皆さんこんにちは。
建物に設置してある消火器…よく見かけますよね、でもあれってどういう基準で設置そのものが必要だったり本数や配置間隔もどう決められているのでしょうか?
この記事ではそんな消火器の設置基準について解説しています。
設置が必要な防火対象物について
防火対象物(又はその用途)により設置基準が変わりますが、以下の表は政令別表第一の用途での記述になりますので、1項イって何?て方は下記の記事を参照してください。
消火器の設置が必要な用途と面積、必要能力単位
防火対象物の述べ面積(地階・無窓階・3階以上の階はそれぞれの階の床面積)により消火器の設置が必要か、また設置が必要な場合に能力単位の必要な面積が記入してありますのでこれを基に能力単位を計算します。
例えば令別表第一の4項(物品販売店)(準耐火構造)では建物の述べ面積が150㎡以上あれば消火器の設置が必要になりますが、延べ面積が150㎡未満だとしても地階、無窓階、3階以上のいずれかの階があり、その該当階の床面積が50㎡以上あれば消火器の設置が必要になります。
また能力単位については耐火構造以外であれば100㎡で1単位の能力単位が必要になりますので、例えば耐火構造以外で述べ面積が2000㎡あれば20単位の能力単位が必要になります。
ただし、3項イ・ロにおける「延べ面積に関わらず設置要」の部分(上表の※1の部分)ですが、延べ面積が150㎡未満の防火対象物に限って、ある要件をクリアーすれば消火器は設置しなくても良いので、くわしくは下記の記事を参照してください。
消火器の設置場所について
消火器を設置するべき場所と注意点は
- 各階ごとに設置する。
- 防火対象物の各部分から歩行距離で20m以内(大型消火器は30m以内)に消火器を設置する(下記で解説)。
- 付加設置設備(少量危険物・指定可燃物・変電設備・火気使用設備)があれば設置する。
- 設置場所に適応した消火器を設置する(変電設備に設置する消火器は電気火災に適応するものなど)。
- 通行・避難に支障がなく、使用に際して容易に持ち出せる場所に設置する。
- 床面からの高さが1.5m以下の箇所に設置する。
- 屋外・厨房や蒸気・ガスなどが発生する場所に設置する場合は格納箱などに収納するなどの防護措置をする。
- 設置した消火器具の直近に標識を設置しますが、標識には大きさや色の規格があり、ピクトグラムを用いても良い場合があります。
上記の様になり、これはどの防火対象物でも同じになります。
ピクトグラムについて詳しくは下記の記事を参照してください。
ただ、各市町村の火災予防条例によっては上記の他にも付加設置設備を指定している場合もありますので気をつけましょう。(火花を発する工作機械等に消火器設置要など)
消火器の歩行距離について
消火器の歩行距離は「防火対象物の各部分からも20m」となっていますがどこからが20mなのかわかりにくいので図で説明します。
上記の図はよくある工場に消火器を配置した場合の例で、建物のどこからでも歩行距離20m以内に消火器があれば良い決まりなので、緑の線が20m以内であれば良いことになります。
ただ、食堂や事務室には移動が困難な机やテーブルがあり、工場内には通れない生産ラインがありますので、歩行距離ではこの机等を迂回していかなければならない為、緑の線は机等を迂回しています。
上記迂回を要する物品等には
- 床に固定されているもの(家具や棚、生産用の機械など)
- 移動が容易ではないもの(重量物や大型の家具など)
があり、逆を言えば移動が容易なもの(軽くて大きくないもの)はこの迂回をしなくても良いことになります。
能力単位の計算
消火器を設置するにあたり、この能力単位というものを計算して能力単位が足りる様に消火器を設置します。
例えば令別表第一の12項(工場)で、建物が木造(非耐火構造)とします。そうすると、必要な能力単位は耐火構造以外なので述べ面積/100㎡で算出できます。
仮に述べ面積が5050㎡だとしたら、5050/100で50.5となり、小数点以下は繰り上げになるので必要な能力単位は51になりますので、設置しようとする消火器の能力単位を確認して能力単位が足りる本数の消火器を設置します。
消火器のラベルにA-3、B-7、Cなどの表記がありますが、これが消火器の能力単位になります。
このA-3がここで言っている「能力単位」で、この消火器の能力単位は3単位となり、この3単位(A-3)の消火器が17本あれば51単位になるので、能力単位から消火器の設置本数を算出すると、この消火器を設置する場合には最低17本は設置しなくてはなりません。
消火器の能力単位は消火器の器種(粉末、強化液、泡など)や大きさ(大型消火器など)で変わるので、設置しようとしている消火器の能力単位がいくつなのかを確認する必要があり、所轄消防によっては粉末消火器と強化液消火器を併用して設置するように指導される場合がありますので能力単位の不足に注意が必要です。
また二酸化炭素消火器などで、消火器能力単位がB-3、Cなどというのがありますが、これはAの能力単位がないので上記能力単位の算出には使用できません。ちなみに能力単位のAは普通火災、Bは油火災、Cは電気火災になります。
付加設置消火器
付加設置が必要な部分には以下があります。
1単位以上の消火器で、なおかつ危険物に適応する消火器を設置します。
例えば第4類第二石油類の灯油を500㍑貯蔵している少量危険物なら第4類の火災に適応する消火器で1単位以上ある消火器を1本設置すればOKです。
危険物に適応する消火器を確認したい方は下記の記事を参照してください。
指定数量(綿花なら200kg)の50倍ごとに1単位必要になりますので、綿花を10000kg貯蔵すると指定可燃物の50倍となり1単位以上の消火器の設置が必要で、綿花を10001kg貯蔵すると50倍を超えるので2単位必要になります。
また指定可燃物を500倍以上貯蔵・取扱う場合は大型消火器の設置が必要です。
電気設備(変電所など)の面積が100㎡以下ごとに消火器1本必要です。なので101㎡なら2本必要です。
これまでは「能力単位○以上」みたいな規定でしたが、電気設備だけは本数での規定になりますので気を付けましょう。
建物の中ではなく屋外にキュービクルだけ設置されている場合の消火器の設置の可否については下記の記事を参考にしてください
ボイラー室などの面積が25㎡以下ごとに1単位必要ですので51㎡なら3単位必要です。
建物の耐火構造や内装制限
消火器を設置する場合に建物が耐火構造で内装制限した場合は能力単位の算出を倍読み出来ますが、この耐火構造や内装制限とはなんでしょう?
耐火構造の建物の例として主要構造部(柱・床・壁・はり・屋根・階段などの事)が鉄筋コンクリート造の建物は耐火構造になり、他には鉄骨造で鉄骨を厚さ4cm以上のコンクリートブロックなどで覆ったものなどが耐火構造になります。
内装制限は建物の天井・壁の仕上げ(壁紙クロスなど)に不燃材等で仕上げをした場合のことで、居室だけでなく廊下や階段の仕上げについても同じであり、クロスなどのはじっこに不燃材ってシールが貼ってあればそれは不燃材のクロスだということです。
また建築基準法で言う内装制限と、消防法で言う内装制限はちょっとちがうので注意が必要です。
緩和対象の消火設備
消火器の設置を要する部分に「屋内消火栓」「スプリンクラー設備」などを技術基準に則り適正に設けた場合で、火災の適応性が消火器と消火設備で一緒の場合は消火設備の防護部分の消火器の能力単位を2/3に減少することが出来ます。
能力単位は減免できますが、歩行距離は変わらないので注意しましょう。
実際に設計してみよう
よくあるパターンとして、新規建物の平面図を渡されて「消火器の設計よろしくな」って言われるパターン、よくあります(笑)。
この場合の設計の手順を確認しましょう。
(1)まずは建物の用途と延べ面積を算出する
延べ面積と用途を割り出す(耐火構造などや緩和設備も考慮)と、必要な能力単位が出てきますので、それを設置しようとする消火器の能力単位で割れば最低設置消火器本数が出てきます(粉末消火器10型ならA-3が主流です)。
(2)算出した最低設置消火器本数を建物のどの部分からでも歩行距離20m以内になるように設計してみる
例えば3階建てで最低設置消火器が21本なら各階7本は設置できるので、その7本を歩行距離20m以内に収まるように設置してみて、歩行距離が確保できない場合は消火器を増やして歩行距離が確保できるようにしていきます。
(3)建物の各階で歩行距離が確保できたら、付加設置部分の消火器が必要か確認する
付加設置消火器は防火対象物防護とは別で計算するので、建物防護が設計出来てからでOKです。少量危険物・指定可燃物、電気設備、火気使用設備があれば個別で計算して消火器の本数を追加します。
(4)これで建物に必要な能力単位、耐火構造の有無、緩和対象設備、各階に設置される消火器の本数、付加設置設備が算出できたのでこれを基に消防用設備等試験結果報告書(通称設置届)を記入します。
まとめ
最後まで読んでいただきありがとうございます。
まだ私がこの業界の駆け出しのころ、建物の平面図だけを渡されて「消火器の設置をやってみろ」と言われて、まだ能力単位なんて単語も知らなくて四苦八苦した経験があります。そのときは一日中消火器の本を読み漁り設計したものです。
今の時代はスマホでグーグル先生に聞けば何でも解決する時代になりました。本当に便利になった反面、設計の本など読まなくなりました(私だけでしょうか?(笑))。でも便利なものは活用して、自分の仕事が有利に進むようにしたいですね。
また所轄消防本部によっては粉末消火器だけではなく強化液消火器も併設するように指導する場合があるので、設計段階で1回相談するのが良いと思います。今回の記事では消火器の設置に関する部分だけなので、そのうち設置届の記入例を説明していこうと思います。
また危険物施設(少量危険物及び指定可燃物以外のもの)への消火器具設置については下記の記事を参照してください。