(特別)避難階段とは

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皆さんこんにちは。

避難器具(消防設備士の甲種5類など)や特定一階段防火対象物などの勉強をしているとでてくるこの避難階段や特別避難階段という単語、筆者もよく知らなかった単語ですし、意外と知っているようで知らないものかもしれませんので今回の記事で解説していこうと思います。

特定一階段防火対象物って何?って方は下記の記事を参照してください。

 

記事中に良く出てくる「特定防火設備または防火設備」について詳しくは下記の記事を参照してください。

 

また、避難器具ってどんなの?って方は下記の記事を参照してください。

 

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避難階段とは

「避難階段」(非常階段とも言う)とは、直通階段を防火避難上安全な構造(耐火構造や防火設備等)で施工したものを指し、附室に排煙設備を設けたり、バルコニーを経由してより安全性を高めた「特別避難階段」もあり、一般的には

  • 屋内避難階段
  • 屋外避難階段
  • 特別避難階段
  • 消防庁告示第7号の屋内避難階段

上記の4種類があります。

「直通階段」とは、避難階(直接地上又は直接地上へ通ずる出入口のある階)に直接繋がっている階段のことを指していて、地理的な要因から避難階=1階ではない防火対象物もあります。

またこれらの避難階段や特別避難階段には壁、天井、階段に使用できる材質や工法(耐火構造など)や、採光に用いる窓及び照明、開口部(出入口など)の防火設備に至るまで細かく建築基準法施行令で定められていて

  • 特別避難階段は、建築物の15階以上の階と地下3階以下の階に設置が義務づけられています。
  • 避難階段は、建築物の5階以上の階と地下2階以下の階に設置が義務づけられていています。

 

屋内避難階段の概要

では上記でお話した4つの避難階段について解説していきます。

まずは屋内避難階段がどのような階段を指すか詳しく見ていきましょう。

屋内避難階段の例

屋内避難階段は、屋内に存する耐火構造の直通階段を指し開口部の条件や壁・天井の下地や仕上げまで指定している安全性の高い屋内階段になり、建築基準法施行令第123条第1項にその規定が定められています。

  1. 階段室の屋外に面する壁に開口部(窓など)を設ける場合には、他の開口部と階段室以外の壁や屋根などから900mm以上の距離に設けること。(ただし書きあり。)
  2. 上記1.の条件に合致しない場所(他の開口部より900mm未満の部分)に一般開口部を設ける場合には、500mm以上の袖壁を設けること。
  3. 階段室の屋内に面する壁に開口部(窓等)を設ける場合には、各々1㎡以内で鉄製網入ガラスの入った防火設備のはめ殺し戸(FIX窓)とすること。
  4. 階段室には、窓や採光の為の開口部(屋外に面する部分)、又は予備電源付きの照明器具を設置すること。
  5. 階段に通じる出入口の戸は、特別防火設備若しくは防火設備とし、避難の方向に開くとともに以下の要件を満たすこと。
    • 常閉式の戸若しくは煙感知器連動式の防火戸であること
    • 幅750mm以上、高さ1800mm以上、床から戸の下端まで15cm以内であること
  6. 階段室は耐火構造の壁で形成し(開口部を除く)、階段室内の天井と壁は下地も含め不燃材料で仕上げること。
  7. 階段は耐火構造の直通階段とすること。

上記の条件を満たすことにより屋内避難階段として認められることになります。

 

屋外避難階段の概要

今度は屋外避難階段の要件について、建築基準法施行令第123条第2項に規定がありますので解説していきます。

屋外避難階段の例

屋外避難階段は屋外に設置された耐火構造の直通階段で、屋外に開放されていて、煙などが充満することのない避難階段になり

  1. 屋内から階段に通じる出入口の戸は、特別防火設備若しくは防火設備とし、避難の方向に開くとともに以下の要件を満たすこと。
    • 常閉式の戸若しくは煙感知器連動式の防火戸であること
    • 幅750mm以上、高さ1800mm以上、床から戸の下端まで15cm以内であること
  2. 階段は、当該階段に通じる出入口以外の開口部(開口面積が各1㎡以内の鉄製網入ガラスのはめ殺し戸を除く。)から2m以上の位置に設けること。
  3. 階段は耐火構造の直通階段であること。

上記の要件を満たすことにより屋外避難階段として認められることになります。

 

特別避難階段の概要

特別避難階段は、屋内避難階段の入り口に排煙窓や排煙口の付いた附室、又はバルコニーがあり、それらを経由して階段室に行くもので煙等の流入がなく屋内避難階段に比べてより安全性の高い避難階段になり、建築基準法施行令第123号第3項に規定があります。

特別避難階段の例

では詳しい要件を見ていきましょう。

  1. 屋内と階段室とはバルコニー又は外気に向かって開放できる窓(排煙窓)若しくは排煙設備を設置してある附室を通じて通行出来ること。
  2. 階段室やバルコニー及び附室には、5.の開口部、7.の窓、9.の出入口の部分注1を除き耐火構造の壁で囲むこと。
  3. 階段室や附室の天井及び壁の室内に面する部分は下地及び仕上げに不燃材料を用いること。
  4. 階段室には、窓や採光の為の開口部、又は予備電源付きの照明器具を設置すること。
  5. 階段室やバルコニー、附室の屋外に面する壁に設ける開口部注2は、階段室やバルコニー及び附室以外の建築物の部分にある耐火構造の部分を除く壁や屋根から90cm以上の距離で延焼のおそれのない部分に設けること。
  6. 階段室には、バルコニー及び附室に面する部分以外に屋内に面して開口部を設けてはいけない。
  7. 階段室のバルコニーや附室に面する部分に窓を設ける場合には、はめ殺し戸を設けること。
  8. バルコニーや附室には階段室以外の屋内に面する壁に出入口以外の開口部を設けてはいけない。
  9. 屋内からバルコニー又は附室に通じる出入口の戸は、特定防火設備の常時閉鎖式、又は随時閉鎖式・煙感知器等連動の自動閉鎖装置付きの防火戸とし、避難の方向に開くこと。
  10. バルコニー又は附室から階段室へ通じる出入口の戸は、特定防火設備若しくは防火設備の常時閉鎖式、又は随時閉鎖式・煙感知器等連動の自動閉鎖装置付きの防火戸とし、避難の方向に開くこと。
  11. 階段は耐火構造の直通階段とする。
  12. 建築物の15階以上の階又は地下3階以下の階の各階における階段室及び、この階段室と屋内を繋ぐバルコニーや附室の床面積の合計は、その階にある各居室の床面積に※1の用途に使う居室にあっては8/100、それ以外の用途の居室にあっては3/100を乗じた数の合計以上とする。

上記の要件を満たすことにより特別避難階段と認定されます。

 

平成14年消防庁告示第7号に規定される屋内階段の概要

上記の屋内避難階段の例外として、一般的な屋内階段であったとしても一定の要件をクリアーすれば屋内避難階段として認めてくれる場合があり、それが平成14年の消防庁告示第7号に記載のある屋内避難階段の要件になりますので解説させて頂きます。

 

消防庁告示第7号の屋内避難階段の例

屋内階段のうち階段の各階や階段の中間部分ごとに下記の要件に適合する直接外気に開放された排煙上有効な開口部がある階段を指していて

  1. 開口部の面積は、2㎡以上であること。
  2. 開口部の上端は天井と同じ位置であること。ただし、階段の部分の最上部における当該階段の天井の高さの位置に500c㎡以上の外気に開放された排煙上有効な換気口がある場合はこの限りでない。

これらの要件が揃うことにより、消防庁告示第7号の屋内避難階段として認められますが、所轄消防により取扱いが異なる場合がある(建具を設けた場合など)ので注意しましょう。

 

まとめ

最後までご覧頂きありがとうございます。

今回は避難階段についてお話させていただきました。

ちなみに避難階段(特別避難階段含む)の階段部分に予備電源付きの照明器具を設置するという要件ですが、これには器具内部に予備の電源注3を搭載していて、停電になっても30分以上点灯する器具になっている階段通路誘導灯兼用の非常用照明器具を設置することが多いと思います。

これは階段の踊り場等の照度が1ルクス以上(蛍光灯なら2ルクス以上)確保できるのであれば、階段通路誘導灯ではなく非常用の照明装置(予備電源付きの照明器具)で代用(兼用)できるという基準があるからです。

詳しくは下記の記事を参照してください。


 

 

 

 

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  • 注1…非常用エレベーターの乗降ロビーに使用するバルコニーや附室にある非常用エレベーターの昇降路の出入口部分を含む。
  • 注2…開口面積が各々1㎡以内で鉄製網入りガラス等の防火設備を用いたはめ殺し戸(FIX窓)の部分を除く。
  • 注3…消防法ではバッテリー(非常電源)で点灯するべき時間は20分(大規模建築物では60分)ですが、建築基準法では、非常用の照明設備のバッテリー(予備電源)は30分点灯になりますし、呼び方(非常電源と予備電源)も変わります。

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※1

劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場、またこれらに類するもの。

百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、またこれらに類するもの。