火災予防条例の記載内容について

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皆さんこんにちは。

消防用設備に携わる人間にとって切っても切れないものの中に消防法令があります。

消防組織法や消防法に始まり消防法施行令、消防法施行規則などとても頭が痛くなかなか覚えられない部分になりますが、その消防法令でも各市町村で内容の異なる火災予防条例なるものがありますので、今回はこの記載内容についてお話させていただきます。

 

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火災予防条例とは

上記でもお話しましたが、消防法令には

  1. 消防組織法
  2. 消防法
  3. 消防法施行令
  4. 消防法施行規則

などがあり、それぞれで法令を定めていますが、地域によってはこの消防法等ではまかないきれない部分がでてきます。

例えば極寒地域において屋外消火栓の放水器具格納箱が凍結などにより扉が開閉できなくなるのを防ぐ措置を講ずるという規定は消防法等にはありませんので、各市町村で火災予防条例という独自の規制を設けてこれらをカバーするというスタンスになっています。

もちろん各市町村でこの規制は変わりますので、A市ではOKだったけど、B市ではダメだったということはよくありますのでこの火災予防条例に記載されている内容を確認していきましょう。

 

火災予防条例の記載内容

では火災予防条例の内容を見ていきましょう。

今回は横浜市の火災予防条例を例にお話していこうと思います。

第1章は総則(火災予防条例の目的と定義)で、第2章は削除されていますので第3章からお話していきます。

また下記内容の細目が「火災予防条例施行規則」(通称、火災予防規則)に記載がありますのでそちらも併せて確認していただけるとよりスムーズかと思います。

 

第3章 火を使用する設備の位置、構造及び管理の基準等

この章では火を使う設備(ボイラーやストーブ、サウナなど)や器具(液体燃料や個体燃料を使用する器具)や火の取り扱い(たき火や喫煙など)などに関する規制を記載しています。

ここでは火を使用する設備や器具や喫煙などの火を使用する場合に、その使用に際して火災の発生のおそれのある設備や器具の位置、構造及び管理の基準を詳細に記載しています。

この設備と器具ですが、設備は床や壁などに固定されたものや大型のものを言い、器具は持ち運びができるような比較的小型のものを言います。

例えば設備にはボイラー・炉・給湯設備などか該当しますが、このほかにも電気自動車の急速充電設備や蓄電池設備・避雷設備なども該当します。

 

第3章の2 住宅用防災機器の設置及び維持に関する基準等

この章では、住宅用防災機器(住宅用火災警報器や住宅用火災警報設備)に関する規制を記載しています。

住宅用防災機器の設置が必要な部分やその維持管理、住宅用防災機器を設けなくても良い場合などを詳細に記載しています。

例えば、住宅用火災警報器(以下、住警器)はどこにどのタイプ(熱式や煙式)の住警器を設置すれば良いのかとか、スプリンクラー設備を基準通りに設置したらその有効範囲には住警器は設置しなくてもよいとかが記載されています。

住警器に関する法令が制定・施行されて10年以上経過していますのでそろそろみなさんのお宅の住警器も電池交換の時期になると思います。

 

第4章 指定数量未満の危険物及び指定可燃物の貯蔵及び取扱いの技術上の基準等

第4章では指定数量未満の危険物(以下、少量危険物)と指定可燃物に関する規制になります。

指定数量以上の危険物は消防法で規制されていますが、少量危険物の場合にはこの火災予防条例で規制をしていて、その貯蔵や取り扱い、設置するべき消防用設備(消火器具や消火栓など)に関わる規制を詳細に記載しています。

例えばよくある危険物に「灯油」がありますが、この灯油は1000㍑以上貯蔵・取り扱う場合には指定数量以上の危険物として消防法の規制を受けますが、これが200㍑以上、1000㍑未満なら少量危険物として規制を受けますのでこの場合は火災予防条例で規制されます。

ちなみにどのような物質が危険物として規制されているのかは消防法別表第一という表に一覧がありますので下記の記事を参考にしてください。

危険物とその種類について
この記事では、皆さんの身近にも存在する「危険物」というキーワードについて解説しています。危険物の定義(何が危険物なのか?)、危険物と少量危険物に違い、危険物の種類と品名について詳しく解説しています。

 

指定可燃物の貯蔵や取り扱いなどついてもこの4章で規制しています。

またどんなものが指定可燃物に該当するのかは下記の表を参照してください。

危険物第4類の物品と指定可燃物の規制を受ける物品一覧

 

第5章 消防用設備等の技術上の基準の付加

この5章では消防用設備等に関して消防法や消防法施行令、消防法施行規則で定められた内容に付加をする形で規制を追加しています。

例えば消火器具の設置に関する部分で、通常消火器具の付加設置が必要な場所は

  • 多量の火気を取り扱う部分
  • 少量危険物
  • 電気設備等
  • 指定可燃物

になりますが、この横浜市の火災予防条例では上記のほかに

  • 火花を生じる設備のある場所
  • 核燃料物質または放射性同位元素を貯蔵したり取り扱う場所

が追加(付加)されています。

また自動火災報知設備の部分において、政令別表第一の5項ロ(下宿や寄宿舎など)の設置基準で、通常述べ面積が500㎡以上の場合に設置が必要になりますが、この火災予防条例では耐火構造であるなどの除外要件があるものの、延べ面積が200㎡以上で自動火災報知設備の設置が必要になります。

この他にこの横浜市の火災予防条例にはありませんが自動火災報知設備の部分において、通常トイレには感知器の設置は必要ありませんが、暖房便座を設置したり電気式のヒーターやコンセントを設置したらトイレに感知器を設置要するという火災予防条例もありますので注意が必要です。

 

第6章 避難及び防火の管理等

この6章では個々の用途における収容人員の算定基準や避難通路の基準を定めています。

当ブログ記事の「避難通路について」の記事でもお話しましたが、避難通路などの詳細はこの火災予防条例で定められており、各市町村で詳細が異なります。

避難経路や通路について確認したい方は下記の記事を参照してください。

避難通路の概要と関係法令について
この記事では防火対象物の避難通路について解説しており、避難通路の概要、建築基準法と消防法とでの規定の違いと、消防法における詳細(どの法令にどのような規定があるのか)を詳しく解説しています。

 

また収容人員の算定に必要な客席の規定も消防法施行規則に記載がありますが、この火災予防条例でさらに細かく決められています。

上記の消防法施行規則による収容人員の算定に関する部分については下記の記事を参照してください。

収容人員の算定について
この記事では収容人数の算定についてお話しています。算定に関する一般的留意事項(機能従属やみなし従属の取扱い・従業員の取扱い・いす席の取扱いなど)と各防火対象物(用途)ごとの収容人数の算定方法と最後に遊技場を例とした算定例を詳しく解説しています。

 

では横浜市の火災予防条例では避難通路の規定はどのようになっているのかというと百貨店用途(政令別表第一の4項)においては、売り場等のある階や売り場等の床面積の大きさによって避難通路の幅が決まっています。

売り場等の床面積が150〜300㎡未満なら避難通路の幅員は1.2m以上なければなりませんし、床面積が600㎡以上なら1.8m以上なければなりません。

それに追加する形で当該床面積が1500㎡以上あり、避難階や地階などの場合に上記避難通路の幅員に0.2m(当該床面積が3000㎡以上なら0.7m)を加算して避難通路を設けなければなりません。

この避難通路の規定の他に避難施設(避難口や廊下、階段など)の管理や防火設備(防火戸や防火シャッターなど)の管理などについても規定されています。

 

第6章の2 火災予防に関する市民の責務

この章では市民が火災予防に関して気をつけなければならない事柄を記載しています。

消火器の設置について、火災予防条例に規定のある部分(延べ面積が150㎡以上の防火対象物など)以外の部分においても出火防止の観点から消火器を自主的に設置してくださいとの記載があります。

他にもたばこ火による出火を防ぐ為の措置(ポイ捨てや寝たばこの防止)や、放火の予防(放火されにくい環境作りや空き家の侵入防止対策など)について記載されています。

 

第6章の3 防火対象物の消防用設備等の状況の公表

この章では、防火対象物の消防用設備の設置や維持に関して消防法など(施行令や施行規則、火災予防条例等含む)に違反している場合にはその旨を公表することができますが、公表を行う前に防火対象物の関係者に通知を行うとなっています。

また、違反しているから即公表ではなくて、所轄消防もちゃんと段階を踏んでの公表になりますので、そこまで怖がる部分ではありません。

段階の例として

  1. 立入検査や点検報告等により不備があることが発覚。
  2. その不備を改修してもらうべく改修(計画)報告書の提出を求め、改修を促す。
  3. 計画通りに改修が認められない場合には指導を行う。
  4. それでも改修が認められない場合には再指導を行う。
  5. それでも駄目なら公表しますの通知を出して公表の準備。
  6. 公表及び必要に応じて防火対象物使用停止命令。

このような流れになりますので、余程悪質ではない限り公表には至りません。(※所轄消防によります。)

またこの横浜市に限らず他の多くの市町村でこの公表制度を規定していますので、不備等は速やかに改修しましょう。

 

第7章 雑則

この章では各種届け出や罰則の記載部分になります。

各種届け出には

  1. 防火対象物使用開始届
  2. 火を使用する設備等の設置の届出
  3. 火災と紛らわしい煙等を発するおそれのある行為等の届出
  4. 指定洞道等における通信ケーブル等の敷設、指定トンネルの設置等の届出
  5. 指定数量未満の危険物等の貯蔵及び取扱いの届出
  6. タンクの水張検査等
  7. 核燃料物質等の貯蔵及び取扱いの届出
  8. 消防用設備等又は特殊消防用設備等の設置等計画届出

があり、これらの届け出に関する細目が記載されています。

これらの中でも消防用設備等に関係の深い届け出として防火対象物使用開始届や指定数量未満の危険物の届け出、消防用設備等の設置計画があります。

防火対象物使用開始届は、防火対象物を新たに使用する場合(新築、既設問わず)に、当該防火対象物の名称や用途、収容人員などを使用開始の7日前までに届け出を行います。

例えば、ビルの空きテナントを借りて飲食店を開業する場合などにも予め防火対象物使用開始届を提出しておかなければなりませんので気をつけましょう。

防火対象物使用開始届について詳しくは下記の記事を参照してください。

防火対象物使用開始届とは
この記事では防火対象物使用開始届について解説しています。届出書の概要、根拠となる法令、提出期限や添付するべき書類や図面の種類、現場確認や書類の記入例まで詳しく解説しています。

 

消防用設備等の設置計画は、建築工事(新築、改築、増築や用途変更など)を行う場合で、消防用設備等(特殊消防用設備等含む)を設置・変更する場合に工事着工前に届け出るものになり、消火器・簡易消火用具・非常警報器具・誘導標識を除いた設備が該当します。

これは建築工事を行う際に同時に消防用設備等も設置・変更を行う場合に提出する書類になり、建築確認の時に届け出ます。

また工事整備対象設備等着工届出書(通称着工届)とは違う書類になりますので間違えないようにしましょう。

 

まとめ

最後までご覧いただきありがとうございます。

今回は火災予防条例の内容を横浜市の条例を元にお話させていただきました。

各市町村においてそれぞれの火災予防条例がありますが、基本的な流れ(火気使用設備・少量危険物・避難防火管理など)は横浜市の条例とそんなに変わりはありません。

内容に関してはそれぞれの市町村で変わってきますので必要とあれば各市町村の火災予防条例に目を通しておきましょう。

筆者もそうですが、色々な市町村で消防用設備等のお仕事をさせていただいていますので、後々所轄消防などに突っ込まれない様に火災予防条例をちょくちょく確認しています。