防火対象物定期点検報告制度の特例と証票について

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皆さんこんにちは。

前回より防火対象物定期点検報告制度(以下、防火対象物点検)のお話をさせたいただいています。

この防火対象物点検にはある一定の要件を達すると、防火対象物点検を免除できる特例制度と、証票の表示ができる制度があるので解説していこうと思います。

防火対象物定期点検報告制度については下記の記事を参照してください。

防火対象物定期点検報告制度とは
この記事では「防火対象物定期点検報告制度」が創設された背景や、改正された消防法の内容の確認、そして防火対象物点検が必要になった建物(用途や収容人員など)について詳しく解説しています。

 

防火対象物定期点検報告制度の点検基準については下記の記事を参照してください。

防火対象物定期点検報告制度の点検基準
この記事は防火対象物点検の概要と点検基準をハード面(防炎物品や火気使用設備など)とソフト面(防火管理者選任解任や消防計画の変更の有無など)の両方についての解説と、点検を緩和できる場合の条件について詳しく解説しています。

 

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点検報告の特例

防火対象物点検報告義務のある防火対象物のうち、一定の期間以上継続して消防法令を遵守しているものにあっては、防火対象物の管理権限者の申請により消防長又は消防署長の行う検査を行いその結果、消防法令の基準の遵守状況が優良なものとして認定された場合に、点検及び報告の義務を3年以内に限り免除することができます。

また、この点検報告免除特例を継続する場合には再申請を行う必要があります。

 

特例の認定要件

以下の要件を満たした(防火対象物点検が必要な)防火対象物は、防火対象物の管理権限者の申請により消防長又は消防署長は防火対象物点検及び報告について、特例を適用する防火対象物として認定することができる。

  1. 防火対象物の管理権限者が、その防火対象物の管理を始めてから3年以上経過している。
  2. 過去3年以内に以下のいずれにも該当しない。
    1. 防火対象物の位置・構造・設備・管理の状況について、消防法令等に違反したことにより命令を受けたこたがあるか、又は命令を受けるべき事由が現にあること。
    2. 特例認定の取消しを受けたことがあるか、又は取消しを受けるべき事由が現にあること。
    3. 当該防火対象物の点検や報告がされなかったことがあるか、又は虚偽の報告がされたことがあるか。
    4. 点検の結果、防火対象物点検資格者によって点検対象事項が点検基準に適合していないと認められたことがある。
  3. 消防法令の遵守の状況が優良なものとして以下に適合しているもの。
    1. 点検基準に適合している。
    2. 消防用設備等又は特殊消防用設備等が設置等技術基準等に従って設置・維持されている。
    3. 消防用設備等又は特殊消防用設備等の点検・報告を遵守している。
    4. 消防法令に規定する事項について市町村長が定める基準に適合している。

 

認定の申請

消防法第8条の2の2第1項の防火対象物の管理権限者が、防火対象物点検報告特例認定申請書(規則別記様式第一号の2の2の2の3)に必要な書類を添付して、消防長又は消防署長に申請を行い、申請書類の不備の確認や立入検査などが行われた後に認定要件に適合していると決定されれば特例認定を受けることができる。

ちなみに申請に必要な書類とは

    • 防火対象物の所在地を確認できる書類。
    • 防火対象物の管理を開始した日を確認できる書類。
    • 市町村長が定める事項を記載した書類。

があります。

 

特例認定の失効

防火対象物点検の特例認定を受けた防火対象物は、期間の経過により防火対象物の管理の体制に不備が発生することも考えられるため、以下の場合には特例認定が失効する。

  1. 特例認定を受けてから3年を経過したとき。
  2. 管理権限者が変更になった場合。

管理権限者が変更になった場合でも特例認定が失効する理由として

    • 特例認定が管理権限者によって構築してきた防火管理体制の維持状況であることに対しての認定であり、管理権限者が変更になるということは、また新たな防火管理体制が構築されるという取扱いになり、その新たな防火管理体制に対しての特例認定が必要ということになるため。(ただし、法人の場合は例外がある)

 

特例認定の取消し

管理権限者が申請して合格した特例認定も、以下の要件に該当する場合は消防長又は消防署長は認定を取消さなければならないことになっています。

  1. 不正な手段により特例認定を受けたことが判明したとき。
  2. 防火対象物の位置・構造・設備・管理の状況が法令に違反し、命令がされたこと又は命令されるべき事由があるとき。
  3. 上記の特例の認定要件の3に適合しなくなったとき。

 

 

 

証票の表示について

この証票には2種類あり

  • ひとつめは防火対象物点検資格者が点検を行った結果、防火対象物が点検基準に適合していると認められた場合に「防火基準点検済証」の証票を表示することができます。(消防法施行規則別表第一)
  • ふたつめは上記でお話しした特例認定を申請して認定された場合に「防火優良認定証」の証票を表示することができます。(消防法施行規則別表第一の二)

ふたつとも防火対象物点検の結果が不適合の場合は表示をすることができませんが、不適合を改善して防火対象物点検資格者により再点検を行い、その結果が基準に適合していると認められる場合には表示をすることができます。

この再点検の結果は、最初に行われた点検結果と同様に消防長又は消防署長に報告し、防火管理維持台帳に記録・保存しなければなりません。

 

管理権限が分かれている防火対象物の場合

なお、管理権限が分かれている防火対象物の場合には、一部の火災の危険が防火対象物全体に及ぶ可能性があるので、上記証票を表示する為には

  • 防火対象物の全ての部分において防火対象物の点検結果が基準に適合している場合(防火対象物の一部が特例認定を受けている場合にはその部分を除く)には「防火基準点検済証」を表示することができる。
  • 防火対象物の全ての部分において特定認定を受けている場合には「防火優良認定証」を表示することができる。

 

防災基準点検済証と防災優良認定証との関係性

防火対象物点検の他にも防災管理点検というものがあり、この防災管理点検にも「防災基準点検済証」と「防災優良認定証」という証票があります。

防災管理って何?って方は下記の記事を参照してください。

防災管理者とは
この記事では防災管理者についてお話しています。防災管理者の概要と資格取得の要件及び注意事項、防災管理者を選任しなければならない防火対象物、統括防災管理者とは、防災管理者再講習制度について詳しく解説しています。

 

今回は防火対象物点検のお話なので詳しいことは省略させていただきますが、この防災管理点検においても証票を表示することができます。

この防災管理点検と防火対象物点検は趣旨・点検対象・点検資格者などが異なり、お互いに独立する制度ですが、この証票においては関連付けられています。

要するに、防火対象物点検と防災管理点検の両方が点検義務対象防火対象物にあっては、両方の表示要件を満たしている時に「防火・防災基準点検済証」という証票を表示することができます。

もちろん防火対象物点検と防災管理点検の両方で特例認定を受けることができれば「防火・防災優良認定証」という証票も表示することができます。ただ、これらの表示には一定の経過措置があります。

 

まとめ

最後までご覧頂きありがとうございます。

今回は防火対象物点検の特例と証票表示についてお話させていただきました。

今回の特例認定については、日々防火管理業務をきちんと行っていて、防火対象物点検等においても指摘事項のない優良な防火対象物の方には朗報です。

通常であれば毎年1回防火対象物点検等を行わなければならないので、それにかかるコストもそれなりにあると思います。

ですが、特例認定を受けることができれば防火対象物点検等を3年間行わなくても良いことになります。もちろん日々の防火管理業務は必要ですが、点検業者を入れての防火対象物点検業務がいらなくなるので、これにかかるコストの削減は大きいと思います。

消防用設備等点検においてはいかに優良でも点検免除は受けられませんが、防火対象物点検は免除が受けられるので、これを活用していただければと思います。

 

 

 

 

 

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消防法第8条の2の2第一項

防火対象物点検及び報告に関しての事項

防火対象物点検が必要な防火対象物の管理権限者は定期的に防火対象物点検資格者に防火管理業務等の点検対象事項を点検させてその結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない。

防火対象物点検が必要な防火対象物については下記の記事を参照してください。

防火対象物定期点検報告制度とは
この記事では「防火対象物定期点検報告制度」が創設された背景や、改正された消防法の内容の確認、そして防火対象物点検が必要になった建物(用途や収容人員など)について詳しく解説しています。