無窓階(むそうかい)とは?

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みなさんこんにちは。

今回の記事では無窓階むそうかいの定義や構造などを図を交えて説明していこうと思います。

漢字だけで見ると窓が無い階という意味だろうから窓が一個もない階のことなのかなぁと思ったりしますが、そんなことは無くて窓があっても無窓階に該当することがあるので確認していきましょう。

 

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無窓階の定義

無窓階むそうかいとはなんでしょうか?。

火災の延焼、避難のしやすさは、窓(開口部)の大小や多い少ないが大きく関わっていて、すなわち窓(開口部)がない(あるいは少ない)階は火災発生時に煙の逃げ道が少なく停滞しやすく、避難できる窓などが少ないので逃げ道も限られるということになり、有事の際は人命に大きな影響を与えます。

その為消防法ではこのような階を無窓階と定めて消防用設備等の設置が強化されています。

例えば自動火災報知設備では、通常居室に熱及び煙感知器どちらでも設置できますが、無窓階では基本的に煙感知器しか設置できません(例外あり)。

消防法で言う無窓階は「建築物の地上階のうち、避難上又は消火活動上有効な開口部を有しない階」と定義しています(消防法施行令第10条第1項第5号)。

では有効な開口部とはなんでしょうか?その詳細は消防法施行規則第5条の2に記載されています。

消防法施行規則第5条の2

令第10条第1項第5号の総務省令で定める避難上又は消火活動上有効な開口部を有しない階は、11階以上の階にあっては直径50cm以上の円が内接することができる開口部の面積の合計が当該階の床面積の30分の1を超える階(以下普通階という)以外の階。10階以下の階にあっては直径1m以上の円が内接することができる開口部又はその幅及び高さが75cm以上及び1.2m以上の開口部を2以上有する普通階以外の階とする。

2 前項の開口部は、次の各号(11階以上の階の開口部にあっては第二号を除く。)に適合するものでなければならない。

  1. 床面から開口部の下端までの高さは1.2m以内であること。
  2. 開口部は、道又は道に通ずる幅員1m以上の通路その他の空地に面したものであること。
  3. 開口部は、格子その他内部から容易に避難することを妨げる構造を有しないものであり、かつ、外部から開放し、又は容易に破壊することにより進入できるものであること。
  4. 開口部は、開口のため常時良好な状態に維持されているものであること。

いつも思いますが、こういう法律文章って難解に書いてある気がしますのでわかりやすく解説していきます。

 

面積における無窓階の判定方法

無窓階判定はまず10階以下の階と11階以上の階で取り扱い方が違いますのでそれぞれ解説していきます。

11階以上の階の場合

11階以上の階では直径50cm以上の円が内接することができる開口部の面積の合計が、その階の床面積の1/30以下の階が無窓階という判定になります(下図参照)

11階以上の階における無窓階判定

例えば上図の床面積Aが300㎡、引き違い窓(開口部)1か所の開口部面積Dが1.5㎡で5か所として開口部合計面積Eが7.5㎡だと仮定した場合に

7.5㎡÷300㎡=0.025 となり

これに対して基準である1/30より多ければ「無窓階以外」、少なければ「無窓階」となるので

1/30=0.033 であり 0.025は0.033より少ないということがわかりますので、この例では基準より開口部面積が少ないので「無窓階」の判定になります。

 

10階以下の階の場合

10階以下の階では直径1m以上の円が内接することができる開口部、又はその幅が75cm以上、と高さが1.2m以上の開口部が2箇所以上あり、なおかつその開口部と直径50cm以上の円が内接することができる開口部の面積の合計がその階の床面積の1/30以下の階が無窓階の判定になります。

10階以下の階における無窓階判定

これも例として床面積Aが300㎡
直径50cm以上の円が内接する開口部aの合計面積が4㎡
直径1m以上の円が内接する開口部bの合計面積が4㎡
幅75cm以上・高さ1.2m以上の開口部bの合計面積が3㎡

とした場合に、(開口部合計面積E+G)の合計が11㎡なので床面積で除すると

11÷300=0.036

基準である1/30は0.033、

基準よりも開口部面積のほうが大きいので「有窓階」の判定となります。

ただ上記の判定はあくまでも床面積に対する開口部面積の大小による判定であり、これ以外の要件による判定もありますので下記の事項も確認してください。

 

開口部の構造の制限

上記のような条件を満たせば有効な開口部にできるのですが、問題は開口部の構造です。

いかに大きな開口部でも開けたり通ったりできなければ意味がありませんので開口部は開放できることが条件になり、もちろん建物内の人間が容易に開口部を開放できて避難が行なえ、消防隊も外部から容易に開放できなくてはなりません。

なおかつ外部から開放するのに窓ガラスなどを破壊して鍵を解錠しますが、この時に特殊な工具を使用せず消防隊が通常装備している工具(ハンマーなど)で破壊&解錠できるものでなければなりませんので、網入ガラスや強化ガラスなどはその厚みにより破壊する難易度が変わりますから、ある一定の厚み以下のガラスを使用した開口部だけを有効な開口部として認めています。

また解錠においても何動作もかかるものは所轄消防により有効と認められない場合があるので注意しましょう。

有効な開口部として認められるのは主に以下になります(詳しくは「開口部の構造」参照)

  1. はめ殺しのガラス窓で普通ガラスなら容易に破壊できる厚さの時、または容易に窓をはずすことができる構造のもの。
  2. 屋内でロックされている(クレセント錠など)網入ガラス窓、だが厚さ制限がある。
  3. 屋内外から電動により開放でき、非常電源の付いたシャッター。
  4. 屋外から水圧により開放できる装置を備えたシャッター。
  5. 防災センターなど常時人がいる場所から遠隔操作で開放できるシャッター。

 

開口部の位置

通常床面から開口部の下端までの高さは1.2m以下と定められていますが、床面から開口部までの高さが1.2mを超える場合に、必要な高さの踏台を設置すれば1.2m以下とできる部分がある場合、以下の要件を満たせば有効な開口部として運用することできます。

  1. 踏台が不燃材料で造られ、かつ、堅固な構造である。
  2. 踏台が開口部のある壁面と隙間がなく、床に固定されている。
  3. 踏台の高さは概ね30cm以内、奥行きは30cm以上、幅は開口部の幅以上である。
  4. 踏台の上端から開口部の下端まで1.2m以内である。
  5. 避難上支障のないように設置されている。


 

また10階以下の階の開口部は、道又は道に通ずる幅員1m以上の通路その他の空地に面したものでなければなりません。

 

下記に記載する空地などは規則第5条の2第2項第2号の「通路その他の空地」とすることができる。

  1. 国又は地方公共団体などが管理する公園で将来にわたって空地の状態が維持されるもの。
  2. 道又は道に通ずる幅員1m以上の通路に通じることができる広場(建築物の屋上、階段状の部分など)で避難及び消火活動が有効にできるもの。
  3. 1m以上の空地又は通路にある樹木、塀、その他の工作物で避難及び消火活動に支障がないもの。
  4. 傾斜地及び河川敷で避難及び消火活動が有効にできるもの。
  5. 周囲が建物で囲まれている中庭などで、当該中庭等から通じる通路があり、次の全てに該当するもの。
    1. 中庭から道に通じる部分は廊下又は通路でその出入口の幅員は1m以上であること。
    2. 中庭から道に通ずる部分の歩行距離は20m以下であり、かつ、直接見通しができるものであること。
    3. 道に面する外壁に2以上の大型開口部があること。
    4. 道に面する外壁の開口部で、必要面積の2分の1以上を確保できること。

 

ちなみに「避難上及び消火活動上有効な開口部」とは、屋外から進入するということだけではなく、避難上も有効なものということから10階以下の階においては、上記の様に道又は道に通ずる幅員1m以上の通路その他の空地に面したものであればその開口部は有効なものとされます。

これは1mほどの空地があれば避難することは可能だろうし、消防活動上有効な開口部は避難・進入はもちろんのこと、火災の煙を外部に排出するなど消火活動上有意に使用できるからです。

もちろん避難や消防隊の進入に使う部分なので、格子などで避難などを妨げたり、開口を良好にできる状態を常時維持しなければならないのは言うまでもありません。

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開口部の構造

開口部は、格子や内部から容易に避難することを妨げる構造でないもので、なおかつ外部から開放し、または容易に破壊することで進入できるものでなければなりませんし、開口のため常時良好な状態に維持されていなければなりません(有効な開口部の前に物品を置いたりしない状態)。

下記に示す開口部は、規則第5条の2第2項第3号の「内部から容易に避難することを妨げる構造を有しないものであり、かつ、外部から開放し、又は容易に破壊することにより進入できるもの」として取り扱うことができる。

  1. ガラスを使用した開口部(下図参照)

    ガラスの種類による開口部の取扱い

     

  2. 軽量シャッターの開口部
    1. 煙感知器と連動により解錠したあと、屋内外から手動で開放できるもの(非常電源付きのものに限る。)
    2. 避難階に設けられたもので、屋外から消防隊が特殊な工具を用いることなく容易に開放できるもの。
  3. 防火シャッター(重量シャッター)の開口部
    1. 防災センターや警備員室又は中央管理室など常時人がいる場所から遠隔操作で開放できるもの(非常電源付きのものに限る。)
    2. 屋内外から電動により開放できるもの(非常電源付きのものに限る。)
    3. 屋外から水圧によって開放できる装置を備えたもので開放装置の送水口が1階にあるもの。
  4. 二重窓
    1. はめ殺しの窓で厚さが概ね6cm以下の普通ガラス戸。
    2. 屋内外から開放できるガラス戸。
    3. 避難階に設けられた屋内から手動で開放できる軽量シャッターとガラス戸。
  5. 間仕切り壁を設けることにより、室内と開口部が区画された構造のもので開口部と相対する部分に出入口が設けられたもの(出入口は屋内外から手動で開放できるものに限る。)
  6. 開口部と間仕切り壁の間に通路を設け、間仕切り壁などに出入口を有効に設けたもので、以下の全てに適合するもの又はこれと同等以上に支障がないと認められるもの。
    1. 通路は、通行、運搬のみに使用され、かつ、可燃物などが存置されていないことなど常時通行に支障がないこと。
    2. 通路及び間仕切り壁等の出入口の幅員は概ね1m以上、高さ1.8m以上として下端は床面から15cm以下であること。
    3. 間仕切り壁等の出入口と一の外壁の開口部との距離は概ね10m以下であること。
  7. 開口部に接近して設けられている広告物、看板、日除け、雨避けなどで避難及び進入に支障のないもの。
  8. 避難を考慮する必要がない無人の小規模倉庫などで、外壁が石綿スレートなどで造られ、内壁がなく外部から容易に破壊できる部分(消火活動上支障がない場合に限る。)
  9. 開口部の有効寸法の算定は開口部の型式などにより下図により判断する。

    窓などの開口部の面積算定

     

その他の要件

  1. 営業中は有効な開口部を有するが、閉店後は重量シャッターなどを閉鎖することにより無窓階となる階で、かつ、防火対象物全体が無人となる防火対象物の当該階については無窓階以外の階とすることができる。
  2. 吹き抜けがある場合の床面積及び開口部の取扱いは以下による。
    1. 床面積の算定は床がある部分とする。
    2. 開口部の面積の算定は床がある部分の外壁開口部の合計とする。

 

まとめ

最後までご覧いただきありがとうございます。

私は無窓階についてあまり知識がなかったので今回私も勉強しながら記事にさせていただきましたが、記事作りながら思ったことは、無窓階って11階以上か10階以下でかなり取り扱い方が違うんだなぁということです。

10階以下だと開口部の大きさも2種類必要だし、1m以上の幅員の通路や道路などに面していないとダメとか条件が意外に多いので、建築士や消防署員など無窓階判定する人は大変だなぁと思いました。

でも消防用設備等は無窓階と普通階では機器の選定がガラリと変わるので重要な項目です。この記事を見たついでに無窓階の定義は覚えて離脱しましょう。

無窓階と同じくよく検索されている「令8区画」について下記の記事で確認することができます。