてはいけないという決まりがあります。

ちなみに、個人の住宅(共同住宅の居室も含む)については関係者の承諾を得た場合、若しくは火災の発生の恐れが著しく大きい場合など特に緊急性がある場合に限られています。

 

屋外における措置命令

消防長・消防署長や消防吏員しょうぼうりいんは、屋外において火災の予防に危険であると認められる行為をしている者、または、火災の予防上危険であると認められる物件や、消火・避難その他の消防活動に支障となる物件について、行為者や権限を有する関係者に必要な措置を取るべきことを命じることができる

ただし消防団長や消防団員はこの措置命令を発する権限は持っていない。

 

防火対象物に対する措置命令(法第5条)

消防長・消防署長は以下の要件に該当する場合に、防火対象物の権限を有する関係者や現場管理人に防火対象物の改修・移転・除去・工事の停止や中止を命令することができる。

  1. 火災予防において危険であると認められる場合。
  2. 消火・避難その他の消防活動に支障となると認められる場合。
  3. 火災が発生した場合に人命の危険があると認められる場合。
  4. その他の火災の予防上必要がある場合。

 

防火対象物に対する措置命令(法第5条の2)

消防長・消防署長は必要な措置命令を命ぜられたのにもかかわらず、引き続き上記のa〜dにあてはまる場合で、かつ以下の要件に該当する場合には防火対象物の権限を有する関係者に防火対象物の使用禁止・停止や制限を命じることができる。

  1. 措置が履行されていない場合。
  2. 措置が履行されても十分ではない場合。
  3. 履行期限がある場合にあって、期限までに完了する見込みがない場合。

 

防火管理者

①防火管理者を選任しなければならない防火対象物と資格者

ある一定以上の収容人員がある防火対象物(又はその部分)には防火管理者を選任して防火管理業務を行わせなければなりません。その収容人数は

  • 令別表第一の6項ロ(特別養護老人ホームやグループホームなど)は10名以上
  • 特定防火対象物(6項ロ除く)は30人以上
  • 非特定防火対象物は50人以上

また、防火管理者には甲種と乙種があり管理できる防火対象物に違いがあります。

6項・ロの防火管理※1 特定防火対象物 非特定防火対象物
乙種防火管理者 管理できない 300㎡未満 500㎡未満
甲種防火管理者 管理できる 300㎡以上 500㎡以上

※1…収容人員が10人以上の場合

例えば防火対象物の用途が4項(物品販売店)で、収容人員が35人、延べ面積が280㎡であると仮定した場合に

  1. 4項は特定防火対象物である
  2. 特定防火対象物で収容人員が30人以上なので防火管理者を選任しなければならない
  3. 延べ面積が300㎡未満なので甲種又は乙種防火管理者のどちらでも管理できる

 

②防火管理者の業務

防火管理者に選任された者は以下の業務を行なわなければならないと決められています。

  1. 消防計画の作成。
  2. 消火と通報及び避難の訓練の実施(特定用途防火対象物では、年2回の訓練が必要)。
  3. 消防用設備等の点検・整備(日常的な点検)。
  4. 火気の使用や取扱いに関する監督。
  5. 避難や防火上必要な構造・設備などの維持管理並びに収容人数の管理。
  6. その他防火管理上必要な業務。

 

③届出等

管理権原者は、防火管理者の選任・解任および消防計画の作成・変更を消防長または消防署長(消防本部を置かない市町村にあっては市町村長)に届け出なければならない

 

④共同防火管理

管理権限が分かれている高層建築物(高さ31mを超えるもの)、地下街、準地下街などには、共同防火管理の協議会を設けなければならない。

 

防炎防火対象品等

高層建築物や地下街、令別表第一の(1)〜(4)項、(5)項イ、(6)項、(9)項イ、(12)項ロ、(16の3)項(特定防火対象物とテレビスタジオ・映画スタジオなどと準地下街)と、工事中の建築物や工作物には防炎物品を使用しなければならない。

防炎物品を使わなければならない対象物(防炎対象物品)は、どん帳等の幕、カーテン、布製のブラインド、展示用合板、暗幕、じゅうたん等、大道具用の合板、工事用シートが該当する。

防炎物品について詳しくは下記の記事を参照してください。

 

危険物規制

(1)危険物製造所等の許可及び取扱いの制限

法別表に定められている品名ごとに定められている指定数量以上の危険物は、貯蔵所以外の場所でこれを貯蔵したり、製造所・貯蔵所・取扱所以外の場所でこれを取り扱ってはならない。

指定数量以上の危険物を製造・貯蔵または取り扱う場合には、市町村長(消防本部と消防署が併置の時)または都道府県知事もしくは総務大臣(移送取扱所が2以上の都道府県にまたがる時)の許可を受けなければならない

 

(2)指定数量以上の判断

2つ以上の危険物を製造・貯蔵などする場合に、それぞれの危険物の数量を、それぞれの危険物の指定数量で徐(わり算)してその数値の合計が1以上となる場合は、指定数量以上の危険物とみなされる。

 

(3)危険物取扱者

危険物を製造・貯蔵・取扱う場合には、危険物取扱者の資格が必要です。危険物取扱者には

  • 甲種(全ての危険物を取り扱える。)
  • 乙種(1類〜6類まであり、各類ごとの危険物を取り扱える。)
  • 丙種(第4類危険物の一部を取り扱える。)

があります。

製造所等においては、危険物取扱者以外の者は甲種または乙種危険物取扱者の立ち会いがなければ危険物を取り扱うことができない

 

消火設備と警報設備の種類

ここで紹介する消火設備と警報設備は危険物規制での設備になります。

(1)消火設備

  • 第1種:屋内消火栓、屋外消火栓
  • 第2種:スプリンクラー設備
  • 第3種:特殊消火設備(水蒸気消火設備、水噴霧消火設備、泡消火設備、二酸化炭素消火設備、ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備)
  • 第4種:大型消火器
  • 第5種:小型消火器、簡易消火用具

 

(2)警報設備

  • 自動火災報知設備
  • 消防機関に報知できる電話
  • 非常ベル装置
  • 拡声装置
  • 警鐘けいしょう

 

(3)消火設備の基準

  1. 著しく消火困難な製造所等と移送取扱所には、第1種〜第3種の設備のいずれかと第4種と第5種の併設。
  2. 消火困難な製造所等には、第4種と第5種の併設。
  3. その他の製造所等には、第5種の設置

 

消防用設備等の設置と維持管理

  1. 防火対象物の関係者は消防法施行令で定める技術上の基準に従って、防火対象物に消防用設備等を設置し、維持しなければならない
  2. 市町村は、その風土気候の特殊性により1.の消防用設備等の技術上の基準に関する政令、又は命令の規定のみでは防火の目的を十分に達しがたいと認められるときには、条例で当該政令や命令の規定と異なる規定を設けることができる。異なる規定とは、緩和するものではなく、強化するものである。
  3. 総務大臣の認定を受けた特殊消防用設備等を総務省令で定める設置維持計画に従って設置・維持する場合には2.の規定は適用にならない。
  4. 消防用設備等の種類
    1. 消防の用に供する設備
      1. 消火設備(消火器・屋内消火栓など)
      2. 警報設備(自動火災報知設備・非常警報器具など)
      3. 避難設備(避難器具・誘導灯など)
    2. 消防用水(防火水槽など)
    3. 消火活動上必要な施設(排煙設備・連結散水設備・連結送水管・非常コンセント設備・無線通信補助設備
  5. 消防用設備等の設置単位(技術上の基準の適用)は棟単位であり、敷地単位ではない。が、例外もある(以下参照)
    1. 開口部のない耐火構造の床・壁で区画されている場合は、それぞれ別の防火対象物とみなされる(通称、令8区画)。
    2. 複合用途防火対象物((16)項イ・(16)項ロ)では原則として、防火対象物の用途ごとに1の防火対象物とみなされます。
    3. 以下の設備は用途ごとの適用ではなく、防火対象物全体の基準を適用します。
      1. スプリンクラー設備
      2. 自動火災報知設備
      3. ガス漏れ火災警報設備
      4. 非常警報設備
      5. 避難器具
      6. 誘導灯

「令8区画」について詳しくは下記の記事を参照してください。

 

消防用設備等・特殊消防用設備等の設置維持命令

消防長・消防署長(消防本部を置かない市町村の場合は市町村長)は、消防用設備等が設備等の技術上の基準、又は総務大臣の認定を受けた特殊消防用設備等が設置維持計画に従って設置・維持されていないと認められる時は、設備等の技術上の基準や、設置維持計画に従って設置すべきこと、又は維持にために必要な措置を講ずることを命令することができる。

また、この命令に違反して消防用設備等を設置しなかったり、消防用設備等の維持に必要な措置を講じなかったりした者に対しては罰金、懲役、勾留などの罰則規定があるので注意する。

 

まとめ

最後までご覧いただきありがとうございます。

今回は一般共通法令を説明してきましたが、まだ半分です(泣)

次回に「法令適用除外(既存遡及)」「消防用設備の設置の届け出と検査」「消防用設備等の点検と報告」「消防設備士制度」「消防用設備等の検定制度」を説明するので今回は一般共通法令全体のおよそ半分です。結構細かく説明しているので文字数も多いですが、皆さんにわかりやすい説明を心がけているのでそのへんはご勘弁ください。

とりあえず用語と措置命令できる人、防火管理者の必要な防火対象物とその業務、消防用設備等の種類と設置単位はおさえておきたい部分ですし、その中でも用語は覚えておかないと問題を読み解くことができませんので重要です。