防火対象物点検資格者とは

皆さんこんにちは。

以前に防火対象物定期点検報告制度(以下、防火対象物点検)が創設されたお話をさせていただきましたが、今回は防火対象物点検資格者制度が創設されたお話や資格(免状)の取得、その業務・責務についてお話させていただきます。

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防火対象物点検資格者制度について

以前にお話した秋葉原の雑居ビル(明星56ビル)火災において、大惨事火災の原因として推察された中に

  • 防火戸の閉鎖障害(物品存置)
  • 防火管理者の未選任や消防計画の未作成などの防火管理不備
  • 避難経路に物品があり避難障害

などの防火管理業務の不徹底が大きな要因とされています。(この他にも火災報知器が鳴動しなかった、避難器具が使用できなかったなどのハード面の要因もあります)

特にこのような雑居ビルではテナントの入れ替わりが激しいために、防火管理者がテナントごとに選任されているのか?、防火管理業務は適切におこなわれているのか?などの実態把握が難しい状態だったと思います。

この為、防火対象物点検資格者という火災予防に関する専門的知識と技能を有する人材を養成して、管理権原者や防火管理者に適切な助言を行い防火対象物の防火管理業務を後押しできる制度を創設し、防火管理業務の充実と徹底を図ることがこの防火対象物点検資格者制度が創設された背景になります。

防火対象物点検資格者になるには?

防火対象物点検資格者の資格を取得するにはある一定の知識・経験のある者(受講資格のある者)が登録講習機関(一般財団法人日本消防設備安全センター)で一定の期間講習を受けて、終了考査に合格した者が防火対象物点検資格者の免状を取得できます。

受講資格について主なものとして

  • 消防法第17条の6に規定する消防設備士として、消防用設備等の工場・整備・点検について3年以上の実務経験を有する者。
  • 消防法施行規則第31条の6第6項に規定する消防設備点検資格者として、消防用設備等の点検について3年以上の実務経験を有する者。
  • 消防法第8条第1項に規定する防火管理者として選任された者で、3年以上の実務経験を有する者。(防火管理者として選任された者であり、防火管理者資格を持っているだけでは不可)。
  • 消防法施行令第3条第1項第1号イに規定する甲種防火管理講習、または同項第2号イに規定する乙種防火管理講習の課程を修了した者で、防火管理上必要な業務について5年以上の実務経験を有する者。
  • 建築士法第2条第2項に規定する1級建築士又は同条第3項に規定する2級建築士として、建築物の設計若しくは工事監理・建築工事の指導監督について5年以上の実務経験を有する者。
  • 市町村の消防職員として、火災予防に関する業務について1年以上の実務経験を有する者。
  • 市町村の消防職員として、5年以上の実務経験を有する者。
  • 市町村の消防団員として、8年以上の実務経験を有する者。

などがあります。

これらは防火対象物点検資格者の講習申し込みに併せて実務経験の証明を行い、それが認められれば講習を受けられる仕組みになっています。ちなみに筆者は消防設備士の実務経験で講習を受けました。

免状の更新(再講習)

消防設備点検資格者免状と同じで、防火対象物点検資格者免状にも免状の更新(再講習)があります。

目的は、日々更新される新しい消防関係法令の習得や点検基準等の再確認といったことになり、1日かけて講習を受けることになります。

免状の交付を受けた日以降の最初の4月1日から5年以内にこの更新を受けなければなりませんので、気がついたら5年を超えていたなんてことのないように気をつけましょう。

また、事情(闘病や海外旅行、災害により被害を受けているなど)により更新を受けることができない場合においては、登録講習機関へその書面を送付して交付された場合に、講習期間を1年間延長することができます。

点検資格者の資格喪失

防火対象物点検資格者は以下の要件に該当したときはその資格を失うとされています(消防法施行規則第4条の2の4第5項)

  • 成年被後継人又は被保佐人となったとき。
  • 禁錮以上の刑に処せられたとき。
  • 法に違反して、罰金の刑に処せられたとき。
  • 防火対象物の火災予防上必要な事項等の点検を適切に行っていないことが判明したとき。
  • 資格・実務経験等を偽ったことが判明したとき。
  • 上記免状の更新を受けなかったとき。

上記要件の中に「点検を適切に行っていないことが判明したとき」という要件が入っているように、それだけ防火対象物点検の業務が重要であり、重大な責任があるということを反映したものであります。

また、不適切な点検により火災などが発生し人命や財産に損害が生じた場合、点検資格者の資格者喪失だけではなく、刑事上の責任や民事上の賠償責任も追求される場合があります。

防火対象物点検資格者の業務・責務等

上記しましたが、防火対象物点検資格者は防火管理業務の充実と徹底を図ることが制度が出来た背景になります。

ではそれを果たす為の業務や責務にはどのようなものがあるのでしょうか?

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防火対象物点検資格者の業務

防火対象物点検資格者の業務については消防法第8条の2の2の規定にあるように、一定の規模・用途の防火対象物の管理権原者が行う防火管理業務についてその履行状況を点検するということになります。

この点検の内容は以前にお話した「防火対象物定期点検報告制度の点検基準」の記事に詳しく記載させていただいていますが、簡潔に申し上げると下記になります。

防火対象物点検資格者の業務内容は当該防火対象物における

  • 防火管理上必要な業務
  • 消防の用に供する設備
  • 消防用水又は消防活動上必要な施設の設置及び維持
  • その他火災予防上必要な事項

上記が消防法又は法律に基づく命令に規定する事項に関して防火対象物点検基準に適合しているかどうかを確認することが業務になります。

この業務を遂行するには点検基準や関係法令を熟知していることが前提であることは言うまでもなく、また防火対象物の構造・規模・用途や設備の状況なども十分に把握しておかなければなりません。

消防用設備等点検業務もそうですが、点検に関する知識・技能及び設備の状況等の把握が十分になければ点検業務を遂行できないので、これらの点検業務を行うには相当量の勉強(技能習得)が必要になるということです。

防火対象物点検資格者の責務

防火対象物点検資格者が点検を行うということは、管理権原者(防火管理者)の防火管理に対する意識を喚起させることや、防火管理の必要性などを把握させるという狙いもあるので、防火管理者の責務の履行状況などについても点検を行いその結果を管理権原者に報告する必要があります。

また、点検において不適切な事項が判明した場合には、管理権原者や防火管理者に対して改善のための適切な助言を行うなどして当該防火対象物の防火管理業務の充実及び徹底を図ることも防火対象物点検資格者に課せられた責務になります。

前回にもお話した「防火基準点検済証」を防火対象物に表示する事が出来ますが、この表示は防火対象物の利用者などに防火・防災に関する情報を提供することができます。ということは、利用者等に対して正確な情報でなければならないし、常に公正で適切な業務を行わなければならないことになります。

上記の表示の件や管理権原者・防火管理者に助言を行うには、火災予防に関する知識はもちろんのこと、関係法令の改正などの動向にも注意をして最新の、しかも正確な知識の習得に研鑽(けんさん)を積まなければならないということです。

防火対象物点検の留意事項について

消防用設備等点検においても同じですが、防火対象物の点検を効率的になおかつ適正に行う為にいくつかの留意事項がありますので参考にしてください。

  1. 点検する防火対象物の位置・構造・用途・設備等の状況を十分に把握してから点検計画を立案し、時間的な余裕を持って効率的に点検が行えるように準備しておく。(←ここ重要! 何事も段取り8部です。)
  2. 点検の目的は、適正な防火管理業務の推進によって火災などの災害による人的被害や物的被害を軽減することであり、又、万が一に火災などが発生してしまった場合においてもその被害を最小限にとどめられる体制を構築するためのものである。
  3. 点検対象防火対象物における防火管理が、常に正常適正に機能して当該防火対象物における火災予防を万全にするために、法令等に定められた点検基準や点検要領に従って正確な点検を行う必要がある。
  4. 点検を行うにあたって大切なことは、業務を誠実に行う心構えであり安易な気持ちで正確さを欠いてはならない。点検に際して関係者の信頼を得ていけるように普段から関係法令や点検基準などの知識・技能の向上に努めて、防火管理のスペシャリストとして関係者を指導できるようになる必要がある。

まとめ

最後までご覧頂きありがとうございます。

今回は防火対象物点検資格者についてお話させていただきました。

筆者もこの防火対象物点検資格者の免状を受けていますが、まだ不勉強な部分もあり講習テキストを片手に点検基準を確認しながら防火対象物点検を行っている次第です。

消防用設備等点検も同じで、正確かつ確実な点検を行うには、それにあった知識・技能が不可欠であり、防火対象物点検においてもそれは同じだと思っています。

また、防火対象物の関係者に防火対象物点検や消防用設備等点検のことについて質問などがあった場合にも、関係者が納得できる様な説明・回答をできなければ信用を失うことにつながりますし、点検資格者としての知識・技能が不足しているということになります。

防火対象物点検を行う準備として防火対象物の位置・構造などの状況を十分に把握しておくことはとても重要であり、例えば火気使用設備(機器)は〇〇にあって、少量危険物は屋外の〇〇にあるなどの把握をしておくれば点検を効率的に行うことができるのは言うまでもありません。

段取り8部ですので、事前準備をよく行い快適な点検作業ができるように心がけましょう。