自動火災報知設備の設置基準 その5

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皆さんこんにちわ。

今回は自火報の付属機器である中継器・発信機・音響装置・配線・電源についてお話させていただきます。

熱感知器の設置基準については下記の記事を参照してください。

煙感知器の設置基準については下記の記事を参照してください。

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付属機器の設置基準

中継器

  1. 操作上支障となる障害物がない場所で、点検に便利な場所に設置する。
  2. 機能に障害のでるおそれのある振動・腐食性ガスの発生などがない場所に設置する。
  3. 防火上有効な位置に設置する。

中継器の例

発信機

  1. 各階ごとに、その階の各部分から発信機までの歩行距離が50m以下になるように設置する。
  2. 多数の者の目に触れやすく、操作が容易に行える廊下・階段・出入口付近などに設置し、消火栓がある場合にはその直近に設置する。
  3. 押しボタンの位置は、床面から0.8m以上1.5m以下に設置する。
  4. 発信機の直近には表示灯を設ける。
  5. 表示灯は赤色の灯火で取付面と15°以上の角度となる方向に沿って10m離れた位置から表示灯が点灯しているのが判別できるように設置する。
  6. ※小規模特定用途複合防火対象物で感知器の設置が免除されている部分には発信機を設置しなくてよい。

地区音響装置

地区音響装置は、感知器や発信機の作動と連動して警報音(サイレンやベル)とか音声によって防火対象物や、その部分の全区域に火災を報知できるように設置する。

この地区音響装置は、放送設備の警報音(サイレン・音声)が感知器・発信機の作動と連動して鳴動する場合は、この放送設備の警報音を地区音響装置の代わりにすることができる。

また、発信機と同じで、小規模特定用途複合防火対象物で感知器の設置を免除されている部分にも地区音響装置を設置しなくてよい。


設置位置

  1. 各階ごとに、その階の各部分から地区音響装置までの水平距離が25m以下になるように設置する。また、間仕切りや壁などで有効に報知できない場合は、その状況に応じて地区音響装置を増設する。
  2. 地区音響装置の音圧は、警報音を発するもの(ベル、サイレンなど)は、設置された音響装置の中心から1m離れた位置で90dB以上、音声を発するものは92dB以上であること。また、機器収容箱などの中に設置された音響装置の音圧は、機器収容箱に収められた状態で測定する。
  3. 室内・室外の音響が聞きとりにくい場所(ダンスホール、カラオケボックスなど)がある場合は、その場所の他の騒音・警報音と明らかに区別して聞き取れる措置を講ずること。
  4. 個室ビデオ店などにおいては、音響装置の警報音が聞き取れるような措置を講ずること。(ヘッドホン・イヤホンなどを客に利用させるサービスを提供する個室がある施設。)
  5. 上記4・5の音響を聞き取れる措置には、他の音響を停止させる措置(カットリレーなどを用いて増幅器(アンプ)などの電源を遮断する)や、音響+視覚による警報(フラッシュによる警報)用いることができる。(所轄消防による)

地区音響装置の設置例


鳴動方式

原則として、一斉鳴動方式とするが、要件によっては区分鳴動方式などを採用することができる。

区分鳴動方式

地階を除く階数が5 以上で延べ面積が3,000 ㎡を超える防火対象物またはその部分にあっては、出火階により以下の各階に限って警報を発することができる。

  • 出火階が2階以上・・・出火階とその直上階
  • 出火階が1階・・・地階全部と1階と2階
  • 出火階が地階・・・出火階と直上階とその他の地階
  • ※一定時間(おおむね10分以内)が経過した場合、または新たな火災信号を受信した場合は直ちに全館一斉鳴動ができるような措置を講ずる。

また、一斉鳴動方式とすることができる規模の防火対象物を除き、階段・傾斜路・エレベーター昇降路などに設置した感知器の作動と連動して地区音響装置を鳴動させないようにする。

相互鳴動方式

地区音響装置は、一つの防火対象物に2以上の受信機が設置されている場合は、いずれの受信機からでも地区音響装置を鳴動させることができるようにする。

非常用放送設備に連動する自火報

音声警報音(警報用シグナル・警報用メッセージ)を有する非常用放送設備を設置した場合は、自火報の感知器の作動により自動的に放送が行われることで、自火報の地区音響装置を設けないことができる。

この場合の非常用放送設備に設置するスピーカーの種別・音圧・放送区域・設置個数の基準は以下の通りである。

  1. スピーカーの種別をL級・M級・S級に区分して、1m離れた位置で測定した音圧は以下のとおりである。
    • L級は92dB以上
    • M級は87dB以上92dB未満
    • S級は84dB以上87dB未満
  2. 音声警報音はシグナル及びメッセージにより構成され、シグナルは第1音~第3音まで、その種別に応じて音の周波数・時間・波形が決められていて、メッセージは感知器発報音・火災放送・非火災放送の種別に応じてメッセージの内容が決まっている。
  3. スピーカーは、放送区域の広さに応じて設置する種別は以下を参照のこと。なお、放送区域とは防火対象物の2以上の階にわたらず、かつ床・壁・戸(障子・ふすまなどの遮音性の低いものを除く)で区画された部分をいう。
    1. 100㎡を超える放送区域はL級
    2. 50㎡を超え100㎡以下の放送区域はL級かM級
    3. 50㎡以下の放送区域はL級・M級・S級のいずれか
    4. 階段・傾斜路はL級

また、小規模な放送区域では隣接する他の放送区域のスピーカーが一定距離以内に設置されている場合は、その小規模な放送区域にはスピーカーを設けないことができる。

ただし、小規模な放送区域とスピーカーを設ける隣接放送区域の合計面積による規定の種別のスピーカーが設置されていること。

  1. 居室は6㎡以下のもの
  2. 居室から地上へ通ずる廊下・通路なら6㎡以下のもの
  3. その他の部分にあっては30㎡以下のもの

スピーカーの設置間隔は以下による。

  1. スピーカーが設置された放送区域は、各部分からスピーカーまでの距離が水平距離で10m以内である。
  2. スピーカーの設置が免除される放送区域は、各部分から隣接する他の放送区域のスピーカーまでの水平距離が8m以内である。
  3. 階段・傾斜路は、垂直距離で15mにつき1個以上設置する。

配線

配線は電気工作物に係る法令による他、以下に適合しなければならない。

  1. 常時開路式の感知器の信号回路(感知器回路)は、容易に導通試験ができるように、その回路の末端に発信機・試験用押しボタン・終端器(終端抵抗)を設置する。
  2. 感知器の配線は送り配線とする。(下図参照)
  3. 電源回路の電路と大地との間または配線相互間の絶縁抵抗は、直流250vの絶縁抵抗計で計った場合、電路の対地電圧が150v以下の場合は0.1MΩ以上、電路の対地電圧が150vを超える場合は0.2MΩ以上であること。また、感知器回路・付属回路の電路と大地との間または配線相互間の絶縁抵抗は、1警戒区域ごとに直流250vの絶縁抵抗計で測定した値が0.1MΩ以上であること。
  4. 自火報の配線に使用する電線とその他の電線は、同一の管・ダクト・線ぴ(モールなど)・プルボックスなどに設けてはいけない。
    ただし60v以下の弱電回路に使用する電線にあっては問題ない。
  5. P型受信機・GP型受信機の感知器回路の配線において共通線(通称コモン配線)は、1本につき7警戒区域以下とする。
  6. P型受信機・GP型受信機の感知器回路の電路の抵抗は50Ω以下となるように設置する。
  7. 電線の接続は、はんだ付け・ねじ止め・圧着などで行う。

送り配線の例


配線の工事方法と使用配線

自火報の配線(耐火・耐熱保護配線を除く)と工事方法と使用できる配線は下表のとおりです。

使用できる配線の種別

表中のJCS4396(警報用ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル)は、一般社団法人電線総合技術センターにおいて認定試験を行い、この試験に合格したもので、屋内・屋外ともに使用できる一般用には「ニンテイ ケイホウ」の表示があり、屋内だけ使用できる屋内専用配線には「ニンテイ ケイホウ オクナイ」の表示がついている。

また、耐火・耐熱保護配線を使用しなければならない範囲と使用できる配線の種類・工事方法は以下のとおりです。

自火報の耐火・耐熱保護配線が必要な範囲

耐火・耐熱保護配線の種別と工事方法

電源

自火報の電源は

  • 常用電源
  • 予備電源
  • 非常電源

の3種類があり、各基準は以下になる。

常用電源

常用電源には交流電源と蓄電池設備があるが、一般的には交流電源が使われている。交流電源は交流低圧屋内幹線を、自火報までの途中で他の負荷を分岐させないようにとり、開閉器(ブレーカーなど)には自動火災報知設備専用である表示をする。

交流電源に必要とされる容量は、自火報の機能を維持できる容量以上で、

蓄電池設備に必要とされる容量は、充電を行なうことなく24時間以上監視状態が継続し、その直後に20分以上の継続作動ができる容量以上が必要です。

予備電源

予備電源は、常用電源に交流電源を用いる場合に必要とされるもので、予備電源の容量が自火報に必要な非常電源の容量以上の場合には非常電源を省略することができる。一般的には密閉型蓄電池を使用して、受信機に内蔵されている。

予備電源に必要とされる容量は、P型・R型の受信機なら監視状態を60分間継続したあとに、2つの警戒区域の回線を作動させることができる消費電流を10分間継続して流すことができる容量が必要です。

非常電源

非常電源は、非常電源専用受電設備か蓄電池設備になります。ですが、延べ面積1000㎡以上の特定防火対象物の場合は蓄電池設備に限られる。

非常電源専用受電設備に必要とされる容量は、自火報の機能を維持する容量以上で、

蓄電池設備に必要とされる容量は、充電を行なうことなく1時間以上の監視状態を続けて、その直後に10分以上の継続作動ができる容量以上が必要です。

まとめ

最後までご覧いただきありがとうございます。

今回で自火報の設置基準シリーズは終わりにします。それで、付属機器の設置基準のまとめは↓

  • 発信機は歩行距離で50m以内
  • 地区音響装置は水平距離で25m以内(ベル・サイレン・ブザーの場合)
  • 地区音響装置がスピーカーの場合は、各スピーカーの級により警戒面積が変わる。
  • 配線は送り配線で施工し、末端には終端器(終端抵抗)か押しボタン(発信機)を設置する。
  • 耐火・耐熱配線には使用できる種別と工事方法が決まっている。
  • 耐火・耐熱配線以外の配線も使用できる配線が決まっている。
  • 電源は交流電源と予備電源の組み合わせが一般的である。

になります。

普段は点検しかしないよーって同業者の方もこの設置基準を少しでも覚えておくと点検が楽になると思います。例えば初めて点検する物件でもベルや発信機の包含距離を知っていれば、単独設置のベル・発信機を発見できるかもしれません。なので覚えておいて損はありません。