皆さんこんにちは。
前回から防火管理者の記事を取り上げてきましたが、今回は防災管理者を説明していこうと思います。防火管理者と防災管理者はどこが違うのかなどをわかりやすくお話させて頂こうと思います。
前回の記事を確認したい方は下記のリンクから御覧いただけます。
防災管理者とは?
防火管理者が防火対象物の防火管理に関わる業務(火災による被害の軽減や防止)を行うのに対して、防災管理者は防火対象物の防災管理に関わる業務(地震や毒性物質の発散、テロ災害などの火災以外の災害による被害の軽減)を行う者になります。
消防法では「火災以外の災害で、地震や毒性物質の発散などによる災害の被害の軽減のために特に必要のある建築物その他の工作物の管理権原者は防災管理者を定め、防災管理に関わる消防計画の作成、当該消防計画に基づく避難の訓練の実施その他防災管理上必要な業務を実施させなければならない」としています。
また、この建築物や工作物のうち、防火管理者が必要な防火対象物にあっては、防災管理者が防火管理者の業務もあわせて行う必要があります。(消防法第36条第2項)
防災管理者を選任しなければならない建物
この防災管理者が必要な建物は、大規模建築物や高層建築物などの(防災管理対象物という)建物になります。防火管理者選任対象物では防火対象物の用途や収容人員が関係していましたが、防災管理対象物は収容人員などは関係なく以下の建物になります。この要件は自衛消防組織の設置を要する防火対象物と同じ要件になっています。
(1)政令別表第一の16項に掲げる防火対象物以外の防火対象物。
- 政令別表第一の1項〜4項、5項イ、6項〜12項、13項イ、15項、17項の防火対象物(自衛消防組織設置防火対象物という)で、以下のいずれかに該当。
- 地階を除く階数が4階以下で、述べ面積が50000㎡以上。
- 地階を除く階数が5階以上10階以下で、述べ面積が20000㎡以上。
- 地階を除く階数が11階以上で、述べ面積が10000㎡以上。
(2)政令別表第一の16項に掲げる防火対象物(自衛消防組織設置防火対象物の用途に使用される部分があるものに限る)で以下のいずれかに該当。
(a)地階を除く階数が11階以上の防火対象物で以下に掲げるもの。
- 自衛消防組織設置防火対象物の用途に使用される部分の全部又は一部が11階以上にある防火対象物で、それらの床面積の合計が10,000㎡以上のもの。
- 自衛消防組織設置防火対象物の用途に使用される部分の全てが10階以下の階にあり、かつ、当該部分の全部又は一部が5階以上10階以下に階にある防火対象物で、それらの床面積の合計が20000㎡以上のもの。
- 自衛消防組織設置防火対象物の用途に使用される部分の全てが4階数以下にある防火対象物で、それらの床面積の合計が50000㎡以上のもの。
(b)地階を除く階数が5階以上10階以下の防火対象物で以下に掲げるもの。
- 自衛消防組織設置防火対象物の用途に使用される部分の全部又は一部が5階以上の階にある防火対象物で、それらの床面積の合計が20000㎡以上のもの。
- 自衛消防組織設置防火対象物の用途に使用される部分の全てが4階数以下にある防火対象物で、それらの床面積の合計が50000㎡以上のもの。
(c)地階を除く階数が4階以下の防火対象物で、自衛消防組織設置防火対象物の用途に使用される部分の床面積の合計が50000㎡以上のもの。
上記の要件に該当する防火対象物は防災管理者を選任しなければなりません。(所轄消防により異なる場合があります。)
防災管理者になるには?
防災管理者として選任されるためには
- 防災管理業務を適切に実行できる「管理的・監督的地位」である。
- 防災管理業務を行う上で必要な知識・技能を持っている(防災管理講習修了や学識経験者など)。
- 甲種防火管理者としての資格者を持っている(甲種防火管理者講習修了や学識経験者など)。
上記の要件が必要です。
ちなみに、甲種防火管理者の資格者でなければならないのは、防災管理者が防火管理業務も同時に行うためであり、防災管理者講習の受講要件ではないので注意してください。
防災管理者講習はどなたでも受講することができます(一部で選任の予定が無い方は受けられないなどの要件あり)が、講習主催者によっては先に甲種防火管理者講習を修了してから防災管理者講習の受講をお願いしている所や、甲種防火管理者講習と防災管理者講習を併せて修了できる課程の講習受講をお願いしている所もあるので、防災管理者講習を受講しようとしている方は講習主催者へ確認をしておいたほうが良いかと思います。
防災管理者の資格取得について
基本的には、上記に記載したとおり「防災管理者新規講習」を受講・修了して資格を取得するという流れになりますが、一定の学歴・学識経験者はこの「防災管理者新規講習」を受講しなくても防災管理者の資格を取得することができます。その要件は
- 大学や高等専門学校で総務大臣の指定する防災に関する学科・課程を修めて卒業し、かつ1年以上の防火管理の実務経験があり、さらに1年以上の防災管理の実務経験を持っている者。
- 市町村の消防職員で、管理的・監督的な職に1年以上就いていた者。
- 労働安全衛生法第11条第1項に規定する安全管理者として選任された者。
- 防災管理点検資格者講習を受講者・修了し、免状の交付を受けた者。
- 国若しくは都道府県の消防の事務に従事する職員で、1年以上の管理的・監督的な職に就いていた者。
- 建築主事又は1級建築士の資格を持っている者で、1年以上の防火管理の実務経験と、1年以上の防災管理の実務経験がある者。
- 消防法第13条第1項の規定により危険物保安監督者として選任された者で、甲種危険物取扱者免状のある者。
- 鉱山保安法第22条第3項に規定する保安管理者として選任された者。
- 警察官やこれに準ずる警察職員で、3年以上の管理的・監督的な職に就いていた者。
- 市町村の消防団員で、3年以上の管理的・監督的な職に就いていた者。
- 消防庁長官が前記に準ずるものとして定める者。
になります。
統括防災管理者とは
以前の記事でお話させて頂いた統括防火管理者と内容はほぼ同じで
防災管理対象物で管理権原が分かれている場合に、それぞれの管理権原者は協議して統括防災管理者を選任・届出を行い、防災管理対象物全体についての防災管理に関る消防計画を作成させ、全体の防災管理業務を行わせなければなりません。
もちろん防災管理者の資格を持っている者で、防災管理対象物全体の業務を適切に行うことができる知識と権限が必要になり、
- 管理権原者から、当該防災管理対象物の全体についての防災管理上必要な業務を適切に遂行するためにそれぞれ必要な権限が付与されていること。
- 管理権原者から、当該防災管理対象物の全体についての防災管理上必要な業務の内容について説明を受けており、かつ、当該内容について十分な知識を有していること。
- 管理権原者から、当該防災管理対象物の位置、構造及び設備の状況その他全体についての防災管理上必要な事項について説明を受けており、かつ、当該事項について十分な知識を有していること。
などが必要になります。
ちなみに上記「必要な権限」とは、各テナント等の防災管理者に対し、地震発生時に転倒・落下の危険性のあるものの撤去を指示することや、全体の訓練等の実施において参加しないテナント関係者に訓練参加を指示できるなどの権限(指示権ともいう)になります。
防災管理再講習について
これも以前の記事で説明させて頂いた、甲種防火管理者再講習と内容はほぼ一緒です。
この再講習を受けなければならない防災管理者は
- 防災管理対象物の防災管理者として選任されている者。
- 防災管理新規講習又は再講習を受けてから5年以内
- 防災管理新規講習により免状を取得した者
になります。
期間についても基本的には防火管理者と同じで、防災管理者講習修了から5年以内になります(一部地域で受講の特例があります)。ですが防火管理者の再講習と防災管理者の再講習を同時に受講しないといけませんので、「防火・防災管理再講習」という講習になります。
まとめ
最後までご覧頂きありがとうございます。今回の防災管理者の業務内容に「地震や毒性物質の発散やテロ災害などについての消防計画の作成や避難訓練」などの業務がありますが、実際のところ、毒性物質の発散やテロについて予め予測しての消防計画の作成や、それに対しての避難訓練など予測予測の業務なので想像力の必要な業務だと思いました。
防火管理も「○○で火災が発生したら…」という予測で避難訓練などを行いますが、あくまでも火災という災害を想定しているのでそれ以上でもそれ以下でもありませんが、防災管理は、あらゆる災害を検討しなければならないのでかなり大変な業務だと思いました。