みなさんこんにちは。
この度2019年10月1日より今回のタイトル通りに小規模飲食店等にも消火器の設置が義務化されましたので、この義務化がどのように改正されたのか解説していきたいと思います。
改正された背景について
今回の改正については、平成28年(2016年)12月に新潟県糸魚川市で発生した大規模火災が教訓となり改正されました。
この新潟県糸魚川市の大規模火災(以下、糸魚川火災)では、小規模飲食店のコンロの消し忘れにより火災が発生し、その火災が木造住宅等密集地で発生したことに加えて強い風により火災が一気に拡大することにより消火困難となってしまい、約30時間もの間燃え続けおよそ40000㎡が焼損する大規模火災となってしまいましたが死者は発生しませんでした。
これまで上記のような小規模飲食店(述べ面積150㎡未満)には消火器などの設置義務はありませんでしたが、この糸魚川火災を教訓に消火器などの設置義務化が始まりました。
改正の内容について
今回の消防法施行令の一部改正の内容について解説させていただきます。
この改正は上記糸魚川火災を教訓に小規模飲食店等にも消火器具の設置しなければならない範囲を拡大するとともに、消火器具の設置・維持に関する技術上の基準の整備を行うということになります。
消火器具の設置基準の見直し
以前は小規模飲食店等(政令別表第一 3項)(飲食店、食堂、レストラン、喫茶店、居酒屋、料亭など)で述べ面積が150㎡未満の建物(防火対象物)には消火器具の設置義務はありませんでしたが、今回の改正によりすべての小規模飲食店等(火気を使用する設備や器具があるものに限る)に消火器具の設置が義務化されました。
カッコ書きの通り、火気を使用する設備や器具(ガスコンロやオーブン、カセットコンロなど)を設置していない小規模飲食店等は今回の改正(消火器具の設置義務化)には該当しません。
また、該当する小規模飲食店等でも、火気を使用する設備や器具が防火上有効な措置として総務省令で定める措置を講じている場合には消火器具の設置義務はありません。
防火上有効な措置について
上記で防火上有効な措置というキーワードがでてきましたが、この防火上有効な措置には以下の3つの措置がありますので解説していこうと思います。
- 調理油加熱防止装置がある場合。
- 自動消火装置がある場合。
- その他の危険な状態の発生を防止し、発生時には被害を軽減する安全機能を有する装置がある場合。
a.の「調理油加熱防止装置」については、鍋等の温度の過度な上昇を感知して自動的にガスの供給を停止して火を消す装置のことを言い、家庭用のコンロにも調理油等の温度を監視して自動で火を消す装置がありますのでこの装置のことを指します。
b.の「自動消火装置」については、火を使用する設備又は器具を防護対象物(自動消火装置によって消火すべき対象物のこと。)とし、この部分の火災を自動的に感知し、消火薬剤を放出して火を消す装置をいうものを言い、厨房用自動消火装置(ダクト用自動消火装置)なる製品が各防災メーカーからでていますのでこれらのことを指します。
c.の「その他の危険な状態の発生を防止し、発生時には被害を軽減する安全機能を有する装置」については、加熱等によりカセットボンベ内の圧力が上昇した場合に、その圧力を感知し自動的にカセットボンベからカセットコンロ本体へのガスの供給を停止して火を消す装置である圧力感知安全装置等のことを指します。
なお、鍋などからの吹きこぼれにより火が消えた場合に、ガスの供給を停止してガス漏れを防止する「立ち消え防止安全装置」については「その他の危険な状態の発生を防止し、発生時には被害を軽減する安全機能を有する装置」には該当しませんので注意が必要です。
これらの装置が火気を使用する設備や器具に設けられている場合には消火器具の設置義務はありません。(所轄消防により異なる場合があります。)
消火器を新たに設置する場合について
上記で解説した条件に当てはまってしまう場合には新たに消火器具を設置しなければなりませんが、これにも決まりがありますので解説したいと思います。
設置できる消火器の種類
消火器には種類があり
- 家庭用と業務用
- 消火剤が粉末の物や液体(水や強化液など)の物やガス系(二酸化炭素やハロゲン化物)の物
- 適応できる火災の種類(普通火災、油火災、電気火災)
- 消火器本体の材質(鉄やステンレス)
- 消火器の大きさ(消火剤の量が多い・少ない)
などがありますが、今回の改正では小規模飲食店等の火気使用設備・器具(特に調理油の火災)への消火器具設置を想定していますので、重要なのは「業務用消火器を使用する」と「適応できる火災の種類」になります。
最近ではホームセンターなどでも消火器を購入することができますが、消火器には家庭用と業務用がありますので、業務用の消火器を選んでください。
また、適応できる火災の種類についてですが、ホームセンター等で購入できる消火器には、全ての火災(普通火災、油火災、電気火災)に適応できるものもありますので、購入時に確認しましょう。(消火器の本体に適応できる火災の種類が記載されています。)
消火器を設置する場所
通常、消火器具などの消防用設備を設置する場合には建物(防火対象物という)などに対して設置を行いますが、今回の改正では火気使用設備・機器に対しての設置になります。
その為、消火器具を設置する場合に計算する「能力単位」というものについては考えなくて良いとなっています。
また、消火器具は各階に設置しなければなりませんが、この改正では火気使用設備がある階にだけ消火器具を設置すればことたりることになっています。
ただし、建物内に危険物(少量危険物含む)を貯蔵や取扱いをしていたり、地下階・無窓階・3階以上の階に小規模飲食店等があり床面積50㎡以上の場合には改正前と同じ基準での設置が必要になります。
危険物(少量危険物)って何が該当するの?って方は下記の記事を参照してください。
無窓階ってどんな階なの?って方は下記の記事を参照してください。
消火器を新規設置するにあたりあらかじめ所轄消防に相談をしていただき、設置する消火器の種類や大きさなどを協議(相談)しておくのが一番かと思います。
まとめ
最後までご覧頂きありがとうございます。
今回は法令改正のお話をさせていただきました。
以下にフローチャートを用意しましたので、今回の改正に該当するかしないかを簡単に確認することができます。
※上記フローチャートは、今回の改正以外の基準で設置義務がある場合(危険物がある・地下階や無窓階など)は含まれていません。
また、今回の改正では万が一火災が発生しても消火器具で消火できるように、消火器の設置義務のない小規模飲食店等を対象としていますが、大切なのは日々の防火管理だと思います。
よくあるラーメン店などでは、グリスまみれの排気ダクトや油まみれのコンロなどをみかけたりしますが、これらのグリスや油が原因で火災が発生したりしますので、日々の清掃や整理整頓は防火管理という面でとても重要です。
防火対象物点検という点検でもこの排気ダクトのグリストラップが一杯ではないかという点検項目がありますのでそれだけ防火管理という点で重要ということになります。
消火器を設置するのも大切ですが、火災を未然に防ぐという防火管理も大切なので消防庁が配布している「厨房における火災予防のチェックリスト」を活用して頂き火災予防に取り組んで頂ければと思います。