皆さんこんにちは。
日々消防点検をしていても水槽の有効水量まで気にすることってあまり無いかもしれませんが、とても大切な事なので
- 各消火設備における必要水量
- 消火設備のみの場合の水槽の有効水量(地下式、地上式)
- 消火設備以外の設備と水槽を共用している場合の有効水量
について解説していきます。
各設備における必要な水量
まずは各消火設備に必要な水量を確認してきましょう。
屋内消火栓設備
屋内消火栓の設置数 | 必要水量 |
設置数が1 | 2.6㎥以上 |
設置数が2以上 | 5.2㎥以上 |
※危険物施設の場合は屋内消火栓の設置数に7.8㎥を乗じ、最大5台で39㎥(1号消火栓のみ)。
屋内消火栓の設置数 | 必要水量 |
設置数が1 | 1.6㎥以上 |
設置数が2以上 | 3.2㎥以上 |
屋内消火栓の設置数 | 必要水量 |
設置数が1 | 1.2㎥以上 |
設置数が2以上 | 2.4㎥以上 |
※これら消火栓の設置数は各階における設置数を指していますので、各階に消火栓が1基づつなら「設置数が1」になります。
スプリンクラー設備
スプリンクラー設備の水源水量の算定については、設置される防火対象物の用途や規模構造、使用するスプリンクラーヘッドの種類や天井高さなどから算出を行うので、一概に何㎥というのはなく、例えば
この場合はスプリンクラーヘッド同時開放個数が15個という決まりがありますので、この15個に1.6㎥を乗じた数(24㎥)以上が必要な水量になります。(乾式や予作動式の場合は個数に1.5㎥を乗じる)
ドレンチャー設備
ドレンチャー設備の水源水量の算定は、使用するドレンチャーヘッドの個数(最大で5個)に0.4㎥を乗じた量(最大で2㎥)以上となります。
ドレンチャー設備って何?って方は下記の記事を参照してください。
水噴霧消火設備
この水噴霧消火設備も上記スプリンクラー設備と同様に、設置対象物により水量が変わります。
道路区画面積が最大となる部分における当該床面積1㎡につき20㍑毎分の量を20分間放射できる量以上。
当該防火対象物又はその部分の床面積1㎡につき20㍑毎分(当該床面積が50㎡を超える場合は50㎡)で、20分間放射できる量以上。
ですので50㎡を超える場合は20㎥以上になります。
防火対象物又はその部分の区分に応じて、床面積1㎡につき10㍑毎分(当該防火対象又は当該床面積が50㎡を超える場合は50㎡)で20分間放射できる量以上。
なので、50㎡を超える場合は10㎥以上になります。
泡消火設備
こちらも各種ヘッド(フォームウォータースプリンクラーヘッド、フォームヘッド)を使用した場合、泡消火剤の種類、移動式等の方式、高発泡や低発泡、当該床面積、配管長などにより変わってきますので一概に何㎥とは言えません、例えば
この場合は20個×35ℓ×10分+200なので7200ℓ → 7.2㎥以上が必要となります。
屋外消火栓設備
屋外消火栓の設置数 | 必要水量 |
設置数が1 | 7㎥以上 |
設置数が2以上 | 14㎥以上 |
動力消防ポンプ
設置する動力消防ポンプの規格放水量により異なり、規格放水量で20分間放水できる量以上と決まっていますが、その量が20㎥を超える場合は20㎥となるように水源を設けます、例えば
規格放水性能が0.5㎥毎分になりますので、20分間放水するには10㎥以上の水量が必要ということになります。
水槽の有効水量(消火設備専用の場合)
それでは、水槽(地下式、地上式)の有効水量の算定方法について確認していきましょう。
お決まりのお知らせですが、下図の寸法などは所轄消防により変わる(市町村の火災予防条例など)場合がありますのでご了承ください。
地下水槽方式(水中ポンプを除く)の場合
地下水槽の場合はポンプより水源が低くなるので吸水管にフート弁を設けますが、この吸水管の内径により有効水量の算定が少し変わってきます。
基本的にフート弁の弁シート面から吸水管の内径に1.65を乗じた数値(65Aなら約108mm)分、上方から水面までの高さ(有効水量高さ)に水槽の平面積を乗じた数が有効水量となります。(下図参照。)
またフート弁設置場所にサクションピットを設けた場合は以下の図の様になります。(下図参照。)
床上水槽方式
今度は地下水槽ではなく地上(床上)に水槽を設置した場合ですが、以下の算定は消火水槽、補助高架水槽どちらも同じ算定方法です。
地下水槽ではフート弁の弁シート面を基準に有効水量高さを算定していましたが、地上水槽はフート弁を用いないので、水槽に接続されている吸水管を基準に算定を行い吸水管の接続部分が横面なのか底面なのかで算定方法が変わってきますのでそれぞれ確認していきましょう。
水槽に接続されている吸水配管の上端から、吸水管の内径に1.65を乗じた数値分上方が有効水量高さの下限(基準)になり、そこから水面までの高さが有効水量高さになりますので、水槽の水平面積に有効水量高さを乗じれば有効水量になります。
水槽に接続されている吸水配管の上部から、吸水管の内径に1.65を乗じた数値分上方が有効水量高さの下限(基準)になり、そこから水面までの高さが有効水量高さになりますので、水槽の水平面積に有効水量高さを乗じれば有効水量になります。
水中ポンプを用いる場合
上記ではフート弁や吸水管を使用した場合について説明させていただきましたが、今度は水中ポンプを用いる場合について説明いたします。(サクションピットを設ける場合と設けない場合でちょっと算定方法が変わります)
水中ポンプの吸水配管太さを基準(Dとする)に、ストレーナの上端からDの2倍以上上方が有効水量算定基準高さになり、そこから水面までが有効水量高さになりますので、水槽の水平面積に有効水量高さを乗じれば有効水量になります。
水中ポンプのろ過網の上端から100mm以上上部か、又は水中ポンプの最低運転水位のどちらかを基準に有効水量高さを算定して有効水量を決定します。
もちろんどちらを採用して水量算定をするかは所轄消防に確認しておいたほうが良いと思います。
他設備と水源を共用する場合
1つの水槽から消火設備と雑用水などのポンプ(以下、他設備。)を共用する場合はよくありますが、この場合は
- 電極棒を用いて、水位が下がると他設備のポンプを停止して消火設備優先にする方法
- 他設備のポンプフート弁と消火設備のポンプフート弁の高さに差を設けて有効水量を確保する方法
の2種類がありますので説明させて頂きます。
電極棒で他設備を停止する方式
この方式は既設の水槽で他設備と消火設備のフート弁に水位差がない場合に用いられ、電極棒を消火設備の有効水量高さに設置し、それよりも水位が下がったら制御盤から他設備ポンプの停止信号を送出して他設備ポンプを強制的に止めて消火設備の有効水量高さを確保する方式になります。
電極棒による制御について詳しくは下記の記事を参照してください。
フート弁の高さに差を設ける場合
この方式では他設備のフート弁を消火設備のフート弁よりも上方に設けて、ある一定水位まで下がったら他設備が吸水出来ない状態を作り消火設備の有効水量を確保する方式になります。
電極棒や制御盤を用いない方式ですので水槽を新設する場合はこの方式が多いですが、フート弁交換などの改修時に吸水配管の長さを変えると有効水量が変わってしまうので注意が必要になります。
消火設備を複数用いる場合
1つの水槽を複数の消火設備で共用する場合(他設備なし)はその共用する設備により異なってきます。
例として
- 屋内消火栓(水量2.4㎥)
- スプリンクラー(水量16.0㎥)
- 泡消火設備(水量20.0㎥)
これらの設備で1つの水槽を共用する場合は、基本的には加算により算定しますので、上記の場合は38.4㎥以上の水量が必要ということになります。
まとめ
最後までご覧頂きありがとうございます。
今回は水槽の有効水量の算定についてお話させていただきましたけど、算定も水槽の状況によって変わってきますのでその都度確認が必要になりますが、水中ポンプを加圧送水装置として用いるのはあまり見かけませんので参考程度に覚えていただければと思います。
通常のユニット型消火栓ポンプは呼水槽からモーター、ポンプまで一体となっており、水中ポンプは配管と水中ポンプを接合して水槽に沈めるだけなので、附属設備(呼水槽など)は必要ありませんがメンテナンスの時には水中ポンプを引き上げたりするので、メンテナンス性は悪そうです。
ちなみに他設備と消火設備で水槽を共用する場合に、他設備の改修等でフート弁の高さが低くなると有効水量高さが変わってしまうので、改修時にはフート弁高さを変えない様にしていただきたい所ですが、ここまで気にしている業者さんはいらっしゃるのかなと思ったりします。
なので改修等があった場合に「もしかしたら有効水量高さが変わっているかも」と思っていただければ幸いです。