皆さんこんにちは。
今回は共通法令の後編として
- 法令適用除外(既存遡及)
- 消防用設備の設置の届け出と検査
- 消防用設備等の点検と報告
- 消防設備士制度
- 消防用設備等の検定制度
上記の消防関係法令の共通部分をやっていきます。
既存防火対象物の適用除外
消防法施行令、消防法施行規則、市町村条例などで、改正があったとしても、既存の防火対象物は改正後の規定は適用にならない、が原則の特例規定があり、これを既存特例という。要するに従前(現状)のままで良いということ。つまり「遡及しない。」
遡及しない、とは既存のものにさかのぼって改定の規定を適用しないことである。
逆に遡及する、とは既存の防火対象物でも改定後の規定に合わせなければならないということである。
下記の場合は特例が認められない。遡及しなければならない。
- 防火対象物が以下の要件のいずかに該当する場合は特例が認められない。
- 以下の消防用設備等は特例が認められない(遡及しなければならない。)
- 消火器・簡易消火用具
- ★自動火災報知設備
- ※ガス漏れ火災報知設備
- 漏電火災警報器
- 非常警報器具、非常警報設備
- 避難器具
- 誘導灯、誘導標識
- 必要とする防火安全性能を有する消防の用に供する設備等(パッケージ型消火設備やパッケージ型自動消火設備など。)
★→特定防火対象物・複合用途防火対象物のうち、その一部が特定防火対象物の用途に供されている部分、地下街、文化財保護法などにより指定されたものに設置する場合。
※→特定防火対象物・複合用途防火対象物のうち、その一部が特定防火対象物の用途に供されている部分、地下街、準地下街、温泉採取施設に設置するもの。
上記の消防用設備等は、防火対象物の構造部に変更を及ぼさない簡易な工事、簡易な器具の為、すべての防火対象物に適用される。
用途変更の特例
防火対象物の用途を変更し、現行の消防法施行令、消防法施行規則、市町村条例の規定に適合しなくても、用途変更前のままでよい(遡及しない)とする特例規定がある。(例えば、工場用途→倉庫用途など)
ただし下記に該当するものは特例が認められない(遡及する。)
- 上記「既存防火対象物の適用除外」で記した消防用設備等
- 下記のいずれかに該当する場合は特例が認められない(遡及が必要。)
- 用途変更後の用途が特定防火対象物になる場合(工場用途→物品販売店用途など。)
- 用途変更に際し、変更直前の規定に違反している場合。
- 用途変更後に1000㎡以上、又は1/2以上の増改築を行った場合。
- 用途変更後に主要構造部である壁について行う過半の修繕、模様替えをした時。
- 従前(現状)の消防用設備等が用途変更後の規定に適合することとなったもの。(任意設置していた消防用設備等が用途変更により、法令などによる設備(義務設置設備)になったもの。)
工場や学校などの非特定防火対象物は従前の規定に違反していなければ、上記1,の設備を除いて、一定規模以上の増改築、模様替え、特定防火対象物への用途変更が無い限り、従前のままでよいということである。
検査と届け出
防火対象物の関係者は、消防用設備等や特殊消防用設備等を設置した場合には、その旨を消防長又は消防署長に届け出て検査を受けなければなりません。
検査を受けなければならない防火対象物
- 令別表第一の2項二、5項イ、6項ロ
- 令別表第一の6項イ、6項ハ(利用者を入居させる、宿泊させるものに限る。)
- 複合用途防火対象物で特定防火対象物があるもの及び、地下街、準地下街で上記a,b,の用途に供される部分があるもの(6項ロ以外)。
- 複合用途防火対象物、地下街、準地下街で6項ロが存するもの。
- 延べ面積が300㎡以上の特定防火対象物。
- 非特定防火対象物で、延べ面積300㎡以上で消防長又は消防署長が指定するもの。
- 特定1階段防火対象物
特定一階段防火対象物について詳しくは下記の記事を参照してください。
届出を必要としない消防用設備等
- 簡易消火用具
- 非常警報器具
届け出
届出書には、消防用設備等試験結果報告書、又は特殊消防用設備等試験結果報告書を添付して
- 工事が完了した日から4日以内に消防長又は消防署長に届け出る。
- 検査に合格したものには検査済証が交付される。
消防用設備等の点検・報告と措置命令
防火対象物の関係者は、消防用設備等、特殊消防用設備等を定期的に点検して、その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない。
しかし、令別表第一の20項の舟車は点検を必要とせず消防法以外の法律で点検が義務付けられている為です。
有資格者でなければ点検出来ない防火対象物
※有資格者とは、消防設備士か消防設備点検資格者を有する者。
- 延べ面積1000㎡以上の特定防火対象物。
- 延べ面積1000㎡以上の非特定防火対象物で、消防長又は消防署長が指定するもの。
- 特定1階段防火対象物
上記以外の防火対象物は、関係者でも点検できる。
点検の期間
点検には機器点検と総合点検があり、それぞれ点検期間が決まっています。
機器点検は6ヶ月に1回
消防用設備等の損傷の有無、主として外観や簡易な操作で判別できる事項。
総合点検は1年に1回
消防用設備等の一部又は全部を作動、使用することによりその消防用設備等の総合的な機能を確認する。
点検結果の報告
点検報告の期間は防火対象物により異なる。
- 特定防火対象物は1年に1回。
- 非特定防火対象物は3年に1回。
- 特殊消防用設備等は設置維持計画に定める期間。
点検報告は、告示で決められた様式(消防用設備等点検結果報告書)にて報告を行う。
措置命令
- 消防用設備等が基準に従って設置・維持されていないと認められた時。
- 特殊消防用設備等が設置維持計画に従って設置・維持されていないと認められた時。
上記の場合、消防長又は消防署長は防火対象物の関係者で権限を有する者に、技術基準や設置維持計画に従って設置・維持の為の必要な措置を行うことを命じることができる。
消防設備士制度
消防設備士の独占業務
消防設備士の免状を受けていない者は、消防用設備等、特種消防用設備等の設置工事や整備を行ってはいけない。これは消防設備士の独占業務であるからです。ちなみに消防設備士ではない者がこの独占業務を行った場合は6ヶ月以下の懲役、又は50万円以下の罰金が科せられます。
ちなみに消防設備士以外でも行える整備もあり、以下になります。
- 屋内消火栓設備の表示灯の交換。
- 屋内・屋外消火栓設備のホース・ノズルの交換。
- ヒューズ類、ねじ類など部品の交換。
- 消火栓箱、ホース格納箱などの補修。
- その他、これらに類する整備。
消防設備士免状の種類と工事対象設備等
消防設備士免状には甲種、乙種の別と、1~7類の種類があり、それぞれで工事や整備ができる設備が違います。甲種は工事・整備が行えて、乙種は整備のみを行うことができます。
例えば甲種第2類は泡消火設備の工事・整備が行えますが、乙種第2類は泡消火設備の整備しかできません。
消防設備士の義務
消防設備士は以下の義務を遵守しなければならない。
- 消防設備士はその業務を誠実に行い、工事整備対象設備等の質の向上に努めなければならない。
- 都道府県知事が行う講習受講義務。
消防用設備等は技術革新が著しく、新たな事態に対応するためにたびたび法改正が行われるので常に最新の技術・知識を習得し法令に適応しなければならない必要があるためです。(免状所持しているが業務に従事していない者も該当)- 免状の交付を受けた日以降の最初の4月1日から2年以内。
- その後は講習を受けた日以降の最初の4月1日から5年以内。
- 消防設備士免状の携帯義務。
自動車運転免許証もそうですが、業務に従事する時には免状(免許証)の携帯が必要です。また、消防職員(吏員)や防火対象物の関係者から免状の開示を請求された場合にはこれを示さなければならない。 - 工事着手の届出
甲種消防設備士は、工事着手の10日前までに消防長又は消防署長に着工届を提出しなければならない。この届出を怠ると、罰金30万円以下や拘留などの罰則規定があるので注意する。
消防設備士免状の交付
- 免状の交付:消防設備士試験を行った都道府県知事が交付する。
- 免状の不交付:都道府県知事は以下に該当する者に対して免状の交付を行わないことができる。
- 消防法に違反して免状の返納を命ぜられた日から起算して1年を経過していない者。
- 消防法に違反して罰金以上の刑に処せられた者で、その執行が終わった日から起算して2年が経過していない者。
- 免状の返納命令:消防設備士が消防法に違反している場合、免状を交付した都道府県知事は免状の返納を命じることができる。
消防設備士免状の書き換え
(1)下記に該当する、免状記載事項の変更が生じた場合には遅滞なく書き換えの申請を行い、書き換えを行わなければならない。
- 免状の記載事項
- 免状の交付年月日、交付番号
- 氏名、生年月日
- 本籍地の属する都道府県
- 免状の種類
- 総務省令で定める事項として、過去10年以内に撮影した写真
- 申請先は、免状を交付した都道府県知事又は居住地、勤務地を管轄する都道府県知事
(2)免状の再交付
- 免状を亡失(なくす)・滅失(滅びる)・汚損(汚れる)・破損(壊れる)した場合には免状の再交付を申請することができる。
- 申請先は、免状の交付・書き換えをした都道府県知事。
(3)亡失免状の発見
- 免状の再交付を受けた者が亡失した免状を発見した場合には、10日以内に提出しなければならない。
- 提出先は、免状の再交付をした都道府県知事。
消防用設備等の検定制度
消防用設備等に使用される機械器具は、火災発生時に確実に所定の機能を発揮出来なければならない。
その為消防用機械器具等のうち、検定対象機械器具等は国による検定が行われ、検定試験に合格し、検定合格の表示が付されているものでなければ販売や販売目的での陳列、設置工事などに使用してはいけない。
検定の対象
検定対象機械器具等は12項目、合格の表示は5様式あり、表示の様式(検定合格証)は消防設備士試験の実技試験の項目で鑑別の問題として出題される傾向にあるので覚えておきたい。検定合格証は、検定マークや検定ラベルと呼ばれている。
上記の表示の様式で、消火器と消火器用消火薬剤の検定マークは良く出題されるので覚えておきましょう。(乙種6類は消火器関係なので)
検定の方法
検定は「型式承認」と「型式適合検定」の2段階ある。
型式承認を受けようとする者はあらかじめ日本消防検定協会や総務大臣の登録認定機関が行う型式試験を受けなければならない。これは総務省令で定める技術上の規格に適合しているかどうかの試験になる。
- 型式承認・・・規格に適合している場合は、総務大臣が型式承認をする。
- 型式適合検定・・・型式承認を受けた個々の製品そのものの形状などが、承認を受ける型式に係る形状等に適合しているかどうかについて行う検定である。
- 検定機関・・・日本消防検定協会または総務大臣の登録認定機関のこと。
- 合格の表示等・・・日本消防検定協会または総務大臣の登録認定機関は、型式適合検定に合格した検定対象機械器具等に型式適合検定に合格したものである旨の表示を付さなければならない。
日本消防検定協会または総務大臣の登録認定機関による型式適合検定に合格していない検定対象機械器具等に合格の表示を付してはならない。また、合格の表示と紛らわしい表示も付してはならない。
ちなみに検定の流れは以下の通り。
検定申請→型式試験→総務大臣による型式承認→製造→型式適合検定→合格→合格証の貼付→販売や工事での使用が可能になる。
検定対象機械器具等は合格の表示が付されているものでなければ、販売・販売の目的で陳列してはならない。検定対象機械器具等のうち、消防の用に供される機械器具や設備は、合格の表示が付されているものでなければ、設置・変更・修理の請負に係る工事に使用してはならない。
総務大臣は、技術上の基準が変更され検定対象機械器具等が変更後の技術上の基準に適合しないと認めるときには、その型式承認の効力を失わせ、または一定の期間が経過した後にその型式承認の効力を失わせる。
型式承認の効力が失われたときは、日本消防検定協会または登録認定機関が既に行った型式適合献帝の効力も失われることになる。
平成22年12月22日に、消火器の規格が改正されて、旧型式(適応火災表示マークに絵表示のないもの(JIS規格のもの)、平成22年以前のすべての製造品)は型式失効となった。消火器の使用特例期間は平成33年12月31日までとなっている。すなわち既設の消火器で旧規格のものは平成33年12月31日までは設置可能だが、それ以降は検定合格の消火器として認められなくなるので現行の規格のものと取り替える必要がある。
自主表示対象機械器具等は、総務省令で定める技術上の基準に適合している場合は、その製造・輸入を業とするものが自ら総務省令で定める表示をすることができる。
対象機械器具等には
- 動力消防ポンプ
- 消防用吸管
- 消防用ホース
- 結合金具
- 漏電火災警報器具の変流器・受信機
- エアゾール式の簡易消火器具
がある。
まとめ
最後までご覧いただきありがとうございます。
この記事で、消防関係法令の共通法令は終了になり、次回から乙種6類の法令(類別法令)になります。
試験に出題されると予想される部分や重要な部分にはこの色でマーキングしてあるので、この部分はよく覚えてもらえると良いかもしれません。
あとは数字の部分(延べ面積300㎡以下など)は、よく出題されるので覚えましょう。たとえば、検査をうけなければならない防火対象物はどれか?という問題で、非特定防火対象物で延べ面積1000㎡以上の所、といった感じで出題されるので、惑わされないように覚えましょう。
期間もよく出題されます。たとえば、着工届は工事着手の4日前までに〜と出題されるので、着工届は10日前までに、設置届(試験結果報告書)は4日以内に提出なので覚えておきましょう。