容器弁の安全性に係わる点検について

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皆さんこんにちは。

以前の記事で不活性ガス消火設備のお話をさせて頂きましたが、今回のタイトルでもある容器弁の安全性に係わる点検についてはあまり詳しく解説していないので、容器弁の安全性に係わる点検が必要な設備やボンベの種類・期限などについて解説していこうと思います。

不活性ガス消火設備については下記のリンクから確認いただけます。

 

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なぜ規定されたのか?

まずは容器弁に安全性に係わる点検(耐圧試験ともいう)がなぜ規定されたのかというと、それは不活性ガス消火設備などの消火薬剤貯蔵容器(消火に用いる為の二酸化炭素などが充填されたボンベ等)が設置から年数が経過したときに、容器弁の封板等(充填ガスが漏れない為のフタみたいなもの)が劣化し穴が開いたりして二酸化炭素ガスなどが漏洩(誤放出)してしまうという事例があり、これを防止するために平成21年に法令が改正されました。

二酸化炭素貯蔵容器の容器弁の例

この平成21年消防予第132号通知で定められた容器弁の安全性に係る点検要領では、二酸化炭素ボンベ等の容器弁ではボンベ設置より15年経過したら20年までに安全性に係わる点検を行う必要がありましたが、平成26年3月31日付け消防予第138号により再度改正され、こちらの138号通知が現行の基準になりますので解説していきます。

 

現行の点検期限について

現行の基準である平成26年消防予第138号通知では以下の様になります。

(1)消火剤として用いる二酸化炭素貯蔵容器の場合

ボンベの設置後、若しくは安全性に係わる点検を実施後から25年が期限になります。

(2)上記以外の貯蔵容器の場合

ボンベの設置後、若しくは安全性に係わる点検を実施後から30年が期限になります。

これには起動用や加圧用の二酸化炭素ボンベや窒素ボンベなども含まれます。

上記年数は期限ですので、経過してしまった場合は安全弁の安全性に係わる点検未実施という形で指摘事項になります。

一般財団法人 日本消火装置工業会では、ボンベ設置後若しくは安全性に係わる点検後15年を越えたら容器弁に関わる点検計画を立てて順番に容器弁の点検若しくは交換を行うことを推奨していますので一般財団法人 日本消火装置工業会のホームページから確認することができます。

一般社団法人 日本消火装置工業会

 

安全性に係わる点検項目

では、この安全性に係わる点検にはどのような項目があるのでしょうか?

以下の項目はボンベから容器弁を外したりする都合上、基本的に高圧ガス事業者が行う点検になります。

(1)外観点検

主に外観からの点検で、使用上支障をきたすおそれがある変形、磨耗、傷、ねじの損傷、腐食、割れ、すじ、しわ、接合部の緩み、弁棒の曲がりなどがないか確認を行います。

(2)構造、形状、寸法点検

目視や専用のゲージなどにより形状及び寸法を確認し、容器弁の型式認定における承認図書に記載された形状寸法と同一であり、実用上有害な欠陥がないことを確認を行います。

(3)耐圧性能点検

圧縮ガス、混合ガスにより耐圧圧力値は変わりますが、容器内に水圧力を張り、規定値で2分間保持して、漏れや変形などがないか確認を行います。

(4)気密性能点検

容器弁等を閉止した状態で窒素ガス又は空気で徐々に加圧を行い、規定値圧力以上にした後加圧源を切り離して水槽に沈めるか又は漏れ検査液を塗布して5分間保持して、漏れやその他の異常がないか確認を行います。

(5)表示点検

表示は、製品の外面等の見やすい位置に容易に消えないように鋳出し、刻印、又は容易に取れない方法で取り付けられた銘板等で、所定の事項について誤りのないものであることを確認を行います。

(6)安全装置等作動点検

安全装置には封板式、溶栓式、封板溶栓式、安全弁があり、それぞれで試験方法が変わりますが、実際に封板等を作動させて確認を行います。

 

容器の点検が必要な消防用設備

この点検が必要な消防用設備は、二酸化炭素貯蔵容器や窒素貯蔵容器を使っている設備になり

  • 不活性ガス消火設備
  • ハロゲン化物消火設備
  • 粉末消火設備
  • パッケージ型消火設備
  • パッケージ型自動消火設備

これらの設備で使用している貯蔵容器(消火剤貯蔵容器、起動用ガス貯蔵容器、加圧用ガス貯蔵容器)の容器弁が対象になります。

 

点検票への記入例

消防用設備等点検結果報告票への容器弁の安全性に係わる部分の記入例は以下の通りになりますが、下記の記入例は消火剤として用いる二酸化炭素ガス容器での記載になりますので、これ以外のガス容器の場合は「25年」を「30年」に読み替えてください。


1,容器弁の封板などに破損、腐食、漏れがなく、なおかつ設置後25年又は容器弁の安全性点検実施後25年を超える容器弁がない場合


2,容器弁の封板などに破損、腐食、漏れがなく、設置後25年または容器弁の安全性点検実施後25年を超える前に容器弁の安全性点検を実施した場合


3,容器弁の封板などに腐食があったので交換し、設置後25年または容器弁の安全性点検実施後25年を超える容器弁が他にない場合


4,設置後25年又は容器弁の安全性点検実施後25年を超える容器弁がある場合

そして備考欄に「○○年設置で、設置後25年を経過している為、容器弁の安全性の点検が必要」と記入します。

 

まとめ

最後までご覧頂きありがとうございます。

今回は容器弁の安全性に係わる点検が必要な消防用設備等、貯蔵容器の種類、期限、点検方法や点検票記入例を解説させていただきましたが、これらの点検及び交換には非常に時間がかかりますので、日本消火装置工業会でも推奨しているように計画を立てて行うのが良いと思います。

前述しましたが日本消火装置工業会では設置後15年を越えたら順番に点検又は交換をおこなっていき、設置後25年までに全数を点検又は交換する計画を薦めており、点検又は交換に10年の期間がありますので、余裕を持った点検や交換が行える計画になっています。

筆者もこれらの消防用設備等の点検において、容器弁の安全性に係わる点検の期限が近づいてきたら容器弁の点検又は交換を提案して容器弁の点検未実施で不良になることを防ぐ努力をしています。

皆さんも容器弁の点検に該当する消防用設備等を点検する際には期限を良く確認していただいて、気がついたら期限越えてたということがないように気をつけていただければ幸いです。