不活性ガス消火設備の点検要領 その4(総合点検)

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消防庁改正告示(令和5年1月23日)により点検票が一部改正され、令和5年4月1日から施行された新様式に対応しました

皆さんこんにちは。

これまでやってきた不活性ガス消火設備点検要領シリーズも今回のその4(総合点検)で最後になります。

総合点検では、試験用ガス(窒素ガス又は空気)を使って主管にガスを通しての放出試験等を行います。

ではどのように行うのか見ていきましょう。

 

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全域放出方式及び局所放出方式

確認方法

非常電源に切り替えた状態で以下の操作等により確認する。

また、放射区域が2以上あるものにあっては、点検の都度、同一区域への繰返しではなく、放射区域を順次変えて確認します。


高圧式

(1)放射に用いる試験用ガスは、窒素ガス又は空気を使用して、放射量は点検を行う放射区画の消火剤必要貯蔵量の10%相当の量(二酸化炭素を放射するものにあっては、消火剤貯蔵量1kg当たりの量又は窒素、IG-55若しくはIG-541を放射するものにあっては、消火剤貯蔵量1㎥当たりの量を下記の数値により算定した量の窒素又は空気とする。)を用います。

ただし、設置消火剤貯蔵容器と同容量の貯蔵容器を使用し、5本を超えないこととします。

  • 二酸化炭素→55㍑
  • 窒素ガス→100㍑
  • IG-55→100㍑
  • IG-541→100㍑

例えば、とある放射区画で55kgの二酸化炭素ボンベを20本使用する区画があったとします。

この放射区画は1100kgの二酸化炭素を使用し、試験用ガスはこの量の10%なので110kgと算定され、消火剤1kg辺り55㍑の試験用ガスが必要なので、110kg✕55㍑で6050㍑の試験用ガスを放射すれば良いことになります。

ちなみに窒素ガスで放射試験を行うとすると、47㍑型の窒素ガスボンベなら約7,000㍑の窒素ガスが入っていますので、この47㍑型窒素ガスボンベ1本全てを放射すれば足りる計算になります。

 

(2)点検時には次のものを用意します。

  1. 試験用ガス容器は、設置貯蔵容器と同一機構の容器弁を使用したものを用意します。
  2. 起動用ガス容器を用いる設備にあっては、使用する起動用ガス容器と同一仕様のものを同一本数、点検後の再充てん期間の代替設置用として用意します。
  3. 集合管部又は容器弁部及び操作管部の密栓に用いるキャップ又はプラグを必要数用意します。

(3) 点検に先立ち貯蔵容器部を次により準備します。

  1. 制御盤等の設備電源を一時的に遮断します。
  2. 放射に使用する試験用ガス容器に容器弁開放装置及び操作管を接続します。
  3. 放射に使用する試験用ガス容器以外のものは、連結管を取り外し集合管部をキャップ等で密栓するか、又は容器弁から連結管を取り外し、連結管部をプラグ止めします。
  4. 操作管にあっては放射用以外の部分を密栓します。
  5. 試験用ガス容器以外は通常の設備状況であるかを確認します。
  6. 制御盤等の設備電源を「入」にします。

(4)点検時の起動操作は、次のいずれかにより行います。

手動式のものにあっては手動式起動装置を操作することにより起動させて確認します。

自動式のものにあっては自動・手動切替装置を「自動」側に切り替えて、感知器の作動により又は受信機若しくは制御盤の感知器回路の端子を短絡させることにより起動させて確認します。

 

低圧式

(1)放射に用いる消火剤量は、点検を行う放射区画に必要な薬剤量の10%以上又は代替薬剤として窒素ガス40ℓ入りを5本以上用いて行います。

(2)点検は次により行います。

    1. 起動装置、警報装置、遅延装置、換気装置、自動閉鎖装置(ガス圧で作動するものを除く。)などは、機器点検の要領で個々に実施して確認します。
    2. 放射点検は、次のいずれかにより作動が確実であるかを確認します。
      1. 貯蔵容器の放出弁又は閉止弁及び選択弁を手動で操作して放射薬剤量を液面計で確認しながら防護区画又は防護対象物に放射し、放射系統の確認、ガス圧作動の自動閉鎖装置及び放出表示灯等の作動状況を確認します。
      2. 窒素ガスを用いて行うときは、窒素ガスを規定の圧力値に減圧した圧力源を放射区域の選択弁部等に接続して、選択弁等を手動で操作して放射し、ガス圧作動の自動閉鎖装置及び放出表示灯等の作動状況を確認します。

上記の操作等により機器を作動させて以下を確認します。

 

判定方法

全域放出方式

警報装置

警報装置が確実に鳴動するか確認します。

遅延装置

遅延装置が確実に作動するか確認します。

開口部の自動閉鎖装置等

開口部等の自動閉鎖装置が確実に作動し、換気装置が確実に停止することを確認します。

ただし、ガス圧式の自動閉鎖装置の場合にあっては、機器点検の点検要領により個々に確認してもよい。

起動装置及び選択弁

起動装置及び選択弁が確実に作動し、試験用ガスが放射されることを確認します。

配管及び配管接続部

通気状態で、配管からの試験用ガスの漏れがないことを確認します。

放出表示灯

放出表示灯が確実に点灯することを確認します。

※放射区画は完全に換気するまでは中に入らないこと。

※点検終了後は、すべて確実に復元しておくこと。


局所放出方式

警報装置

警報装置が確実に鳴動するか確認します。

起動装置及び選択弁

起動装置及び選択弁が確実に作動し、試験用ガスが放射されることを確認します。

配管及び配管接続部

通気状態で、配管からの試験用ガスの漏れがないことを確認します。

※放射区画は完全に換気するまでは中に入らないこと。

※点検終了後、点検時使用した試験用ガス容器は再充てんを行うこと。この場合、試験用ガス容器が高圧ガス保安法に基づく容器検査又は容器再検査を受けて、これに合格したものを使用すること。

※点検終了後は、すべて確実に復元しておくこと。

 

 

移動式

確認方法

手動式起動操作部を起動させて以下の操作等により確認する。

  1. 試験用ガス(窒素又は空気)による放射は、ユニット5個以内ごとに任意のユニットで、貯蔵容器と同一仕様の試験用ガス容器1本を用いて行います。
  2. 貯蔵容器の容器弁と連結管の接続部を外します。(2本共)
  3. 貯蔵容器1本を試験用ガス容器と取り換えます。。
  4. 試験用ガス容器と連結管を接続します。
  5. 他の貯蔵容器の容器弁より外した連結管の接続部は密栓等の処置をします。
  6. 貯蔵容器の容器弁に取り付けられている容器弁開放装置を取り外して、試験用ガス容器の容器弁に取り付けます。
  7. 手でホースを全部引き出し、容器弁開放装置を手動操作します。
  8. ノズル開閉弁を開放操作します。

 

判定方法

ノズル開放弁とホース接続部の例

ノズル開放弁とホース接続部の例

ノズル開放弁

指定の容器弁開放装置の作動、ホース引出し及びノズル開閉弁等に異常がなく、試験用ガスが正常に放射されることを確認します。

ホース及びホース接続部

ホース及びホース接続部からの試験用ガスの漏れがないことを確認します。

※点検終了後、点検時使用した試験用ガス容器は再充てんを行うこと。この場合、試験用ガス容器が高圧ガス保安法に基づく容器検査又は容器再検査を受けて、これに合格したものを使用すること。

※点検終了後は、すべて確実に復元しておくこと。

 

まとめ

最後までご覧頂きありがとうございます。

今回の記事で不活性ガス消火設備の点検要領は終了になります。

総合点検では実際に試験用ガスを放射して確認しますが、簡単な流れとして

  • 設置されている容器弁と同一の試験用ガスボンベ(窒素or空気)(放出用と起動用)を使用。
  • 使用する放出試験用ガスボンベは最大で5本まで。
  • 設置されている消火剤貯蔵容器(起動用ガスボンベも)を外して試験用ガスボンベ(放出用と起動用)を取り付ける。
  • 容器弁開放装置も取り付けて、扉開から起動まで行い実際に放射する。
  • 確認要領に従い確認する。

上記の流れになります。

同一の容器弁の付いた試験用ガスボンベを用意してしまえば、総合点検毎に放射→ガス充てんを繰り返して使用できます。ただ、ガス充てん(耐圧試験込み)にはちょっとコストがかかりますが。