自家発電設備の用語解説

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皆さんこんにちは

先日非常電源(自家発電設備)の記事を執筆していた時にふと思ったのですが、意外によくわからない用語がでてきていたのでこれらについて解説していきたいと思います。

これからお話させていただく内容は筆者が独自に調べて記載していますので、実際にそぐわない部分があるかもしれませんがご了承ください。

また「内部観察等」や「予防的な保全策」に関しては下記の記事を参照してください

自家発電設備の法令一部改正について
この記事では法令一部改正になった非常電源(自家発電設備)について解説しています。改正の内容、内部観察等について、予防的な保全策とは、付加運転等の実施期間や注意事項について詳しく解説しています。

 

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用語について

キュービクル式

キュービクル式自家発電設備の例

キュービクル式とは、該当する機器がそれ専用の鉄製の外箱(キュービクル)に収められているものを指します。

例えば、自家発電設備であれば、自家発電設備(原動機と発電機と制御盤など)が専用の格納箱に収納されているものをキュービクル式自家発電設備といいます。

他には、受電設備などもこれに該当するものがあり、キュービクル式の受電設備と言いますが、消防法で該当する非常電源を使用する場合にはキュービクルは認定品を使用するほうがメリットがあるみたいです。

キュービクル式受電設備の例

 

冷却装置

冷却装置とは字のごとく該当機器を冷却するための装置で、代表的なものではラジエーターがあり、原動機(エンジン)の発する熱を吸収した(加熱された)冷却水の熱を熱交換により冷ます機器のことになります。

これ以外にはインタークーラーやオイルクーラーがあり、インタークーラーはターボチャージャー(過給機の一種)を搭載した原動機の一部に設置されていて、ターボチャージャーで加圧され加熱された吸気を熱交換により冷ましてから原動機に送り込む装置です。

熱い空気よりも冷たい空気のほうが酸素をより多く運べる為、ターボチャージャーで加圧された空気を冷ますことによりより多くの酸素を原動機に送り込むことを可能とする冷却装置になります。

オイルクーラーは、加熱されたエンジンオイルを上記ラジエーターの様に熱交換により冷ます冷却装置になります。

これは、エンジンオイルを一種の冷却装置としている場合にエンジンオイルを冷やすことによりエンジンを冷やすという方式のものに搭載されていたり、また、エンジンオイルもある一定の温度を超えると潤滑性能が一気に低下するので、それを防ぐ目的でエンジンオイルを冷却するための装置になります。

ただ筆者は、インタークーラー搭載の自家発電設備は見たことありますが、オイルクーラーを搭載している自家発電設備は見たことありません。

 

始動装置

これも字のごとく原動機を始動させるための機器で、

  • 電気により原動機を始動させる電気式始動装置
  • 圧縮空気を用いてエアモーターを動かして原動機を始動させる空気式始動装置

がありますが、これらはよく見かける方式で、他に自家発電設備のごく一部で、油圧モーターを用いての油圧式始動装置があります。

電気式始動装置の場合はセルモーターと呼ばれる始動装置を電力(蓄電池など)で回すことにより原動機を始動させる方式になります。

空気式始動装置はエアモーターと呼ばれる始動装置を空気タンク(圧力タンク)に貯めておいた圧縮空気を用いて回して原動機を始動させる方式になります。

油圧モーター式についてはごく一部にしか採用されていないので解説は割愛させていただきます。

 

自動電圧調整装置(AVR)

自動電圧調整装置(AVR)の例

最近の自家発電設備はこの自動電圧調整装置が搭載されていて、発電機が発する電圧を自動で調整して、負荷が繋がったり離れたりしたときの電圧をコントロールする装置になります。

負荷が繋がれば発電機が発する電力を負荷が消費し、その段階で電圧も多少降下しますので、この降下分をAVRが調整して設定電圧へと上げる動作を行います。

古い自家発電設備は電圧調整ダイアルを回して原動機(発電機)の回転数などを調整して、発生する電圧などをコントロールしていました。

そのため古い自家発電設備だと、点検ごとに電圧調整が必要だったりしますので、自動で調整してくれるAVRは大変優秀な装置になります。

 

補機盤(補機類)

補機(補器)とは、原動機本体以外で原動機を運転するのに必要不可欠な装置のことで、これらの補機の動作を司る制御盤(補機盤)のことを指します。

上記でもお話した始動装置や冷却装置もこの補機に含まれます。

大きく分類すると

  • 燃料系統補機
  • 冷却系統補機
  • 潤滑系統補機
  • 始動系統補機
  • その他の補機

に分類されます。

例えば燃料系統補機には

  • 燃料ポンプ
  • 燃料フィルター
  • インジェクター

などが該当します。

昔の自家発電設備には独立した補機盤(空気タンクの制御盤など)がありましたが、最近の自家発電設備は制御盤内に一括して搭載されている(補機盤や充電制御盤など)ので、独立した補機盤はあまり見かけません。

 

冷却水タンク

専用の冷却水タンクの例

こちらは字のごとく冷却水を貯めておく容器(タンク)のことを指しています。

上記「冷却装置」の部分でお話しましたが、ラジエーターはこの冷却水タンクには該当しません。

ごくまれに、このラジエーターを冷却水タンクだと思っている方がいるみたいで、点検票を確認すると冷却水タンクが設置されていないにもかかわらず良否判定が○になっていたりします。

キュービクル式ではないオープン式の自家発電設備の一部でラジエーターなどを用いない方式の場合にこの冷却水タンクに入っている冷却水だけで原動機を冷却します。

冷却塔(クーリングタワー)や熱交換器(ラジエーターなど)を設ける場合にはこの冷却水タンクは設置しなくてもよいことになっています。(自家発電設備の基準、第ニ条第一項第14号)

ただ、冷却装置がラジエーター方式の自家発電設備において、ラジエーターのリザーバータンクが設置されているものがありますが、このリザーバータンクを冷却水タンクに含めるかは微妙なところです。(筆者はリザーバータンクが設置されていれば冷却水タンクに該当しているとしています)

ちなみにリザーバータンク(リザーブタンク)とは、ラジエーター内の冷却水の温度が高くなり冷却水の体積が増えた場合にラジエーターに収まりきらない冷却水をリザーバータンクへと移動してラジエーター内の冷却水を適量にするためのタンクで、逆にラジエーター内の冷却水の温度が下がったら体積は減るので、ラジエーター内の冷却水が不足した場合に今度はリザーバータンクから冷却水をラジエーターへ供給する役目を担っています。

リザーブとは「予備」や「蓄え」と言った意味合いになります。

リザーバータンクの例

 

始動補助装置

始動補助装置(ヒーターなど)の開閉器の例

こちらも字のごとく原動機を始動させるのにその動作等を補う機器になります。

例えば冷却水ヒーターがあり、これはディーゼルエンジンが低温下で始動しずらいという弱点を、冷却水を温めて原動機を保温することによりディーゼルエンジンを始動しやすくするという補助装置になります。

車用のディーゼルエンジンでもこのヒーター(冷却水ではなく燃焼室を温めるものや吸気マニホールドを温めるもの)があって、エンジン始動時にエンジンキーをイグニッションの部分にするとヒーターが作動してエンジンを温めます。

あとはガソリンエンジンにおいて始動時にチョークと呼ばれる始動補助装置を使用してエンジンに供給する混合気(ガソリンと空気を混ぜた気体のこと)のガソリンを濃くすることによりガソリンエンジンを始動しやすくするものもあります。

これらの他に、非常時にしか動かない(常時停止している)自家発電設備には潤滑油プライミングポンプというものがあり、長時間停止している原動機は各部分の潤滑油が落下して潤滑性能が著しく低下する場合があり、このような時に原動機を運転すると潤滑油不足による機器の破損や損傷が起きます。

このような潤滑油不足を無くす為に原動機を始動する前に予め潤滑油をポンプにて強制的に各機器へ送り潤滑性能を満たした状態にしてから原動機を運転するための始動補助装置になります。

最近の自家発電設備にはこの潤滑油プライミングポンプは設置しないで、定期的に(1週間に1回とか設定可能)自家発電設備を始動させて各機器の潤滑油を切らさないプライミング運転という保守運転機能を搭載した自家発電設備もあります。

 

あとがき

最後までご覧いただきありがとうございます。

今回は自家発電設備においてあまり聞きなれない用語について解説させていただきました。

以前にもお話しましたが、自家発電設備は機械系(原動機など)と電気系(制御盤や充電装置関係)の両方の知識があると点検等がよりスムーズに進みます。

この記事ではどちらかというと機械系のお話が多いですが、それは筆者がどちらかというと機械系が得意であり電気系はイマイチな為です(笑)。

自家発電設備はオープン式やキュービクル式があり、他にもディーゼルエンジンやガスタービンなど種類は多岐に渡るため今回お話させていただいた機器があったりなかったりしますが、そこはご了承ください。