特定一階段等防火対象物とは

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皆さんこんにちは。

今回は特定一階段等防火対象物についてお話させて頂きますが、この特定一階段等防火対象物とはどのような防火対象物を指すのでしょうか?詳しく見ていきたいと思います。

防火対象物(政令別表第一)ってなに?って方は下記の記事を参照してください。

 

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特定一階段等防火対象物とは

この特定一階段等防火対象物という用語は2001年9月に発生した新宿歌舞伎町の雑居ビル火災の後の消防法改正で生まれた用語になります。

特定一階段等防火対象物を簡単に説明すると

「地階若しくは三階以上の部分に特定用途部分があり、かつ、避難に使用する階段が屋内に1つしかない防火対象物」

になります。

法令文章で言うと

「特定用途に供される部分が避難階以外の階(1階と2階を除く。)に存するもので、当該避難階以外の階から避難階又は地上に直結する階段が2(当該階段が屋外に設けられている場合等にあっては1)以上設けられていないもの。」

になります。

上記で紹介した歌舞伎町雑居ビル火災がまさにこの様な建物で、3階と4階が特定用途部分になり避難に使用する階段が屋内に1つしかなく、火災時にこの屋内階段が避難に使用できずに避難が遅れて多数の死傷者が出てしまったのです。

その為にこの様な建物を特定一階段防火対象物として規制し、同時に防火管理の徹底を行う為の防火対象物定期点検報告制度というものも創設され、その他にも消防機関による立入検査の時間制限撤廃や、罰則強化などの改正も同時に行われました。

 

特定一階段等防火対象物に該当する例

上記で簡単に説明しましたが、もっと詳しく見ていきましょう。

特定一階段等防火対象物の例

上記の図は特定一階段防火対象物として該当する例になります。順番に見ていきましょう。

  • 一番左は、地階に特定用途部分があり、なおかつ屋内階段が1つしかないので特定一階段防火対象物に該当します。
  • 左から2番目は、避難階以外の階(1階と2階を除く階)に特定用途部分があり、なおかつ屋内階段が1つしかないので特定一階段防火対象物に該当します。
  • 左から3番目は、屋内階段と屋外階段等が設けられていますが、特定用途部分のある地階には屋外階段等が届いていなく屋内階段しかないので特定一階段防火対象物に該当します。
  • 左から4番目は、屋内階段が2つありますが、一番上の階で中央部分が避難上有効な開口部の無い壁で区画されていて、飲食店側からは倉庫側の屋内階段へ行くことができない状態になっており、実質避難に使用できる階段が1つしかないので特定一階段防火対象物に該当します。

平成14年消防庁告示第7号の屋内階段等については下記の記事を参照してください。

 

余談ですが、避難上有効な開口部(正確には避難上又は消防活動上有効な開口部)の大きさなどは決まっていて、その階の床面積に対しての避難上有効な開口部の面積が少なすぎると無窓階むそうかいという取り扱いになり一層厳しい規制を受けることになります。

無窓階(避難上有効な開口部の大きさの規定など)について詳しくは下記の記事を参照してください。

 

特定一階段等防火対象物に該当しない例

上記では該当する例を説明しましたが、今度は該当しない例を見ていきましょう。

特定一階段等防火対象物に該当しない例

  • 一番左は、屋内階段が1つしかありませんが、特定用途部分が1階と2階にしかないので特定一階段防火対象物には該当しません。
  • 左から2番目は、建物全ての階が特定用途部分になっていますが、地階から最上階まで屋外階段等がありますので、特定一階段防火対象物には該当しません。
  • 左から3番目は、建物全ての階が特定用途部分ですが、屋外階段が2つあり、避難上有効な開口部を有しない壁などで区画されたりしていないので、どの階も両方の屋内階段にアクセスできる為、特定一階段防火対象物には該当しません。

ちなみに特別避難階段は、避難階段へ行くのに1回屋外のバルコニーを経由して行く特別避難階段と、外気開放窓(または機械排煙の排煙口と給気口等)が設置されている附室を経由して行く特別避難階段があり、普通の避難階段に比べて火災時などに火炎や煙の侵入を防ぎ安全に避難が出来る階段になります。

特別避難階段について詳しくは下記の記事を参照してください。

 

また、この特定一階段等防火対象物には、小規模特定用途複合防火対象物は含まれませんので注意してください(平成26年の消防法施行規則の一部改正による)。

 

特定一階段等防火対象物に対する規制強化について

防火対象物がこの特定一階段等防火対象物になってしまうといろいろと追加で規制をうけることになります。(※各市町村の火災予防条例等により異なる場合があります。

例えば、

  1. 自動火災報知設備
    1. 階段に設置する煙感知器の設置間隔の半減。(1種と2種の煙感知器のみ、3種使用不可など)
    2. 受信機が地区音響再鳴動方式の受信機であること。(地区音響を停止しても一定時間後に再度地区音響が鳴動するもの。)
  2. 避難器具(a〜cのいずれか1つで良い)
    1. 安全かつ容易に避難できる構造のバルコニーなどに避難器具を設ける。(直接外気に開放され、転落防止の為の手すりの高さが1.1m以上あり、概ね2㎡以上の床面積を有するもの。)
    2. 避難器具が常時、容易かつ確実に使用できる状態にあること。(避難はしご(固定式はしごに限る)、避難用タラップ(固定式に限る)、滑り台、滑り棒、緩降機などを常時組み立てられた状態で設置してある状態。)(また避難器具の使用方法の表示もこの状態に合わせ整合性の取れた表示にすること。)
    3. 1動作で容易かつ確実に使用できる避難器具を設ける。(開口部を開口する動作と保安装置を解除する動作を除く。)
    4. 避難器具の設置の表示の強化
      1. 避難器具を設置し、又は格納する場所(避難器具設置場所等という)の出入口にはその出入口上部又はその直近に避難器具設置場所等であることが容易にわかるような措置(避難器具の位置を示す標識の設置)を講ずる。
      2. 避難器具設置場所等には、見やすい位置に避難器具である旨の表示と使用方法を表示する標識を設ける。(常時組み立てられた避難器具の使用方法の表示は整合性に注意する。)
      3. 避難器具設置場所等の場所がある階のエレベーターホールや階段室(附室がある場合には附室。)の出入口付近の見やすい位置に避難器具設置場所等を示した標識を設ける。(標識は平面図などで表示し、避難器具設置場所等の他に避難施設(避難階段など)や避難器具設置場所等の出入口などの位置も明示する。)

上記の様な規制が追加されることとなります。

特に避難器具に関しては歌舞伎町の火災を念頭に置いているので厳しいものになっています。

 

まとめ

最後までご覧頂きありがとうございます。

今回は特定一階段等防火対象物について説明させていただきましたが、この特定一階段等防火対象物という言葉は実は自動火災報知設備の煙感知器の規定文章(消防法施行規則第23条第4項第7号ヘ)の中に登場する文言になります。

この規定文章は

「感知器は、廊下及び通路にあっては 〜中略〜 令別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分が令第四条の二の二第二号に規定する避難階以外の階に存する防火対象物で、当該避難階以外の階から避難階又は地上に直通する階段及び傾斜路の総数が二(当該階段及び傾斜路が屋外に設けられ、又は第四条の二の三に規定する避難上有効な構造を有する場合にあつては、一)以上設けられていないもの(小規模特定用途複合防火対象物を除く。)(以下「特定一階段等防火対象物」という。)に存するものにあつては、一種又は二種の感知器を垂直距離七・五メートルにつき一個以上)の個数を、火災を有効に感知するように設けること。」

となっていて、このオレンジ色の部分に特定一階段等防火対象物という文言がでてきますが、この概念は消防法施行令第4条の2の2(火災の予防上必要な事項等について点検を要する防火対象物)の第2号にあります。

また「特一」とか「特定一階段」などと略されて呼ばれる場合もあり、私達の間では特定一階段と呼んでいますし、消防署の方はよく「特一」と言っています。